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看護師の退職率を改善し、27万人の看護師不足解決に取り組む【株式会社エピグノ】のビジネスモデル調査と人事課題推測

最終更新日:2024/4/16

当noteでは、各企業のビジネスモデルを分析しています。
また、取締役会のスキルマトリクスを分析し、コーポレートガバナンスコードに沿った経営の実践度を確認しています。
セレクションアンドバリエーションでは、さらなる事業価値増大に向け、特に中堅規模の上場企業におけるスキルマトリクスのあるべき姿を提言し、現経営層のさらなる活躍、そして次世代経営層育成に向けたボードサクセッションの仕組みの導入を支援しています。


資金調達額の推移

エピグノ_資金調達

累計3億6,500万円を調達
調達した資金の多くは、既存企業の拡大、それに伴う組織の拡充に充てられた。

企業概要

Epignoは「叡智」を意味する古代ギリシャ語“Epignosis”に由来する。
医療・介護機関様を支える叡智を与えたい想いが込められている。

設立日:2016年9月2日
住所 :〒106-0032 東京都港区六本木6-8-10 STEP六本木ビル WEST 1階
資本金:2億8250万円

事業概要

医療機関の組織への定着率を向上させること(離職率防止)、医療安全を向上させることを目的とし、医療・介護人材や在宅診療事業所スタッフが抱える業務負担を軽減するサービスを展開している。
働いている医療・介護人材がイキイキと働き、自身が持っている夢ややり甲斐を実現できる人材マネジメントを支援している。

ビジネスモデル図解

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事業における強み

1. 医療業界における現場の真のニーズを把握できる組織構成
従来のシステムベンダーの場合、担当営業とエンジニアが現場のヒアリングを行っていた。その結果、現場のニーズとは乖離したシステムとなってしまうケースがある。
エピグノには、医師・看護師経験者が参画している。医療の知見をもったメンバーがヒアリングしたうえで開発するため、現場に即したシステムが提供できる。

2. サービスの有効性
導入段階に応じて、随時アンケートやヒアリングを実施し、KPIを用いて効果検証を行うことで、システムの品質を随時アップデートしている。

初期段階:満足度調査アンケートを実施
中期段階:採用フィーの減少額、離職率の調査
長期段階:ラグー値の変化を調査

3. 業務改善だけでなく、組織全体のモチベーション、エンゲージメント向上にフォーカスしたサービスを提供
個人や組織全体の退職リスクを事前に察知できるため、迅速な定着支援を行うことができる。

想定用途・市場規模

エピグノは、看護師の離職防止を目的としたマネジメントシステムを提供しているため、看護業界を選定する。

【市場規模の推定】
▼1年間あたりの看護師獲得における規模の概算額:7355億4000万円

国内の看護師の就業者数:130万人(平成27年 国勢調査)
看護職員の離職率:11.5%(2020年 病院看護実態調査)
 ⇒1年間あたりの離職人数を推定すると14万9500人
看護師の平均年収:492万円(令和2年賃金構造基本統計調査)
 ⇒離職人数×平均年収=看護師獲得における規模の概算額を算出
別の市場規模推定式としては、ナース数が10名以上いる病院数×単価でも概算が可能と推測。

【市場全体のトレンド】
2025年には最大で27万人の看護師が不足すると推計されている。
さらに、人手不足の深刻化のみならず、医療ニーズに対処できない可能性もある。
2025年の日本は、人口の中で最も多くを占める「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となる。国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上となり超高齢化社会を迎える。
この社会構造を踏まえると、医療ニーズが急増することは確実であるが、増えたニーズに対応しきれない可能性もある。人材不足が根本的に解消されなければ、医師や看護師ら医療従事者がさらなる過重労働を強いられ、大量の離職者が増えるという循環に陥る懸念がある。

【ベンチマークとなる企業】
カオナビ、タレントパレット、クリップライン

【事業に関する考察】
エピグノは、タレントマネジメントに特化したSaaSサービスを提供しているため、競合が多い領域だと思われる。
エピグノの強みを活かし、現場経験のあるメンバーが真のニーズを汲み取り、経過的な運用支援を実施することで、導入企業数を増やしていくことがビジネス上の鍵となるだろう。

マネタイズに関して

医療・介護機関がエピグノのサービスを導入するタイミングで、対価を得る。

【ビジネス運営上にかかる費用】

▼固定費
人件費、システム開発費
▼変動費
不明

経営層

代表取締役社長CEO:乾 文良

大手前高松高等学校卒業
2011年 富士通株式会社入社。セールス・マーケティング業務に従事
2015年 富士通株式会社退社
慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。在学中に交換留学生としてドイツ国内トップビジネススクールのマンハイム大学ビジネススクールへ約6ヶ月間留学
ファミリー企業(商社)にて元経営幹部として企業経営やM&Aを経験
2016年 エピグノを共同起業
2018年 代表取締役に就任

