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スマ電と東京電力で詳細に電気料金比較

まとめ

 安いと思って契約した「スマ電」の電気料金が、2023年3月の約款変更で計算式が変わり、全然安くなくなっていて愕然とした話。電気料金の比較の参考になれば幸いです。
 自宅の電力は「スマ電(株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ)」の旧プラン(ぐーんと!スマ得ホームプラン)という、東京電力(従量電灯Bプラン)よりも従量単価が安いプランを契約していた。そのため東京電力よりも電気料金は安くなっていると思い込んでいた。
 ふと料金明細を見ると、想像以上に燃料費等調整金額が高いことに気が付き、その計算式を約款で詳細に確認したところ、スマ電のほうが高くなるケースがほとんどであることがわかり愕然とした。
 スマ電の電気料金が高くなる要因は2点ある。
 1つ目は、スマ電が、燃料費調整単価を計算するための基準価格(平均燃料価格)を、東京電力の半額程度の低価格に設定していることである。このため輸入原油が安くなっても、スマ電の基準からみると、まだ高い原油であるとみなされて燃料費が上乗せ請求されるようになっている。
 2つ目は、スマ電の「燃料費調整単価」に含まれる「電源調整額」の中の固定価格「8.45(円/kWh)」の存在である。どれだけ卸電力が安くなっても、この固定価格が電気料金に加わっているため、スマ電の燃料費等調整単価は高止まりするようになっている。
 本文の後半では、スマ電と東京電力の料金を詳細に計算した。2023年11月の1ヵ月間に300kWh使用すると仮定した電気料金は、スマ電のほうが1800円も高額で、これは東京電力より20%も割高であった。


スマ電(旧プラン)の料金体系の特徴

  • (2023年3月 電気供給約款改訂)

  • 従量単価が東京電力よりも10(円/kWh)程度低いが、燃料費等調整単価が東京電力よりも18(円/kWh)程度高い傾向があり、電気料金の総額は高くなる

  • 燃料費調整単価に上限なし(平均燃料価格が上がったときの電気料金に上限はない)

  • 燃料費調整単価を計算するための平均燃料価格の基準が44,200(円/1kL)と低く設定されているため、燃料費調整額は増額調整(+調整)になりやすい。(2023年11月料金時点で+3.85(円/kWh)と増額調整)

  • 燃料費調整単価は「燃料費調整額」+「電源調整額」となっており、卸電力単価で調整される電源調整額が含まれることが東京電力(個人向け料金プラン)と異なる

  • 電源調整額に固定価格が含まれており、どんなに卸電力の平均市場価格が安くなっても、固定価格分として8.45(円/kWh)が請求される。

東京電力(従量電灯B)の料金体系の特徴

  • (2023年6月1日以降の、値上げされた従量単価をもとに比較)

  • 従量電灯Bプランには燃料費調整額に上限がある

  • 従量電灯Bプランには、卸電力単価が影響する調整金はない

  • 燃料費調整単価を計算するための平均燃料価格の基準が86,100(円/1kL)とスマ電よりも高く、燃料費調整額は減額調整(-調整)になりやすい。(2023年11月料金時点で-4.63(円/kWh)と減額調整)


以下では、スマ電と東京電力の料金を試算した。
2023年11月の1ヵ月間に300kWh使用すると仮定した。
各電力会社で同一の再エネ賦課金は考慮していない。
料金は消費税込み。

スマ電

東京電力エリア ぐーんと!スマ得ホームプラン(2022年3月10日新規受付終了)

基本料金

 契約電流50A 1180.00円
電力量料金(円/kWh)
 第1段階 120kWhまで 19.76円
 
第2段階120kWhを超え300kWhまで 25.87円
 
第3段階300kWhを超える 25.97円 

燃料費等調整

燃料費とは、燃料費調整額+電源調整額

燃料費調整額

平均燃料価格=A×α+B×β+C×γ(円:原油換算値)
 A=各平均燃料価格算定期間における1キロリットル当たりの平均原油価格  B=各平均燃料価格算定期間における1トン当たりの平均液化天然ガス価格  C=各平均燃料価格算定期間における1トン当たりの平均石炭価格
 α=0.1970
 β=0.4435
 γ=0.2512
燃料費調整単価
 (-調整) 1キロリットル当たりの平均燃料価格が44,200円を下回る場合
 燃料費調整単価 =(44,200円-平均燃料価格)× 基準単価/1,000
 (+調整) 1キロリットル当たりの平均燃料価格が44,200円を上回る場合
 燃料費調整単価 =(平均燃料価格-44,200円)× 基準単価/1,000
 (※ 燃料費調整単価に上限なし)
基準単価(円/kWh 従量制供給の場合)
 23銭2厘

