パーツ作業から俯瞰に視点を変えることで人事コンサルタントとして成長する
最終更新日:2024年5月13日
コンサルタントがシニアからマネジャーに成長する段階で特に意識すべきことを書いておきます。
コンサルタントを目指されており、弊社に興味を持ってくれるような人向けのちょっとした案内としてもご活用いただけると幸いです。
まずパーツ作業をしっかり身につける
弊社のコンサルタント育成手順は、まずパーツとしての作業を一人でできるようになることから始めます。
そのための基準として「デリバリー」というコンピテンシーを設定しています。
「デリバリー」はさらに3つの詳細コンピテンシーに分かれます。
「プロセス」
「ドキュメンテーション」
「プレゼンテーション」
としていますが、図にするとこんな感じ。
簡単に言えば、段取りが組めて、資料を作れて、お客さんの前で話せるようになるステップを細分化しています。
上記を踏まえつつ、たとえば給与の市場比較分析だとか、コンピテンシーアンケートからの回帰分析だとか、エンゲージメントサーベイ結果の可視化だとかを覚えていきます。
さらにその先にはイシューの特定と解決策検討などがまっていて、それらができるようになっていくと、アソシエイトからコンサルタント、シニアへとキャリアアップしていきます。
これらはコンサルティングというサービスにおけるパーツ作業をしっかりできるようになるということです。
ここから次のステップへキャリアを高めていこうとするとき、パーツ作業を忘れる必要が出てきます。
マネジャーに求められる俯瞰視点
パーツ作業をずっと続けていると、思考が演繹的になっていきます。
特に自分の作業に自信を持つほどに、Aという事実がクリアになったから、Bという打ち手が必要だ、と考えがちになります。
とても単純な例でいえばこんな感じです。
エンゲージメントサーベイの結果、上司とのコミュニケーションが不足していることが判明
⇒なら1on1など、上司とのコミュニケーションを必須化する仕組みを導入しよう!
賃金の市場比較の結果、給与水準が低いことが可視化
⇒可能な範囲で報酬水準引上げを志向しよう。そのためにできることを考えよう!
ちょっと考えれば、これらのような考えはすぐにひっくり返されることがわかります。
外部のコンサルタントが調査してわかる事実というのは、たいてい「社内のみんながわかっていること」だったりするからです。
それを外部者が言うから意味があるといえばそうなのですが、今までみんなが感づいていても手を打てていなかった理由があるわけで、それらをいちいちあらためて口に出しても、変革を生むことはできません。
けれども演繹的なパーツ作業者は、なぜ自明のことに手を打たないんだ!と憤ることになります。
ここに正義感とか、自分の承認欲求とかがまじってくるとややこしくなりがちです。
誰でも言えるようなシンプルなソリューションをごり押ししながら、これができないからあなたの会社はダメなんだ!と言ったりします。
この手の正論は、経験を積んでそんな矛盾を二周とか三周くらいしてきたベテランコンサルタントがいうならまだ聞き入れられやすいのですが、30代そこそこの頭よさそうな人が言っても、ほぼ聞き入れられません。
ではどうするのか?
パーツの作業自体は、可視化という大きな意味を持ちます。
これまで俎上に載せることさえ躊躇されたようなことも、他のさまざまな課題と同じように並べられれば、あえてそのことについて言及できるようにもなります。
その上で「俯瞰」するのです。
積み上げの先に俯瞰はない
俯瞰というと全体像を見る、ということですが、可視化した事実を全体的に把握するということではありません。そんなことはパーツ作業者でも十分にできます。
事実を積み上げて全体像を把握するということは、まさに演繹的思考そのものです。
しかしマネジャーに求められるのは、ゴールとしての仮説からの帰納的思考です。
その際になにから帰納するか、ということが大きなポイントになります。
帰納的思考のためにか「仮説」が必要なわけですが、この仮説を適切に設定するために、俯瞰が必要です。
ここで理解していただきたいポイントは、俯瞰の範囲に、発注者である経営層や人事部門の意図を含めることです。
つまり、パーツ作業で明らかになった事実に加え、利害関係者たちの意図を俯瞰することが求められるわけです。
それができてようやく、作業者を卒業し、クライアントに信頼されるマネジャーとして活躍できるようになります。
たとえば先ほどの例のように、「上司とのコミュニケーション不足」や、「賃金水準が低いこと」、が事実としてクリアになったとします。
でもそんなことは社内のみんながわかっていることです。
では、なぜ人事コンサルタントに声がかかったのか。
よくあるコンサルティング依頼のきっかけはこんな感じです。
「今の制度を使い続けてもう20年ほどなのでそろそろ変えたい」
このとき、言葉通りに「20年前の古い仕組みだから変えたい」という風にとらえてしまうと、俯瞰の視点は持てません。
人事制度を変えたい理由は、必ず別にあります。
調査によって給与水準が低いとか、コミュニケーションが不足しているとかがわかってきても、それは解決すべき直接的課題ではないのです。
組織風土の最適化こそが人事コンサルタントが提供する価値
人事コンサルティングは、人事制度を設計し、運用を支援する仕事です。
けれども、その結果として改善するものは、人事の仕組みではありません。
人事コンサルタントが提供する価値とは、組織風土の最適化、です。
そして、組織風土は、給与の決め方や昇進昇格ルールだけで決まるものではありません。
経営層の普段の発言や行動、管理職による組織運営、一人一人の従業員の働く意欲の源泉などがループしながら形成されるものです。
そこに環境変化を踏まえた、事業計画などがからみあってきます。
もちろん競合他社やお客様の状況も深く関わってきます。
それらを俯瞰し、あるべき解決策を提言することこそが人事コンサルタントが提供できる価値です。
セレクションアンドバリエーション株式会社
代表取締役 平康慶浩(ひらやすよしひろ)
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