011:マジョラムスイートの安全性への考察とケーススタディ
最近、特に考えることが多いのが『本に書いてあったから』を理由にすることへの疑問です。
もちろん、書籍には筆者の研究が詰まっていると考えたいですが、もしかしたら、その理由をあまり深く考えずに禁忌として書いておいたら無難。と言う判断もあるかもしれないと、最近、しみじみと思うことがありました。
そこで、ここ数ヶ月の間に、私の身近にあった出来事を踏まえて、マジョラムスイートを題材に、考察してみようと思います。
そう言う意味において、アロマセラピストの学習範囲はとても広く膨大だと思いますが、私は、植物学には、あまり深く踏み込んでいません。ですから、原材料が、正しく抽出されているのかを目で見て判断する事はできません。
そこはもう、蒸留所の知識に委ねる他ないのですが、本来、自分が使用する精油の安全性を考える時、原材料は確かか?抽出部位は確かか?と調べていくことも重要だと思います。しかし、それは、本当にひとりひとりがやるのは、あらゆる意味において無理なので、供給者を信じるしかないことになるのです。
そうなると、原材料を見極めるか、成分分析した結果を見て、正しい精油と見極めるか、いずれかをしっかりしてくれる供給者から購入する。そして、最後はやっぱり、自分自身での『官能検査』になると思います。
Origanum majorana は、日本では『スイートマジョラム』と呼ばれていると思います。精油の安全性ガイド第二版を基準に考えると、注意、禁忌共に『知見なし』と結論づけられています。しかし、書籍によっては『妊娠中の使用不可』とされているものも見かけます。
先日、妊産婦ケアの第一人者として世界的に有名なデニス・ティラン女史の査定において、腰痛の妊婦を想定した際に、私はマジョラムスイートを選んでいますが、デニスにも「私も、腰痛にはマジョラムが有効だと思っています。」とお言葉をいただいて、査定を受けていると言う緊張が和らいだものです。
ちなみにこのとき、シダーウッドアトラスも問題なかったです。
しかし、書籍によっては注意や禁忌があるのはなぜなのか?追求してみなければ、と、思いました。
本を読んで暗記して利用する。と言う時代を経なければ、こう言う考察には辿り着かないものだとは思うのですが、先輩たちからは聞いたこともない提案だったので、むしろ、時代背景もあるのかもしれませんが、これから学ぶ人には、最初からこの事を踏まえて学んでほしいです。
『アロマテラピーという学問は、まだ体系的に出来上がっていない。』
つまり、古いデータは、一考はされるべきだが、アップデートされるべきでもある。という事です。
現在、同じ学名の植物でも、育った環境(土壌、気候を含む)、抽出方法、抽出部位によって、含有される成分に差が出る事は明確です。
スイートマジョラムの学名は、Origanum majorana 主にテルペン類で構成される精油であると、現在は考えられています。しかし、Origanum majorana には、モノテルペノイドフェノール、つまり、フェノール類に属するカルバクロールを76-81%含有するものが存在しており、現在は、マジョラムワイルド、あるいは、ワイルドオレガノなどと呼ばれています。ワイルドオレガノには、リナロールタイプも存在しますが、それでも23%前後のカルバクロールが含まれます。
オレガノといえば、Origanum onites を筆頭に、多数の学名、異名が存在しており、これもまた、カルバクロール含有量が高いです。
この異名の中に、がくめいが、Thymus で分類されるものも含まれており、これがタイムと近縁種であることが容易に想定されます。
あるいは、マジョラムと呼ばれていても、マジョラム・スパニッシュの学名は、Thymus mastichina であり、1,8-シネオールとカンファーで60%を占める含有量です。
以上のことから、古い文献の指す『マジョラム』が、今、我々が学問として築き上げている中で『スイートマジョラム』と呼んでいる、成分比率のものに対して、本当に言い伝え通りの禁忌のあるものと同じ精油なのか?という点は、一考の余地がある点であると思われます。
さて、英国で助産師にアロマテラピーについても教えているデニスには、妊産婦への禁忌は何も示唆されず、私が所属する英国のIFAからもロバートティスランドの精油の安全性ガイド第二版を基準として参照することとされ、そこにも注意、禁忌がないにも関わらず、IFAが別途ガイダンスとして提示しているプリントには、妊娠中の注意が書かれているのは、どういう経緯か?ですが、
これは妊娠出産に関する解剖生理学に基づくものと思われます。
もちろん、IFAの認定を受けて同団体に所属をしたら妊産婦ケアをしていいわけではないです。最初の合格ラインは一般の健康な成人、あるいは、医師との連携のもとに施すことができるアロマテラピーについて、一通り学習した。と言うレベルであり、乳児を含む子供、高齢者、医療的ケアを受けている人、緩和ケアを受けている人、妊産婦など、健康な成人を基準としたとき、配慮が必要となる人たちへのケアは、さらに、専門家に学ぶよう指示されています。
それゆえの注意喚起ということではあるので、一般の方には『注意』で良いと思うし、むしろ『禁忌』と言っても差し支えないだろうと思います。
しかし、アロマセラピスト、少なくとも、精油のプロフェッショナルは、それではよろしくないと思います。
スイートマジョラムは、非常に高い鎮静作用があります。他にもこのように『非常に高い鎮静作用』と言われる精油には、結果として血圧が下がる傾向が見られることがあり、血圧の安定しにくい時期の妊産婦への注意が促されるということです。血圧は、低すぎても、高すぎてもダメなのです。
逆説的にですが、血圧が高くなる傾向にある妊娠後期の腰痛に、スイートマジョラムを使用することについて、デニス女史からもお墨付きをもらえた。と、考えています。
IFA認定校で学習している時からずっと、スイートマジョラムの筋肉骨格系への作用については、自分のクライアントからのリアクションがよく、もちろん、スイートマジョラム単品での作用ではないのですが、最近も、リウマチだと診断されたというクライアント、疲労の蓄積による肩こり、腰痛のクライアント、それぞれ、痛みの緩和の報告をいただいています。
胎児の発育と共に、お腹の重さで脊柱や骨盤と周辺筋肉に負荷がかかる妊産婦さんへも有用なのではないかと考えています。
ただし、上記の通り、くれぐれも『正しいスイートマジョラム』を使ってください。
22年は『緑の薬箱-グリーンレメディーズ』のコース開発をして、一応、目処がつき、今年も受講生募集をしていますが、23年は『アロマテラピー・ベーシック』コース開発をしつつ、さらに上級クラスの開講に向けて基礎ができている人財を育てていきたいと思っています。
これからアロマテラピーを勉強しようと思われている方、オルカで一緒に勉強しませんか?
フォロー&いいね、コメントなどで応援してくだれば、気が向いて、仕事と研究の合間に、研究成果を書いていくと思います。
ただ、ヒトミシリーなので、気軽にお返事はできないかもしれません。
あらかじめご了承ください。