計算:平均燃料価格(11月分=12月検針→6月1日~8月31日の平均)
(1)積み上げ計算
平均原油価格(千円/kL)(6月~8月の平均)
 (71.83+72.05+73.5)/3=72.46千円/kL
平均液化天然ガス価格(千円/MT)(6月~8月の平均)
 (87.05 +70.22+74.63)/3=77.30千円/トン
平均石炭価格(千円/MT)(6月~8月の平均)
 (33.53 +31.49+29.71)/3=31.58千円/トン
平均燃料価格(円:100円単位)
 (72.46×0.1970+77.30×0.4435+31.58×0.2512)×1000=56500円
燃料費調整単価(平均燃料価格が44,200円を上回る場合)
 (56500-44200)×23銭2厘/1000=2円85銭(1kWhあたり)
(2)東京電力のホームページの貿易統計価格を使用
平均原油価格(円/kL)(6月~8月の平均)
 72598円/kL
平均液化天然ガス価格(円/MT)(6月~8月の平均)
 88168円/トン
平均石炭価格(円/MT)(6月~8月の平均)
 29440円/トン
平均燃料価格(円:100円単位)
 (72598×0.1970+88168×0.4435+29440×0.2512)=60800円
燃料費調整単価(平均燃料価格が44,200円を上回る場合)
 (60800-44200)×23銭2厘/1000=3円85銭(1kWhあたり)

電源調整額

電源調整単価
 ・1キロワット時当たりの平均市場価格が7円00銭を下回る場合
 電源調整単価 ={ 固定価格+変動価格(平均市場価格-7円00銭)× 基準単価/(1−損失率) } ×(1+消費税率)
 ・1キロワット時当たりの平均市場価格が13円00銭を上回る場合
 電源調整単価 ={ 固定価格+変動価格(平均市場価格-13円00銭)×基準単価/(1−損失率) } ×(1+消費税率)
固定価格(円/kWh)
 8円45銭
変動価格(円/kWh)
 平均市場価格 16円22銭(月平均 受渡年度2023年 受渡月11月 東京)
 平均市場価格が13円00銭を上回る

基準単価(円/kWh)
 0円20銭
損失率
 6.9%(東京電力パワーグリッド 低圧で供給する場合)

計算:電源調整
 電力調整単価={8.45+(16.22ー13.00)×0.20/(1-0.069)}×1.10
 =10円06銭(1kWhあたり)

計算:燃料費等=燃料費調整額(積み上げ計算採用)+電源調整額
 2円85銭+10円06銭=12円91銭(1kWhあたり)

国の電気・ガス価格激変緩和対策事業

燃料費等調整額から、
-3.5(円/kWh)となる

300kWh使用時の試算

1180.00+19.76×120+25.87×(300-120)+(12.91-3.5)×300
=1180.00+19.76×120+25.87×(300-120)+9.41×300
=11030.8円(+再エネ賦課金)

東京電力

従量電灯B 50A(2023年6月1日の値上げ以降)

基本料金

 契約電流50A 1476.20円
電力量料金(円/kWh)
 第1段階 120kWhまで 30.00円
 
第2段階120kWhを超え300kWhまで 36.60円
 
第3段階300kWhを超える 40.69円 

燃料費調整額

平均燃料価格=A×α+B×β+C×γ(円:原油換算値)
 A=各平均燃料価格算定期間における1キロリットル当たりの平均原油価格  B=各平均燃料価格算定期間における1トン当たりの平均液化天然ガス価格  C=各平均燃料価格算定期間における1トン当たりの平均石炭価格
 α=0.0033
 β=0.4001
 γ=0.6241
燃料価格調整項
 (-調整) 1キロリットル当たりの平均燃料価格が86,100円を下回る場合
 燃料費調整単価 =(86,100円-平均燃料価格)× 基準単価/1,000
 (+調整) 1キロリットル当たりの平均燃料価格が86,100円を上回る場合
 燃料費調整単価 =(平均燃料価格-86,100円)× 基準単価/1,000
 (+調整) 1キロリットル当たりの平均燃料価格が129,200円を上回る場合
 燃料費調整単価 =(129,200円-86,100円)× 基準単価/1,000
 (従量電灯Bプランには燃料費調整単価の上限値が存在する)
基準単価(円/kWh 従量制供給の場合)
 18銭3厘

計算:燃料費調整
東京電力のホームページの貿易統計価格を使用
平均原油価格(円/kL)(6月~8月の平均)
 72598円/kL
平均液化天然ガス価格(円/MT)(6月~8月の平均)
 88168円/トン
平均石炭価格(円/MT)(6月~8月の平均)
 29440円/トン
平均燃料価格(円:100円単位)
 (72598×0.1970+88168×0.4435+29440×0.2512)=60800円
燃料費調整単価(平均燃料価格が86,100円を下回る場合)
 (86100-60800)×18銭3厘/1000=(-調整)4円63銭(1kWhあたり)

国の電気・ガス価格激変緩和対策事業

燃料費等調整額から、
-3.5(円/kWh)となる

300kWh使用時の試算

1476.20+30.00×120+36.60×(300-120)+(-4.63-3.5)×300
=1476.20+30.00×120+36.60×(300-120)+(-8.13)×300
=9225.2円(+再エネ賦課金)

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