取締役最高医療責任者(CMO: Chief Medical Officer):志賀 卓弥 

宮城県仙台第一高校卒業
▼北里大学医学部卒業
▼3次救急病院にて外科初期研修を修了、麻酔、救急、集中治療に従事し、ECMOなど体外循環を経験
▼2015年 東北大学医学系研究科博士課程修了
▼2016年 エピグノを起業
▼2017年 慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了
▼現在 東北大学麻酔医、集中治療医

最高技術責任者(CTO: Chief Technology Officer):ブセジュラ マリク オリヴィエ

▼2010年7月 フランスにて高等学校教育の修了を認証する国家試験に合格(General Scientific Baccalauréat)
▼2012年7月 フランスにてLycée Victor Hugo高校準備級卒業(日本の大学1・2年に相当)
▼2016年9月 フランスナント国立中央学校修士課程修了
▼2016年9月 慶應義塾大学大学院情報工学科コンピューターサイエンス分野修士課程修了
▼2019年 慶應義塾大学大学院情報工学科コンピューターサイエンス分野博士課程修了 データ可視化博士
▼医療系AI関連Productの構築を経験
▼医療系スタートアップのサイマックス株式会社にてプロダクト責任者を担当

スキルマトリクス

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⇒全体的に適度な分散が見られた。リスクテイク経験や高度IT専門性に長けた人材が存在しているため、事業が拡大フェーズに入っても彼らが牽引していくことが期待できる。
一方で、今後IPOや更なる人員拡充を目指すのであれば、リスクマネジメントに優れた人材を始め、取締役人数自体を増やすことにより、監督と執行の分離を備える必要があるかもしれない。

※スキルマトリクス図とは取締役の素養・経験及び取締役会におけるバランスを一覧表にまとめたものである。各社で開示されているガバナンス内容を元に僭越ながら推測させていただいた。要求水準・選定定義に関しては企業により差が生じるため、ここではCGCで求められている水準・選定定義を基に設定した。

ミッション・バリュー

ミッション
全ては未来の患者と家族のために

バリュー 
Epigno 5C
・顧客起点(Customer-Oriented):顧客にとって価値のあるものをつくろう
・チームワーク(Cooperation):最高のチームメイトと最高のシナジーを創造しよう
・スピード(Celerity):最大のパフォーマンスを最速のスピードで実現しよう
・スペシャリティー(Craft):誰よりも高い専門性とオーナーシップを持ち、最高のパフォーマンスを発揮しよう
・熱情(Craze):狂うほどに夢中になろう

人事制度推測

【基本情報】
・全従業員:9名
・役員人数:3名

【採用】
・新卒採用:無
・中途採用:有
・媒体  :自社HP、Wantedly、転職サイト
・採用職種:マーケティングリーダー、CxO候補人材エンジニアサイド
・求める人物像:
 ・良い人(人格者)であること
 ・地頭が良いこと
 ・弊社カルチャーフィット(フラット、努力能力主義、オーナーシップ重視)
 ・自ら考え、実行し、顧客起点で自身のチームのビジョンを作り、伝えられること

【等級・配置・評価・報酬】
・記載なし

インターン生による考察

非上場企業であるため、人事制度に関する情報はあまり見つけられなかったが、採用要件から即戦力となる人材を求めていることが分かった。特に、エピグノと同規模の企業におけるリスクテイク経験や組織マネジメント経験のある人材を歓迎していると読み取れた。
エピグノのメンバー紹介のページでは、各人のプロフィールや入社理由に加え、各人が一緒に働きたい新メンバーの人材要件新メンバーへのメッセージが掲載されていた。メンバ―の中には、CTOスカウトによるインターンを経て入社した方もいた。
そのため、より詳細な入社後のフローや教育体制を公開情報として示すことで、応募者がアプローチしやすくなるかもしれないと思われる。

さいごに

スタートアップ・ベンチャー企業に必要な人材マネジメントについてはこちら

弊社代表平康によるCGCとスキルマトリクスに関する記事はこちらから

【免責事項】
本調査は弊社長期インターン生により作成されています。また、本調査は、現在弊社が入手し得る資料及び情報に基づいて作成したものですが、弊社は、その資料及び情報に関する信憑性、正確さを独自に確認しておりません。本資料において一定の仮定を用いた試算を行っている場合、その試算結果は仮定に基づいた概算であるため、別途詳細な検討が必要です。