見出し画像

従業員生涯価値(ELTV)とは|人的資本の定量化

※2024年1月更新

ELTVの概要

ELTVとは、Employee Lifetime Valueの略称であり、日本語では従業員生涯価値といいます。

従業員が会社に対して、入社時から退職時までにどれくらい成果を出し、貢献したかを表す指標です。また、ELTVには従業員の採用のために費やされた、一人あたりの採用コストがマイナスの値として加算されます。
したがって、算出される値がプラスであれば、その従業員は採用コスト以上の価値を創出しているといえます。ELTVはこのように、従業員の創出した価値の合計から採用コストを差し引いた値で表され、「利益」や「ROI(費用対効果)」の概念と似ていることがわかります。

なぜELTVが意識されるのか

ELTVは人事戦略を策定する上で重要な指標であるといえるでしょう。その理由は次のとおりです。

・人事に関する実態を定量的に把握することができる

・HRM(人的資本管理)や人事施策をデータドリブンで検討することができる

・過去のELTVを分析し、将来のELTVを予測・シミュレーションすることで人事施策の最適化に役立つ

・人事戦略のビジネスに対する成果は定量的に把握しずらいのが現状である

・採用等の人事戦略は経営成績に対して大きな影響力をもっており、データに基づいた合理的な策定が必要である

ELTVの計算方法の例

以下のグラフは勤続期間に対する従業員価値を示していて、ELTVは以下のグラフの面積(青い部分)で表されます。

画像1

ELTVを向上させるためには、この面積を大きくする必要があります。

また、ELTVそして採用コストを計算式にすると以下のようになります。

ELTV = 従業員の価値 × 勤続年数 (厳密にいうと、積分になります)

採用コスト =(人事部の人件費 + 面接官の人件費 + 採用ツール使用料 + エージェント手数料)÷ 応募者人数

ここで言及している採用ツールとは、Web試験や録画面接等に必要なシステムのことを指します。

またエージェント手数料とは、エージェント、つまり人材紹介サービスを提供する組織に支払う料金のことです。企業は、人材確保のためにこのサービスを利用し、応募者を募っています。

また、従業員の価値は以下のように要素を分解することができます。

従業員の価値 = オンボーディング完了後の従業員価値* + 従業員価値の成長率 × 勤務年数 - 従業員価値の減少分 - 採用コスト

*オンボーディングとは、新人教育・研修のことを指します。

これらの要素を改善していくことが、従業員価値の向上、ひいては企業価値の向上につながります。

ELTVを高めるための施策

はじめに、ELTVを向上させるためには以下の観点を軸に考えるとよいと考えられます。

【採用時】
・採用コストを削減する

【オンボーディング時】
・新人教育コストを削減する 
・新人教育期間の短縮

【オンボーディング後~退社まで】
・勤続年数の長期化
・従業員パフォーマンス(価値)の最大化

①選考フローの最適化
言語・計数・英語・性格の能力をチェックする試験や、コンサルティング業界におけるケース面接等のワークサンプルテスト(実際の業務内容に近いテスト)は、応募者の技能を正確に知ることができるため、オンボーディング後の従業員の高いパフォーマンスが期待でき、新人教育期間の短縮にもつながります。
また、企業が希望する能力を持ち合わせている応募者を正確に判断するために選考方法を最適化することで、内定辞退率を減らすことや勤続年数の長期化にもつながることが予想されます。

②Web面接・録画面接等の適用
無駄な人件費が削減され、採用コストの削減につながります。録画面接では応募者の雰囲気やふるまいが面接官がいなくてもわかるため、採用コストの削減や面接の手間を省くことができます。

③リファラル採用
リファラル採用とは、社員が知り合いを応募者として紹介することで採用が決定する方法です。社員が深く理解している人であり、その企業と適性が合う可能性が高いため、勤続年数の長期化につながり、採用コストの削減もできます。

④ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングとは、企業が自ら人材を探し出す方法です。エージェントの仲介料を必要としないため、採用コストの削減になります。

⑤オンボーディングの改善
オンボーディング、すなわち新人教育を充実させることでオンボーディング後のパフォーマンスが大きくなり、新人教育期間の短縮につながります。

⑥職場環境の改善
労働環境を改善し、働きやすい職場にすることで従業員のモチベーションが高まり勤続年数の長期化パフォーマンスの増大が期待されます。具体的には給与・労働時間・人事制度の見直し、多様なポジションの設定等が施策として挙げられます。

さいごに

人事制度や戦略が、ビジネスに対してどのように影響しているのかをデータ化・定量化することはなかなか難しいと考えられますが、人的資本管理は経営成績に大きく寄与する要素です。
今回のELTVのような指標を算出し、定量的に人事施策の検討を行うことは実効性の高い経営改革につながると考えられます。
ELTVを含め、より多くの企業がデータドリブンな人事制度改革を進めることを願っています。

弊社トピックス【ジョブ型の仕組みに関するエッセンスと導入ポイント】

人事制度のことなら、セレクションアンドバリエーション