誕生日(だった)


そろそろ特にめでたくもないのだけれど
というか何がめでたいのかも分からないままこんな歳になってしまってきていることに危機感を覚えてはいるけれど
一応9月2日は私が生まれ(てしまっ)た日だった。

それとは特に関係なく、久しぶりに大学時代の教授(以下A教授と呼称)と連絡を取り、
たまたま今日、A教授とお会いしていろんなお話をした。

「蓮水には才能がある。能力もある。しかしそれを魅せる力がない、というより自信がないから埋もれてしまっている、もったいない」
「蓮水が『出来て当たり前』だと思って、普段から何の気なしにしていることが、実は大多数が『やろうとしてもできないこと』だったりする」
大学時代からA教授は私をぽつりぽつりと褒めてくれる。
それが嘘でないことは私にもわかるけれど、
私がそれを素直に受け取れず謙遜してしまうと
「卒業しても私が面倒を見ていることが何よりの証拠だよ。あなたは世に出て活動すべき人材だ」
なんて更に大それたお言葉を頂戴してしまった。
さすがに過分な評価だと思うのだけれど、A教授のことをよく知っているからこそ、それがA教授の中では「過分な評価」と思っていないだろうことは確かだった。
さりとて、A教授は私に何かをさせようなどとは一切しない。
私に何か提案してくるときはいつも私のためになるようなことばかりだ。
「心理学関係の資格を取っておくといい」
「あなたは人間関係の継続が難しいと悩んでいるけれど、あなたが変わる必要はない。あなたは人に合わせたりしない方が良い」
もう教授という役職は引退されているはずなのだけれど、
教授らしいというのか、私の道を多く示してくれるような、そんな人。

私が学んでいた学問は保育と福祉。
A教授は福祉分野の建築関係の教授だった。
バリアフリーや住みやすい街づくりなどの研究をされていると記憶している。
A教授はいつも「福祉だけを学んでも意味がない」と言っていた。
何故なら「福祉を進めるのは政治家や企業、建築家だから」だと。
だからA教授はいろんなところへゼミ生を連れていったという。
(私はA教授のゼミではなかった)
旅行へ連れて行き、美味しいものを食べさせ、良いホテルへゼミ生を泊めたりしたと。
理由は本当に良いものを知らなければ世界が狭いままだからだと。
A教授は本当に視野が広くて聡明な方で、何より自由だった。

私はA教授に「私はどうしたらうまく人と関われるか」と今日聞いたら、
「いろんな"服"を持つと良い。例えば……」
A教授は持参しているメモ帳に大きく円を描いた。
「これが世間の価値観だとする」
その円の外に小さい丸をいくつか描き
「こういう価値観の人たちもいる」
次に大きい円に重なるように円を描いて
「これが蓮水さんのいる場所」と説明した。
そして円の外側に斜線を引いて「これが本来の蓮水さん」

世間の価値観と私の存在している場所(A教授曰く)

イメージ的にはこんな感じの図だった。

「いろんな人や場所に応じて服を着替えるといい」
「例えばお葬式に赤いドレスは着ていかないでしょう?だけど発表会で真っ黒なスーツでも行かない。人はTPOに応じて服装を変える。だからあなたもそうするといい」
正直私には難しくて100%の理解は出来ていないのだけれど、
いろんな顔を使い分けろということなんだろうか??

「あなたはわからないことがあればわからないと言えて、すぐに自分で調べられる。『なんで?』という疑問を持てて、それをとことん追求できる。それは誇るべき才能だよ。世の中にはそれが出来ない人がごまんといる」
「教育の現場のレベルが落ちているからそうなってしまう。『とにかく覚えろ』『とにかくやれ』という教育方法をしている。教師自体も『何故そうなのか』を理解していないことが多い」
「理系の人というのは『白黒はっきりさせたい』人なんだよ。けれど理科や数学が苦手だと理系じゃないと思っている人が多いがそれは実は間違い。白黒はっきりさせたい性格なのに数学や理科が苦手なのは、納得できるまで教師が説明出来ていないから。だから蓮水さんは実は理系なんだと思うよ」
などなど、1コマの授業を受けているくらい濃い時間を過ごした。
なんとも有意義な誕生日だった。

