【第6章】50代社員の活躍を急ごう|ミドル・シニア社員の生産性を上げるための人事の仕掛け
最終更新日:2024年5月23日
本連載では、当社マネジャーの柳瀬大地が「月刊 人事マネジメント」にて執筆した、企業業績向上のための50代社員の活躍を引き出す人事の仕掛けを分かりやすく紹介いたします。
本記事では、今まで紹介した取り組みを継続的かつ確実に下支えし、50代社員の活躍をより効果的に促すための社内環境作りのポイントについてご説明します。
*本記事は、10分以内で読むことができます。
「50代社員の活躍を急ごう|ミドル・シニア社員の生産性を上げるための人事の仕掛け」は、全6回にわたる内容ですので、ぜひ全てご覧いただけると嬉しいです!
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50代社員の成長・活躍を支える環境の作り方
これまで5回にわたり、50代社員の活躍を促す人事の仕掛けを紹介してきました。
いずれの回も活躍のために重要な視点となる「モチベーション」と「スキル」を軸とした内容でした。
「モチベーション」についてはキャリア自律を目指した研修の実施を、「スキル」についてはポータブルスキルとデジタルリテラシー両方の獲得を目指した教育体制の充実をご紹介しました。(図表)
今回は、こうした取り組みを継続的かつ確実に下支えし、50代社員の活躍をより効果的に促すための社内環境作りのポイントについてご説明します!
モチベーション向上を後押しするための上司の存在
50代社員のキャリア意識を見直し、業務や仕事観に関するモチベーションを向上させるための仕掛けの1つとして、第3章にてキャリア自律研修をご紹介しました。
アンラーニングやナラティブアプローチを用いたこの研修は、50代社員の方々にとって自身の仕事観や働きがいを捉え直すきっかけとなります。
とはいっても、受講後すぐに自律的なキャリア観が生まれ、モチベーションが高まるわけではありません。
研修での気づきを日々の業務、または周囲のメンバーとの関わりのなかで意識的な行動へと昇華させていく必要があります。
そして、この過程で重要な役割を果たすのが上司の存在です。
1 )上司の関わり方の勘所
50代社員にとって、上司が年下であるケースが多いと思われます。
パーソル総合研究所の調査でも、上司の年齢と部下の年齢が逆転するのが53.5歳という結果が出ています。
管理職はマネジメントを通して部下のモチベーションや仕事ぶりに良い影響を与えていく必要があります。
これは部下が年上でも変わりありません。
ここでは、年下上司が年上部下をマネジメントする際に意識して取り組むポイントをご紹介します。
信頼関係の構築
まずは、年上部下との信頼関係構築を支援することが大切です。
互いに信頼関係がなければ、年上部下のモチベーションを上げるためにいくら働きかけても効果は薄く、かえってマイナスイメージを抱かせる恐れもあるからです。
信頼関係を築くための第一歩は、年上部下の目線に合わせたコミュニケーションです。
業務の話題を中心に、年上部下が現在抱いている課題感や要望を聞き出すことや、共通の認識・話題を作ることなどに関して、管理職への徹底した指導が重要です。
また、年上部下の存在や話題を否定せず、前向きなフィードバックを行う「傾聴」スキル獲得の支援も有効です。
これらのスキルを持った管理職に対して、年上部下が「自分にしっかり向き合ってくれる」「理解しようとしてくれている」と感じることで、信頼感を持つようになるでしょう。
短期間で成果が出にくい取り組みではありますが、人事部としてしっかりと管理職を支援していけるようにしましょう。
仕事を「任せる」
年上部下との関係性が築ければ次に、個々人の特性を踏まえた業務管理を目指しましょう。
責任ある仕事を割り振り、他のメンバーと同じように日常における会話のなかで状況を確認しながらサポートすることがポイントです。
その際、年上部下の業務の進め方にあまり干渉せず、基本的には「任せる・サポートする」ことを意識・実行してもらうように管理職を指導しましょう。
2 )上司のマネジメント能力の向上
上司が日常業務のなかで50代社員を気にかけ、支援していくことは、50代社員の今後のキャリア形成・モチベーション向上につながります。
こうした効果をさらに高めるために、人事部において、上司側のマネジメント能力の底上げ・向上のための教育を体系的・ 計画的に実施することをおすすめします。
具体的には、先ほど紹介した「傾聴」など部下の成長を促すコミュニケーションスキルや部下の納得度と信頼感を高める評価スキル、周囲を巻き込みながら組織成果を出すためのリーダーシップなどの研修が考えられます。
また、キャリア再構築を促すために活用した「アンラーニング」や「ナラティブアプローチ」といったスキルについて、上司側も一定程度理解することで50代社員へ多様なアプローチが可能になるため、上司側に積極的に情報共有しましょう。
アップデートしたスキルを活かすために
第4・5章で紹介した2つのスキルは、50代社員の活躍の場を広げるものです。
ただし、スキルを発揮する機会がなければ会社としては宝の持ち腐れとなってしまいます。
また、スキル発揮の機会があっても適正に評価・報酬に反映できなければ人材流出につながる恐れもあります。
会社としては、スキルアップした50代社員に真に活躍し、会社に貢献しても らうために、制度面から以下のようなサポートをすることが挙げられます。
1 )業務内容の再整理・明確化
まずは社内の業務を職務基準で見直してみましょう。
「人」ではなく「職務」をベースとして考えることで、会社の成長に向けて職務レベルごとにどのような成果を求めるのか、成果創出のために必要なスキルや行動が明確になります。
50代社員のスキルアップに向けた保有スキルの整理・可視化の取り組み(第 2章)と連動させることで、より機動的な人材配置ができ、ひいては50代社員のスキル発揮を促し、さらなる活躍につなげられるでしょう。
2 )成長を促すための評価と報酬のあり方検討
職務レベルに応じた成果やスキルを評価対象とし、成果は達成度、スキルは習得度として捉え、それぞれ報酬に反映する仕組みを検討しましょう。
特にスキルは自分の努力によるところが大きいので、適切な評価の仕組みは50代社員のさらなる自己研鑽を促し、スキルのアップデートを加速させる原動力、モチベーションにもなるでしょう。
会社を巻き込んだ取り組みへ
以上、50代社員の真の活躍を実現するための環境作りについてご紹介してきました。
これらの取り組みは、経営層を含めた会社全体で実行していくことが欠かせません。
会社の持続的な発展のために50代社員を含むミドル・シニア社員の活躍を実現するという経営スタンスを明確にし、制度構築・ 運用推進に向けた組織体制の確立、予算化など必要な経営資源を投入していくことが求められます。
会社側が全社的に取り組む姿勢を示し、実行に移すことで、50代社員にも会社の本気度が伝わり、変革を促すことにつながります。
まとめ
50代社員の活躍は、一朝一夕で実現するものではありません。
まずは会社の成長に向けて50代社員にどのようになってほしいか、あるべき姿を明確にしましょう。
そしてあるべき姿の実現に向けた取り組みについて、会社を巻き込みながら、優先順位をつけて地道に、着実に進めることが大切です。
本記事にて、「50代社員の活躍を急ごう|ミドル・シニア社員の生産性を上げるための人事の仕掛け」は最終回となります!
最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。
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