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1920年 麻布飯倉のベートーヴェン――南葵楽堂「ベートーヴェン生誕百五十年紀念音楽会」の意義
紀州徳川家第16代当主徳川頼貞(1892-1954)が麻布飯倉の自邸に建てた音楽ホール「南葵楽堂」は、1918(大正7)年の落成から1923(大正12)年の関東大震災で使用不能になるまでの5年という短い活動期間に、日本の西洋音楽受容史に名を残す数々の演奏会を世に送り出してきた。ベートーヴェンの生誕150年にあたる1920(大正9)年は、南葵楽堂の活動が一層の発展を遂げた年であった。この年の春、か
もっとみるスティーヴ・ライヒ「漸進的プロセスとしての音楽」諸ヴァージョンの比較――電子音楽からの離脱の軌跡
篠田大基
はじめに 音楽におけるミニマリズムを代表する作曲家スティーヴ・ライヒ Steve Reich(1936- )が、1968年10月に書き上げたエッセイ「漸進的プロセスとしての音楽 Music as a Gradual Process」は、1960年代における彼の芸術観が明確に述べられた文章として広く知られている。この著作において
スティーヴ・ライヒの Different Trains におけるスピーチの構成
1. 現代アメリカを代表する作曲家スティーヴ・ライヒ Steve Reich(1936-)の Different Trains(1988)は、ヒトラー政権下で行なわれたユダヤ人迫害を題材にした作品である。ライヒは、ユダヤ人である彼自身の思い出を絡ませつつ、当時を回想する老人たちの言葉を使って、この悲劇を描いた。彼らの声はテープに録音され、器楽がそのイントネーションを模倣する。スピーチ・メロディと呼
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