上司100%のまじめ社員が忖度をやめたら役員になった 5つの出来事
「3月31日付で理事を解任する」
2月末のある日、オフィスの高層階の部屋に呼ばれて専務に言われた。
「あれ……、何か言っている……」ちょっとだけ思考が止まった。
予想外のことがあると、本当に思考が止まる。
上司が責任を持ってくれるサラリーマン生活の終わりだった。
素直でまじめな会社員は忖度が上手だったかもしれない
子供の頃から「目上の人の話をよく聞いて頑張るんだよ」と言われてきた。上司の言うことは絶対だと思うのは自然だった。
誰でも業務命令は聞く。その中で「命令であろうとなかろうと、上司の言うことは聞くのがあたりまえ」と刷り込まれていた私は、上司からの覚えは良かったと思う。
八方美人は良くない、寓話のコウモリのようにあちこちにいい顔をしてはいけないと言う知識はあったけど、上司に逆らわなかったのは、嫌われたくなかったのだと思う。
嫌われたくないだけで、意思もなく積極的でもないけど仕事はした。会社の仕事は丁寧にすれば誰でもできるようになっている。だから、誰でもできる。上司の評価は、気が効くかどうかがかなりのウェイトを占める。私は上司が望むことを考えながら仕事をしていた。
忖度からの脱出 覚醒か反抗期かもしれない
忖度がいつでも悪いわけではない。ブラック企業で出世を企む上司を忖度しても良いことはないが、立派な上司を忖度すると勉強になる。
そして、私は良い上司に恵まれていたので、上司を忖度していれば、貢献できて勉強になっていた。指示に従っている限り、仕事は大変でも責任は上司にあり、精神的には楽だった。
ところが『この人には忖度できないぞ』という人もいた。
「課長、これはどう処理しましょうか」
「それは、Aさんに決めてもらわないと…」
「これは、どっちにしましょうか」
「うん…いつもはどうしているかな」
「どちらかの案に決めないといけません」
「じゃ、一旦A案にしておこうか」
意思がない人を忖度できない。この課長は間違えることも多そうだ。課長になくても私には案がある。
ただただ、素直に「はい」と言えば良いのではない。言うべきことは言う。するべきことはする。それが正しい姿なのではないだろうか。
『自分の意思で仕事に取り組め』これに気づいた。 (その1)
上司に逆らって事業撤退を提案してみた
「10月1日付で新事業部に異動を命ずる。トップはあの山田だ」
新しい事業を始めることになった。以前からあったコンピュータルームの賃貸事業も新事業部となり、その担当となった。コンピュータが電算機と呼ばれていた時代に作った自社用の電算機室。面積に余裕があったので、他社に有償で貸していた。
「○!※□、
大赤字じゃないか! 自分の家計でも、これでいいのか!
$♪×¥●&%#。
なんとかするのがお前の仕事だ」
事業計画を作り説明したとき、尊敬していた山田先輩は、恐怖のボスになった。
「山田先輩は合理的な人。言っていることは正しい……のだろう。なんとかしよう」
冷静に考えて利益は出ない。設備は古く、更新も必要だ。
考え直した。
「山田さん、空調設備、発電機の更新、耐震補強工事で数億円かかります。回収できません。この事業、撤退しましょう」
「○!※□◇、$♪×¥●&%#」
話せばわかる……。
土日は憂鬱だった。
「社長に説明する。資料を用意してくれ」
月曜日の山田さんは、やっぱり合理的な人だった。
撤退計画を作った。会社としてあるべき計画だった。
『上司ではなく、会社のことを考えること』を知った。(その2)
上司の使い方を見た
あるとき、上司が社長に指示しているのを見た。
大切なお客様へのプレゼンの準備をした上司は、資料、展示物などを用意した。そして「社長、ここではxx、ここではooと言ってください」と指示しているではないか。びっくりした。
私の感覚では、資料、展示物を用意して、内容を社長に説明するのが仕事。説明の仕方は社長が決めるものだと思っていた。上司はプレゼンでの社長の役割設定まで含めて仕事をしていた。
『社長にも指示していいんだ』と知った。(その3)
上司を使ってみた
グループ会社の名前を統一することになった。それまでは「A商会」「B商事」「神奈川販売」などだった。これを「A商会東京」「A商会神奈川」「A商会埼玉」のように変更する。同じグループだとすぐにわかる。
私は本社のIT部門にいた。会社名に合わせてメールアドレスも変える。それならば、メールアドレスも統一しようと考えた。各社の責任者は役員だ。私の立場では頼みにくい。
専務の部屋に行った。
「この機会に、メールアドレスを統一しましょう。各社同じアドレスで一体感も増します。専務からの依頼文書を作りました。各社に頼みに行きます」
話は早かった。
「ここにハンコを押せばいいんだな」
専務の名前の文書は強力だった。各社からは簡単に了解をもらえた。
『自分の仕事のために上司に動いてもらうこと』を経験した。(その4)
プレーイングマネージャーにはなれなかった
だんだん自分の意思で仕事をするようになったと思う。そのうちに、いくつかの部門のリーダになった。私はリーダー自ら手を動かすことが大切だと思っていた。
ある人から聞いたことがある。「頭(トップ)を代えるときは、やり方を変えるときだ。前と同じことをするならば、代える必要はない」
ならば、手を動かすだけの私は不要だ。
チームとして成果を上げることを考えた
「みんな褒められるように動くんだ」と昔の上司に教わった。私も相変わらず褒められたかった。でも、私が手を動かしても褒められない。期待と役割は変わっていた。チームとして成果を上げることが期待される。
チームのメンバーは一人一人が専門家で、私がわからないことをしている。指示なんてできない。
私にできることは、応援することだけだ。
私にできることを考えた
通常の仕事は、一人ひとりのチームメンバーが進める。
「私の存在価値はなんだろう」
みんなが仕事をしやすくすることしかない。障害があった時にそれを取り除くことや、リスクとなることを確認しておくことなどが大きい。
多分、通常の仕事については、私が何もしなくても進むのが一番いい。そう言う状況にするのが仕事だと思った。
『みんなが成果をあげることが自分の仕事だ』と気づいた。(その5)
クビになった
私が何もしなくても仕事は進むようになった。今後の計画などをつらつらと考えていた2月のある日、専務に呼び出された。
「3月31日付で理事を解任する」
一瞬おいて、
「4月から、B社の執行役員だ」
グループ会社の執行役員になった。上司が責任を持ってくれるサラリーマン生活が終わり自分の意思で業務を執行する責任と権限がついてきた。
定年後には継続雇用で人材開発を担当した。そして、キャリアコンサルタントの資格もとり、キャリア相談などもしている。
これから
上司の意見をよく聞く真面目な会社員は多い。大切なのは上司ではない、組織とチームメンバーだ。そしてやりがいを持って仕事をするには自分の意思は必須だ。後押しも必要だ。
近いうちに会社を離れる。どの会社かは関係なく、真面目に働く人が、やりがいを持って楽しく効果的に働くキャリア構築をサポートすべく準備中だ。後押しもする。
ただただ、周りの評価を気にしていた素直なまじめ社員から始まった40年の経験と、キャリアコンサルタントとしての学びが必ず役立つと信じている。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
頑張っている人の参考となると嬉しいです。
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