良い人事コンサルタントを見極める3つのポイント
最終更新日:2024年5月13日
良い人事コンサルタントとは
人事コンサルタントを30年近く続けていると、設計させていただいた人事制度を運用し、マイナーチェンジし、やがてさらに新しい制度に変更する、それぞれのタイミングすべてに携わることが数多くあります。
環境変化にあわせて事業戦略は変わるし、事業戦略が変われば従業員に求める行動やスキルも変わることがあるからです。
おかげさまで長らく付き合わせていただく会社からはご好評をいただくわけですが、なぜずっと選ばれ続けてきたのか、ということを改めていろいろと尋ねてみました。
そうすると、弊社を選んでいただいている理由が、そのまま、「良い人事コンサルタントの選び方」、となることに気づきました。
また、自社側でいえば「良い人事コンサルタントが備えるべき意識・スキル・行動」にもなると考えました。
それほど長い文章ではないので、簡単にまとめてみます。
人事制度設計における3つのポイント
ずっと続くご契約の理由は、設計した制度がしっかり機能している、ということがもちろんあげられます。
ではしっかり機能する制度は、どう作られたのでしょう。
機能している人事制度は、設計時点で3つのポイントがクリアされています。
第一のポイントは「人事ポリシーが明確になっている」ということ。
第二のポイントは「多様な選択肢から選んでいる」ということ。
第三のポイントは「一人一人の給与額が丁寧に計算されている」ということ。
これらをコンサルタントの要件として示すと次のようになります。
第一のポイントは「人事ポリシーの策定から始めている」
第二のポイントは「多様な選択肢のメリット・デメリットを示している」
第三のポイントは「給与額決定に至るまで詳細設計を行っている」
具体的にみてみましょう。
人事ポリシーがなぜ重要なのか
ワンマンオーナー企業でもない限り、人事制度設計には多くの人が関わります。
人事部門だけでなく、事業の責任者、管理職たち、組合の方々など。
人事制度設計のプロジェクトでは、それらの利害関係者たちとの調整をしっかり行うため、プロジェクト事務局を設定し、そこでまず議論を進めます。
利害関係者の方々の意見は、あらかじめヒアリングとしてコンサルタントが個別に確認することもあれば、全体アンケートとして広く意見をいただくこともあります。
また社内で事前に会議を開いて、意見を集約していただくこともあります。
そこである程度方向性が定め、そしてプロジェクトを進めていくことになります。
けれども実際に給与の話とか、評価基準の話になってくると、「そこはこうしたい」「この部分を変えられては困る」という、それぞれの利害に応じた意見が頻出してきます。
利害だけでなく、良かれと思っての意見なども出てくると、収拾がつかなくなることもあります。
強力な権限を持つワンマンオーナーがいれば、そこで意思決定がされるのですが、そうじゃない場合には「多様な意見もしっかり反映しなくては」ということにもなりかねません。すると当初6か月で予定していたプロジェクトがリスケジュールされ、1年以上の長期にわたることもあったりします。
幸い、弊社が関わるプロジェクトでそんなリスケジュールはほぼ発生しないのですが、その理由が「人事ポリシーの策定から始めている」からです。
私たちはそれを「人事のグランドデザイン」と言っています。
人事のグランドデザイン、人事ポリシーとは、そもそもどんな人材に活躍して欲しいのか、ということを定め、求める意識・スキル・行動を極力具体的な言葉にしていくことです。
理想のペルソナ的な人材をイメージするのではなく、個々の事業、個々の職種に置き換えてみるとどうなるのか、ということを具体化していくのです。
たとえば、「チャレンジ」というと、誰しもがそれは必要だというでしょう。
けれども、新規事業担当に求めるチャレンジと管理部門事務担当に求めるチャレンジとは全く異なります。むしろ給与計算担当に妙なチャレンジをされると、間違った給与額を振り込むことになるかもしれません。
それは決してあってはいけないことです。
社長が従業員に求める意識・スキル・行動。
事業部長が部下に求める意識・スキル・行動。
同僚間で発揮してほしい意識・スキル・行動。
新人に求める意識・スキル・行動。
それらを具体化して、利害関係者間で最初に合意しておくことが、人事ポリシーを定めることです。
そして、これを最初に定めておかないことには、プロジェクトがうまく進まないことになります。
多様な選択肢で最適解を探す
人事制度には流行があります。
