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引きこもり時代、母の誕生日にカレーを作った思い出

最近になって20代の引きこもり時代の掘り起こしをやり始めたので、今日もその頃の話をひとつ。

僕が小学校高学年で父が亡くなったので、うちは長らく母、兄、僕の3人暮らしだった。

兄は20代で結婚して家を出たので、そのあと母と僕のふたり暮らしがスタート。

母は配慮しすぎる方なので、あまり僕に対してきついことは言わない。
僕は元来口数が少ないので引きこもり時代も夕飯時くらいしか会話はなかった。

それでも「この子、全然就職する気配がないし、将来どうなるんやろう?」みたいに常々心配していたのは、ひしひしと伝わってくる。正直、申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

ある秋のこと、僕は短期バイトでお金を貯めてしばらく家に引きこもり誰とも会わず、本や漫画、映画などに没頭していた。

「あっ、明日は母の誕生日だった!?」と思い何かプレゼントをしようと思い立つ。

しかしお金もほとんどないし、何を買ったらいいかわからない。

たまには料理でもしてみるかと「今日は僕がカレー作るから夕食の用意はしなくていいよ」と母に伝え、カレーライスを作った。

これを母はすごい喜んでくれたのだ。

それほど感情を表に出さない人なのだが、ふたりでカレーを食べていると喜びが自然に伝わってくる。

僕は「こんなことくらいしかできないけど」という思いだったが、自分のために息子が何か行動をしてくれたのが嬉しかったのかもしれない。

家を出て自活したあと、母と兄と僕で会話していたときに兄がこんな質問をぶつけた。「こいつが引きこもってるとき、心配やなかった?」

母は兄の問いに「引っ込み思案で人見知りでスタートが遅れる子やけど、悪い人間には育ってないと思ってたから安心感があった。自分で問題に気づいてなんとかすると思ってた」と答えた。

そのときの母の言葉を聞いて、少し涙腺が緩んだ記憶がある。

働かずにすねをかじりまくっていた僕のことを、内心信頼してくれていたのが、じんわり嬉しかった。

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