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【2025年、人的資本開示の内容をより良くするために】
改めて、こちらの書籍の「序章」だけでも読み返して頂くと良いと思います。基本中の基本はここだけで全ておさえることができます。(ちなみに、私も3章の1から4までの執筆を担当。) この年始のタイミングで、今一度基本に立ち返ると良いかもですね。
昨年の驚き、そして少し残念だったことを2つ。
1つ目。
「リードコンサルタントが、むしろミスリードしていますよね!」と複数の人たちから言われた。(私に言われても、、、なんだが(笑)。)
私からその話題をふっているわけでもないのに(もちろん、時にはイタズラ心でそっちに持っていくこともありますが)、ベンダーサイドの人からも事業会社人事の人からも、著名な大学教授からも同様のコメントがあった。
千人以上にも増やして、特に初期段階で資格取得していた人たちと最近の人たちとで実力というか「質」が雲泥の差であるようだ。
ISO 30414の58のメトリックのうち一定割合を満たせばISOの認証取得できるって、そりゃそうだろうが、リードコンサルと呼ばれる人たちがやっていることはあえて例えるならば、「運転免許センターの近くに必ず存在する『予想屋』の『山あて』」のサービスと大して変わらないのではないか?あるいは大学受験の予備校講師。なんら、法やルールに反することをやっているわけではないが、「それは捨て問だよ。深みにハマると大変。もっと簡単な問題を確実に正解すれば受かる。」というリード。
それで何が悪い?と開き直る企業と、自分たちが目指す姿とそれは違う!と気づく企業。中長期的にはどちらの企業の評価が高まるだろうか。
リードコンサルの人たちも、そんなことばかりやっていたらいずれはその資格に対する社会的評価がさらに下がり、恥ずかしくて資格保有を隠すようなことになりやしないか。せっかく意味のある勉強をして、大切なことをインプットした証なのにそれは勿体無い。
2つ目。
(「投資家から評価される、、、」とよく言うけど)「そんなことまでは『投資家』も求めていないっぽい。その領域には『投資家』もあまり関心を持っていないようだ。」
だから、あんまりそこまで突き詰めて苦労してやらなくても良いのではないか?と何度か言われた。要は、「(スキルベースの)後継者計画」とか、「(スキルベースでの)人材ポートフォリオ分析」とか、そもそもの「従業員の保有スキルの可視化」といったような、いかにも重たそうなところに労力をかけたくない場合のエクスキューズとして「投資家もそんなに興味ない」というエヴィデンスを求めたいのだろう。
ただ、あなたが意見を聞いたその「投資家」の「質」やレベルは大丈夫だろうか?
このエピソードに関連して、私も具体的に次のような体験をした。
ある企業と私が所属する団体の共催で「本気の人的資本経営」を目指す企業の担当者やそれに関連する人たちだけを集めたクローズドなラウンドテーブルに何度か同席する機会があった。その中で一度だけ、私も「人的資本開示や人的資本経営に関連していかに『スキルベース』の考え方が重要か」についてのプレゼンを行う機会を頂いて、かなり突っ込んだ表現も用いて説明をした。
聴き手の中に「投資家寄り」のメンバーがいて、「いやぁ、面白い話だった!新鮮な視点だった」と感想を言われた。その感想は私にとっては特に嬉しくはなく、「なんだこの人、自分のことを『投資家』と思っているくせに今までその視点も持てていなかったのか」というのが率直に感じたところだった。
その人はさらにこう続けた。「私は伊藤先生にも近く、しょっちゅう顔を合わすから、今度会ったときにぜひこの話を伝えておく。きっと興味を持ちそうだ。」
これを受け私はこう感じた。
「ん?ということは、やっぱり伊藤先生も『スキルベース』の必要性など念頭なく伊藤レポートを書いていたのか!そりゃあ、レポートを読んだみんなが具体的な方法がわからずに迷うわけだわ。」
それでも、伝えてくれるならそれに越したことはないな、と期待して待っていたが、その彼が具体的な行動を取ることはなかった。後日、私もしつこく「伝えると言っていたが伝えたのか?」としつこく質したが、彼は無視、無反応を決め込んだ。
名前は忘れたが、たしか、「み」で始まる金融機関の関係者だったような気がする。
「人的資本開示」や「人的資本経営」に関して「投資家」の立ち位置で色々と意見するような人たちのレベル感は、非常に残念ではあるが我が国においてもこんなもんだろう。これが平均的な人物像。
まとめ
話を最初に戻すと、やるべきことは「批判的思考」をもって自分なりの考えや視点をもち、もっと言えば「美学」を持ち、独自の審美眼を鍛えること。
「人的資本経営」ということで、具体的には何をしたいのか。何を実現したいのか。そのためには何をすべきなのか。自分なりの「本質」を追求すること。
しかしながら「鉄則」や「大原則」というものは確実に存在するので、改めて再スタートを切るにあたっての「拠り所」として、本書籍の「序章」を一読いただきたい。