チケットの転売対策は徹底したデジタル化しかない
歌手のライブやスポーツイベントなどのチケット転売問題について色んな人が色んな意見を言われていますが、個人的には防ぐ仕組みを構築しない限りは防げないと思います。言い換えると、転売可能なチケットを売っている限りは転売されてしまうのはしょうがないです。チケットを買い占めて高額で転売する行為に関しては、そもそも昔からダフ屋という形態で存在していました。興行主や警察はもちろんダフ屋の存在を公的には認めないながらも、しぶしぶというか存在自体を完全に抹殺するところまでは求めていませんでした。ある程度はダフ屋による二次的販売行為によって、空席が埋められるというメリットが興行主にはあったからです。ダフ屋も当然リスクがありますし、実際に会場周辺で警察による摘発に注意しながら買取と売却を行っていましたから、それほど効率がいいボロ儲け手段とまではいかないものでした。
しかし、このIT技術・インターネットが発展した現代社会においては、転売行為者にとってはチケットの入手と転売の手間暇が激減した上に、摘発されるリスクもかなり減ったために、高額転売行為が非常に容易に行えるようになりました。その結果、昔に比べるとダフ屋行為が激増して今のような社会問題化したという流れがあります。
この、「テクノロジーの進化」によってチケット転売問題が生じたわけですが、この問題を解消するには同じく「テクノロジーの進化」によるしかありません。
話しは少し飛びますが、例えば新幹線の指定席券を転売することは非常に簡単です。チケット自体には購入者の氏名が書かれているわけではありませんし、ICチップもQRコードもありません。しかし利益目的で新幹線のチケットを高額で転売している人はいません。何故でしょうか? 新幹線自体の本数が非常に多く、需要に比べて供給が少ないわけではないですから、わざわざ値段が高く設定された切符を買う必要がないからです。しかも、購入時期によって大きく値段が変わるわけではありません(お得な切符は存在しますが割引率は大して高くありません)。最悪、自由席券を購入して立って移動することも出来ます。
また、一方で飛行機の座席指定済みチケットを転売する人もいません。当たり前の話しですが、飛行機のチケットを発券する際には必ず氏名が記載されます。逆に言うと、新幹線のような発券の仕方で飛行機のチケットを運行会社が販売していたら、誰だって搭乗日よりもはるか前に安い値段で購入して、直前に高値で売却しようと考えるでしょう。それが出来ないのは、チケットを使用する人を確定させて販売しているから転売出来ないのです。
つまり、高額転売を防ぐには二つの方法があります。一つは新幹線的に、供給を増やす(さらには自由席もある)状態にすること。もう一つは、そもそも転売出来ない形で一個人に特定して販売すること。転売可能なチケットを転売することを完全に禁止するのは、自由資本主義の観点から見ると相当問題があります。高額で転売出来るということは、そもそも元のチケットの販売価格が低すぎるために、市場で均衡が取れていないということですから。
方法が二つあるといっても、ライブやスポーツイベントでチケットの供給自体を大幅に増やすというのは現実的ではありません。会場のキャパシティや出演者・選手の体力の問題とかありますから、売れているから開催回数をそのまま増やすという解決策は採りづらいです。となると、そもそも転売出来ない形での発券ということになります。ここで、最初に出てきた「テクノロジーの進化」が必要です。
進化といっても特に大した話ではなく、発券時に個人を特定する形で発券すればいいだけですから、チケット発行時に個人情報・支払方法で制限をかけることで対処できます。もう既に行われていることではありますが、この方法を徹底して発展させるしかありません。ネット障害・停電などでデジタルチケットの確認が出来ない恐れがあるという弱点は存在しますが、事前に印刷したQRコードを、会場出入り口のバッテリー駆動できる端末で読み込んで確認(事前にデータをローカルで保持しておく)という対策はそれほど困難ではないと思います。デジタルチケットであれば、同額やダウングレードでの席変更や、キャンセル分の主催者側でのリセールも容易でしょう。
転売対策だけではなく、主催者にも客側にもメリットがある形での販売方法の変更であれば、どちらも納得出来るのではないでしょうか。