「よいデザイン」の再現性を高めるプロセスの可視化
こんにちは、Ubie Discoveryでデザイナーをしている吉井です。
早いものでUbieにジョインして半年ほど。
デザイナーとしても色んなことに取り組んできました。ここのところの関心ごとはDesign Opsで、最近はなんでも標準化・言語化していきたいマンです。
今日はそんななか、チーム開発においてデザインを円滑に進めていくために工夫してみたことをご紹介したいと思います。
組織によって異なる最良のデザインプロセス
UbieではtoC・toB双方のプロダクト開発を行っていて、僕は主にtoB側である医療機関向けプロダクト (AI問診ユビー) の開発・デザインに携わっています。
転職当初は医療ドメイン特有の専門性、あまり経験が多くないtoBプロダクト開発のクセなどにすこし戸惑うこともありましたが、そこはなんだかんだ言ってもひとつのプロダクト開発。
これまでの経験との共通項も多く見られ、感覚的に分かる部分や周囲の手厚いサポートもあって、かなりスムーズに馴染むことができました。
しかし開発のイテレーションを繰り返し全体の解像度があがってくると同時に、デザイナーとしてアウトプットを世に出すまでのプロセスが、個人的なイメージとちょっと異なっているような感覚を持ち始めます。
もちろん大局的に捉えると☝️のような基本的な流れを汲んでいます。(いま適当に作った図なので分類や呼称に多少の差はあると思いますが...)
一方で、そのひとつひとつをクローズアップしたときのディテールにUbieならではのもの (流派や特徴のようなイメージに近い) があると感じました。(※1)
特にUbieでは現役医師と一緒のスクラムチームで開発するなど、他にはない開発体制が組まれています。そんなチームにおいて、今後に向けてデザイン (ひいてはプロダクト開発全体) のプロセスを円滑化するにはどうしたらいいか(※2)を明らかにしておきたい、というのが入社してしばらく経ってからの感想でした。
※1: 良い悪いの話ではなく、環境が変わる以上そういうギャップは少なからずあることだと思います
※2: ちなみに「エラい人の承認をうまく得るための根回し」みたいなテクニック的な話ではありません (そもそもUbie Discoveryには部署や役職がありません)
人によって異なるデザイナーへの期待
また当たり前ですが各人が育ってきた環境や開発文化はそれぞれ違うので、それによってデザイナーへのイメージも微妙に異なってくるものだと思います。
デザイナーとあまり一緒に働いたことがなく、「なんかいい感じに絵にしてくれる人」ぐらいのイメージしかない人もいれば、逆に「前に一緒だった◯◯さんはこの範囲の仕事をしていた (から他の人もだいたい同じはず) 」のような残像が残っている人もいるかと思います。
裏を返せばデザイナーである僕自身も「エンジニアとはこう関われると理想的」とか「チーム全体でこういうコミュニケーションが取れると意思決定がしやすい」といったイメージが、これまでの経験からそれなりに蓄積されてきています。
でも、それがいきなり全員の共通理解になっているはずがありません。つまりお互いが抱いている期待値に、何かしらのギャップがあると思うのです。
阿吽の呼吸、以心伝心、ツーカーの仲...
ある程度長い時間をかければそんなチームができてくるかもしれません。
しかし我々はスタートアップ。気長に熟成を待っているヒマはありませんでした。
最良なデザインプロセスを書き出してみる
ということで、入社数ヶ月の実務体験から得た知見・反省をもとに【UbieのtoBプロダクト開発でうまくいくであろうデザインプロセス】を図示にしてみることにしました。
なおUbieのtoBプロダクト開発での前提・背景は以下のとおりです。
💡 ゼロイチではなくローンチされてからそれなりに期間が経っているプロダクト
👨👨👦👦 医療機関プロダクト全体で言えば20-30名ほどの開発チーム
🎯 重点テーマで分かれた3〜4チームで開発することが多い
💪 いずれのチームでも1週間を1スプリントとしたスクラム開発
🧑💻 当時僕が所属していたチームはPO / エンジニア(QA含む) / 医師 / デザイナー で8名ほどの規模
まずはUbieでの開発実例をイメージしながら「デザインフローとしてはこういう進め方をしたい」「そのなかで周囲のメンバーとはこう関わっていきたい」といった全体のプロセスをざっと書き出してみます。
今回の場合はmiroを使って、ヨコ軸にフェーズを、タテ軸にそこでやるべきこと、コミュニケーション方法やアウトプットの精度、そこに関わる(関わってほしい)職種をプロットしてみました。
▼ 最初に作ったドラフト
ここで注意するのは「デザインプロセス」だからといってデザイナー中心である狭義の制作プロセスだけに閉じないことです。
その前後にある「解くべき課題が生まれるところ 〜 なんらかアウトプットが世に出て反応を得られるところ」など、チーム開発においてデザイナーが関わりうる一連の流れを含めるようにします。