ちなみにA教授との出会いは合同ゼミだった。
一回生の時のゼミの教授と、A教授が仲良くて合同ゼミになった。
ゼミの教授のことも非常に尊敬していて好きだったので、
どんな教授なのかとワクワクしたものだ。
(ゼミの教授のことは、K教授と以下呼称)

大学へ行っていない方へもわかるようざっくり説明すると、
ゼミというのは小学校~高校までの"クラス"に似ていて、
1ゼミに15人くらいの人数がいる。
合同ゼミというのは教授同士が仲が良いと開催されたりする。
(他の理由はわからん)
ゼミが行われる場所は教室で、前に黒板があって
長机が4列×4列くらい?の大きさ
(伝わるだろうか……伝われ……)

せっかくなのでK教授の話もしておきたい。
1回生のゼミというのは担当教授を生徒が決めるわけではなく、
大学側で振り分けられる。
まあそらそうだ。入学前から「どの先生がいい?」って聞かれても
大半は「誰でも良いです…」となるだろうし
もし私がそう聞かれたら間違いなく児童福祉分野の教授を選択しただろう。
けれど、今となってはK教授に出会えたことは数奇な運命であると言いたい。
K教授は哲学の講義をしている先生だった。
(もちろん他にも担当講義はあったと思うが)
第一印象は、穏やかな人。
いつもにこにこしていて、穏やかで、自分のことを多く語らない人。
ゼミでは毎回最初にゼミ生が1人ずつ新聞の中から興味のある記事を
印刷してA4のノートに貼る。
それを読んで感じたことや考えたことを書いて、発表するというものがあった。
もちろん大学生が新聞を取っている訳ないことは教授も承知なので
ネットで見たニュースを印刷する、図書館の新聞を印刷するなどの方法を取っていたかと思う(曖昧)
で、もちろんゼミ生それぞれが全く別々の記事に興味を持ち
それを発表する。
(たまに被ることはあったものの)
私だと児童福祉系(いじめや虐待など)が多かったかと思うけれど
他の子はその時ホットなニュースだったり、まあ、とにかく様々だ。
そもそも新聞は1日分でも多くの情報が記載されている。
そしてゼミの開講は1週間に1回なので、
7日分のうち自分の興味のあるもの1つを選ぶのだ。
そりゃ本当に膨大なジャンルの記事が載っているし、
それを読んでどう考えたか、なんて更に千差万別。

1人10分くらいの時間で記事の内容の要約を読み上げ、
自分の感じたことや考えたこと、今後の課題などを話す。
するとK教授が「そうですね。〇〇さんの興味の持たれた記事というのは……」
とその記事に関する情報を更に深く掘り下げた情報(?)を口にし、
こちらの考えも一切否定しない。
それを、15人分。
私は当時本当に毎回感動していた。
これだけ様々な種類の情報、記事があり、専門知識が必要とされる分野のものも多くあったかと思うが、
その全てに精通する知識がK教授にはあり、
それを選択した生徒の考え方を否定することがなく、必ず1人1つは褒めていた。

造詣が深い(ぞうしじゃないよ。ぞうけいだよ)という言葉がある。
これは特定の分野の知識が優れているだとかそういう意味だけれど、
K教授は全ての分野へ造詣が深いんじゃないかと思ったほどだ、
今、もしK教授のゼミをまた受けられるなら
わざとK教授が困るような記事を取り上げてみたいものだ。
けれどK教授のことだからどうせこちら予想90度上くらいの
ものすごい知識量を与えてくれるんだろうけれど。

A教授も自分のことを話す、というより
研究分野についての話が多く、そして型破りで行動的な人だった。
もちろんA教授も本当に知識量がえげつなくて脳みそ5個はあると思っている。
A教授はどちらかというと快活な性格で陽気、けれど淡泊で素直。
うまく表現出来ないけれど……
明るく気の良い人、という感じだ。
生徒にいろんな経験をさせるという意味でもアグレッシブと言えるのかと思う。
良くも悪くも「このやり方より、私の言うこのやり方やってみな~」みたいな。