今だとジョブ型人事制度とか1on1の導入とかOKRとか。
ちょっと前だとハイブリッド型人事とか、その前だと成果主義人事だとか。
制度が流行する背景には、各企業が抱えている課題が時代の変化によるものだったり、解決したい方向性が似かよっているから、ということがあります。
けれども、たとえばジョブ型人事制度が流行っているからといって、中途採用を全く行わず、転職者も出ないような巨大インフラ企業でジョブ型人事制度をいきなり導入したら、社内の序列が崩れて組織力が低下してしまった、なんてこともあるかもしれません。
1on1をしっかり運用させようとして、管理職への教育をせずに、定期面談だけを義務化したら、説教部屋になってしまい、若手の離職が増えた、なんて話も聞きます。
あらゆる制度の変革は、メリットだけでなく、デメリットを伴います。
良薬は口に苦いことも多いのです。
だからこそ、それぞれの変革の選択肢について、流行だけにとらわれない判断基準を設けることが重要です。
その際には、特に「なぜ今この制度が流行しているのか」ということを、環境変化や歴史的変遷などを踏まえてしっかり判断する必要があります。
そうして考えてみたら、自社の場合は1on1を導入するよりも先に、まず管理職の選別をしっかり行った上で教育を施すことが大事だ、という判断になるかもしれません。
ジョブ型人事を導入する目的が新規事業創出であるなら、法人を別にたててそこに希望者を転籍させる前提で、新法人のみをジョブ型人事制度にすることが有効かもしれません。
変革ありき、ではなく、人事ポリシーに基づいた選択肢をしっかり議論することが重要なのです。
一人一人の給与額変化をちゃんと計算する
最後に、変化した人事制度が、一人一人の従業員にとってどんな影響を及ぼすのか、ということを計算することです。
そんなことは当然行っているだろう、と思うかもしれませんが、この部分をちゃんとしない人事コンサルタントは意外なほどに多いのです。
人事ポリシーを定め、選択肢を提示するところまではしっかりできるものの、たとえば1000人の従業員一人一人の給与がどうなるのか、ということについては「御社の人事部でちゃんと計算してくださいね」と投げてしまう場合が多々あります。
理由は簡単です。やったことがないし、興味がないから
設計に携わっていると、ダイナミクスとしての仕組みづくりの方が重要だと考えてしまうことが多くなってきます。
その際には、どうしても「必要な人材」と「不要な人材」の選別などを考えてしまうことにもなります。
そうなると、つい安易にこう考えてしまうのです。
「この人は100円の減給になるけれど、まあ誤差だし、いいだろう」
「AさんとBさんは同期で、制度変更前はほぼ同じ給与だけれど、Aさんの方が優秀だから、制度変更で1万円給与が増えるな。それはAさんが優秀だから当然だな」
しかし受け取る側からすると、たまったものではありません。
また、人間関係だって破綻する可能性もあります。
人事ポリシーと制度の選択肢は、時に厳しい判断を伴うこともあります。
それだからこそ、一人一人にどんな影響が出るのか、ということを具体化し、それを会社として、人事部として責任をもって遂行する覚悟までを確認しなくてはいけません。
そのためにも、設計時点で、一人一人の給与額変化を確認することが重要なのです。
良い人事コンサルタントの見極め方
では、これらのポイントについてどう確認すべきでしょう。
方法は簡単です。
単純に、「他社事例を見せてください」というだけで、これらは確認できます。
会社名を消してしまえば、よほどの大企業でない限り企業の特定はできません。もちろん、本社所在とか、具体的な商材名もすべて消したうえで、ここで示した3つのポイントを確認できる資料を求めればよいでしょう。
紙やファイルでの提供が難しいことも多いので、たとえばプロジェクターで投影してもらって説明してもらう程度でもよいでしょう。
自社と同じような課題を持っていた会社がベストです。
変化を踏まえてどんな人事ポリシーを策定したのか。
具体的な制度設計において示された選択肢にはどういうものがあったのか。
最終的な一人一人に給与影響確認は、どのような表計算ソフトでどのように確認し、最終化したのか。
それらを確認して、しっかりした対応をとっているコンサルタントを見つけることができれば、変化にあわせた人材の活躍とビジネスの成長を実現する助けになることでしょう。
セレクションアンドバリエーション株式会社
代表取締役 平康慶浩(ひらやすよしひろ)
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