例をあげると下記のように、デザイナーがどのフェーズでどれぐらいの守備範囲を担っているか、どこに他メンバーへの期待があるかを明確にしていきました。
👉 リサーチ
・顧客インタビューはもちろんデザイナーも主体的に取り組む
・が、現状デザイナーだけに強い専門性があるところではないと思っている
・また全員で意識を向けるべきフェーズなので、できるだけ垣根なく一丸的に取り組みたい
👉 アイディエーション
・要件整理からPOや医師と一緒に取り組みたい
・発散の場では医師の脳内を知るために、医師も積極的に参加してほしい
👉 プロトタイプ
・アイディアの具現化はデザイナーが中心となってスピーディーに進める
・一方で、デザインはデザイナーだけのものではない。医学観点や技術観点も含めて意見が欲しいし、ときにはポンチ絵でいいので一緒に案を考えてほしい
・POとは迷いどころなど相談しつつ、意思決定のサポートをしてほしい
👉 コミュニケーション
・◯◯のフェーズまでは非同期コミュニケーションで方針を固めておくのが理想
・ ある程度形が見えてきた状態で、共有のMTGに持ち込むようにしたい
などなどです。
▼ デザインを中心としたフェーズの進行イメージ
言わなくても分かってるだろうな、というレベルのことでも明確に書いておくぐらいがちょうどいいかもしれません。(実は認識ずれてた...ということもよくある)
そんな感じで組み立てていきながら、あらかた全体像ができた段階でチームに共有してみます。それからはチームメンバーから細部についての考え方、共有の仕方、またそれぞれで抱いていたイメージのギャップや疑問など、色々コメントをもらいながら、少しずつ全体を仕上げていきました。
▼ 医師やQAエンジニアからのコメント
▼ できあがったver1の全体図
よいデザインはよいプロセスから、という言葉があります。
表面的なアウトプットがどんなに美しくても、それがユーザーの課題を解決していたり、新たな価値を届けるものになっていなければよいデザインとは呼べません。
そのためこのような形で、チームの開発プロセスにおいてデザイナーが担える役割・担うべき役割・担っていきたいと考えている役割を明確にして、周囲との補完関係を共通のイメージにしておけるといいのかな、と思っています。
ケースバイケースという罠
とは言えそんなのケースバイケースじゃん...と思った方。
僕もそう考えていた時がありました。ケースバイケースということにすれば細かいことはあまり考えずに済むし、「まあ柔軟にやっていきましょう✌️」の一言で済んでラクだからです。
しかしプロセスや互いの期待値を暗黙知のままにしておくと、チーム全体でのアウトプット品質の再現性・開発スピードがどんどん低くなっていくと感じています。コミュニケーションロスが都度発生し、人が入れ替わるたびに手探りを強いられるなど、あまり良いことはありません。
一方で型を作ったからといって、「絶対にこの形でしかやらない!」とルールを完全に規定するものでもありません。
「今回このフェーズは飛ばしてもよさそうだ」「本当はこうすればよかった」と、会話のなかで立ち返ることのできる中心的な目安にできればいいのかなと考えています。
また、最初に決めたやり方にずっと固執することなく、チームの成長・変化に合わせて期待値をアップデートしながら、少しずつ形を変えていくのもいいと思います。
それでもイメージがつかない...という場合は、とりあえず自チームなど小さい範囲からでも試してみるのがオススメです。
いくつかのケースを書き出してみると実はだいたい一緒だった、実はこうしたいと思ってたけど今まで言えてなかった、などなど色んな側面が見えてくると思います。
おわり
以上、簡単ではありますがUbieの医療機関プロダクトにおけるデザインプロセスの可視化についてご紹介しました。
半分思いつきで取り組んでみた内容ではありますが、プロセスを可視化してみることでポジティブな反響を得られたり、デザイン観点だけに依らないプロダクト開発のフレームワーク「トリプルトラックアジャイル」として汎用化され、医療機関プロダクトチーム全体の共通認識にもなっています。
※ ベースは atama plus社の事例 も参考にしています
▼ コメントやKPTで出た感想など
▼ Ubieでのトリプルトラックアジャイルのイメージ
なおこのトリプルトラックアジャイルを活かした取り組みについては、同じ医療機関プロダクトチームのデザイナー兼スクラムマスターでもある @3284 さんの記事でも触れられています。ぜひこちらも合わせてご覧ください。
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最後に、月並みではありますがUbie Discoveryではデザイナー含めたあらゆる職種を全方位的にめちゃくちゃ募集しています。
良いプロセスで良い開発がしていきたい方、よりよいデザインに一緒に取り組んでいける方をお待ちしています。
採用サイトや 僕宛てのDM からお気軽にご連絡ください!
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