K教授は具体的に「この方法がいい」と示すことはなく、
生徒をただ見守るという印象。
けれど間違った方向へ向きかけたら、決して怒ることなくやんわりとルートを戻してくれるような人。
寡黙で温厚な人。

A教授がお母さんだとしたらK教授はお父さんのようなポジション…???
あかんわからん。
けれどお二方とも、本当に知識や経験が多くあり、聡明で、尊敬している教授だ。

合同ゼミの話に戻ろう。
合同ゼミ当日、ゼミが始まる少し前に教室に到着した私は、
一番後ろに座っていたA教授の前に座り、
初対面でいきなり
「ねえ先生、先生ってA先生って言うんでしょ。K先生がこの大学で仲良い先生だって前のゼミで言ってたよ」
なんて失礼極まりない"ご挨拶"をさせていただいたものだ。

K教授は先述の通り自分のことをあまり話さない人だったし
当時の私は、賢い人には友人が少ないという偏見(?)があった。
そんなK教授が合同ゼミのお知らせをした際にあたって
「私と仲良くしてくださってる先生のゼミと~」と紹介した。
私は驚愕した。
こんなに賢いK教授と同じ目線で会話が出来て仲良くしている教授がいるだと……?????
この時私は大学の広さ(物理的な意味も含め)に衝撃を受けた。
なのでA教授のことも、合同ゼミ前から興味を持っていた。
K教授と仲良く出来る人はどんな人なんだろうと。

A教授は私の失礼な発言を気にすることもなく、
気さくに話してくれた。
ふと「最近手相占いにハマっててね」と私の手相を見てくれた。
私は内心(どうせありきたりなこと言うんだろうな。バーナム効果は私には効かんぞ。まあ空気悪くしたくないから適当に流そう)
なんて思っていた。
大半の人間はそうだと思う。知らんけど。

バーナム効果とは、星座占いなど個人の性格を診断するかのような準備行動が伴っているため、誰にでも該当するような曖昧で一般的な性質を表す記述を、自分、もしくは自分が属する特定の特徴を有する集団だけに当てはまる性質だと捉えてしまう心理学的な現象である。

Wikipedia

しかしA教授が言ったことは私を動揺させるものだった。
「小学校か中学校…人を信じられなくなるようなことがあった?大人に対して。そして大学入る前にもあったね」
「初恋…えらい早かったね、小学校高学年くらい?」
「自分から好きになった恋は長続きする傾向があるね」
「自分の感情とか意思はすごく強いけど、自信がない。人のせいにするよりかは自分を責めるタイプだね」
「ある一面においてすごく大人びてるけど、 ある一面においては子どもっぽいとこがあるね」

Σ!?!?!?!?!?


クッソ怖かった
過去のことを時期と内容もほぼ一致で当てられるとは思わなんだ。
この時点で私名乗りもしてない(名乗れ)
そのレベルのまじの初対面。
名前も生年月日もなんっにも伝えてない。
手相だけでここまで言い当てられて怖すぎた。
同時にA教授に一気に興味を持った。

まあね、出会いはそんな感じで未だにA教授と親交が続いておりますということで。

それと、これは余談だけれどK教授の講義で「哲学」があって
とってもとらんでも良かった授業やったけど
個人的に哲学が好きなので受講したら成績がSでした。
(一番良い成績。S→A→B→C→(越えられない壁)→D)
(D判定は落単を意味する)
内容が内容なだけに難しかったのにまさかS取れるとは思ってなくて
K教授に「ゼミ生だからS取らせてくれたんですか?」って聞きに行ったら
「ううん、蓮水さんは本当に良く出来ていましたよ。出席も授業態度も、テストも素晴らしかったです。哲学を受講している生徒の中でもS取れたのは5人だけなんですよ」
とにこやかに話してくれて、すごくうれしかった。

今考えると、私のWAISの結果的にも哲学や心理学は私の興味を強く惹く学問らしいのでなるほどなあと。


とまあそういう感じでね。終わりますかね。

教授から言われて嬉しかった言葉は、自画自賛と思われるかもしれないけれど残しておく。

9月2日に書いていたけれども、そっから加筆修正など重ねてたら
いつの間にか11日になってた。びっくりだね。

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