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人と組織の可能性を信じたくなる本
人事図書館アドベントカレンダー、23日目担当のカンです。ここまで22日分の記事、お楽しみいただいていますか。僕たち執筆陣も「今日はどんなネタが飛び出すんだろう?」とドキドキしながら読み進めています。
昨日のけんさんの記事では、キャリアにおける4つのワークのうち「学習ワーク」と「ギフトワーク」に関する行動が紹介されていました。けんさんのコミュニティへの貢献活動を知り、僕もまだできることがあるはず!と刺激を受けています。
さて、今日の題材は「人と組織の可能性」について。
以前から僕は個人や組織をポジティブに見ている自覚がありましたが、2024年に人事図書館とのお付き合いが始まり、この傾向がさらに強まったと感じます。
人事図書館と私
自己紹介
いま僕は、従業員 約2,000人のICT企業の人事部で、人材開発・組織開発・新卒採用を担っています。入社当初はシステムエンジニアとして開発プロジェクトに従事しており、ある年にグループウェアLotus/Notes を扱う案件をきっかけに、事業部内のナレッジ共有活動にも関わるようになりました。この頃から、技術そのものよりも働く個人やチーム・組織への興味・関心が高くなった気がします。
その後、全社の技術者Q&Aコミュニティ立ち上げプロジェクトを提案・運営し、人事部で階層別研修の企画業務を実施。10年ほどプロフィット部門とコーポレート部門を行き来して複数の職種を経験しました(プロジェクトマネジメント、営業・マーケティング、事業企画 etc.)。2021年からは二度目の人事部所属となりました。
人事図書館との馴れ初め
人事図書館との出逢いは2023年10月。館長よっさんのX上のつぶやきでした。当時、引用リツイートで「これは、とっても心躍る企画! 応援します」と興奮気味に書きつつ、「物理的な場所に意味があるのはもちろん、うまく設計すればオンラインコミュニティとしての体験価値も高まりそう」と偉そうに投稿していました。
2024年に入り、1月に始動したクラウドファンディングプロジェクトに参加。支援の急速な拡大を目の当たりにして、人事に関わる人たちからの期待の大きさを感じました。2月には現地見学会に参加し、取り組みを応援する人たちの熱量の高さに驚かされます。3月のドレスアップイベントでは、書籍データの登録や表紙・帯の補強など地味な作業を、未来の会員同士でワクワクしながら進め、4月の図書館オープン時にはすっかり自分事化して迎えた覚えがあります。
現住所や職場が横浜なので訪問頻度は月1程度ですが、メンバー同士のslackやSNS上での交流も増え、今では自分なりのペースで人事図書館ライフを楽しんでいます。今月初めの人事図書館ラーニングバーでは、メンバーの一人としてお話させてもらう機会もいただきました。「コミュニティ型人材成長」という考えに興味を持ってくださる方も多く、大変ありがたかったです。
人と組織の可能性を信じたくなる本
人事図書館には、採用・人材育成・人事制度・労務管理などの各種領域に関わる書籍が2,000冊以上も収蔵されています。しかも、ザ・人事本ではない周辺本も数多く置かれているのが僕にとって大きな魅力です。
本投稿では「人と組織の可能性を信じたくなる本」という観点で、2024年に出版された3冊の本をご紹介します。個人と組織、その隙間をつなぐコミュニティなどについて考えるヒントになれば幸いです。
『学びのコミュニティづくり』
実践共同体(communities of practice)は、1990年代にエティエンヌ・ウェンガー氏によって提唱されたもので、「あるテーマにかんする関心や問題、熱意などを共有し、その分野の知識や技能を、持続的な相互交流を通じて深めていく人々の集団」と定義されています。
『学びのコミュニティづくり』の著者 松本雄一さんは、実践共同体をざっくり「学びのためのコミュニティ」だと説明した上で、3つの輪モデルを提唱しておられます。 A「組織で学べること」、B「個人が学びたいこと」に重なりがない(あるいは少ない)場合、実践共同体を構築することで、C「実践共同体で学べること」の輪を重ねて徐々に近づけることができる、というのです。
このモデルは、個人に学ぼうという意欲があることが大前提だと感じます。さらには、組織として学ぶべきこと(学ばせたいこと)とのANDを、実践共同体による自律的な協調学習促進によって解決しよう、という点が特徴的です。
実践共同体のよいところは、学びの実践によって両者(引用者注:個人と組織)の関心を両者が深く理解できることと、両者の歩み寄りをどのように実現するかについて、実践共同体の参加者みんなで知恵を集めることができるところだと考えます。
第1章 「実践共同体とは何か」より
この記述からは、人や組織への絶対的な信頼感を感じます。
※実践共同体については16日のうえむらさん記事でも詳しく取り上げられています。
『企業変革のジレンマ』
『他者と働く』の著書 宇田川元一さんが2024年6月に上梓された本書は、サブタイトルの「構造的無能化」という言葉が衝撃的でした。構造的無能化のメカニズムである3つのキーワード「断片化」「不全化」「表層化」も、多くの企業人にとって現実をグサッと突きつけられて痛みを感じたに違いありません。
「企業変革」というと、経営危機に陥った企業を立て直し、V字回復を遂げる様子(いわゆる緊急手術)をイメージしがちですが、本書が対象としているのは、慢性疾患の寛解です。とはいえ、それは生やさしいものではなく、「組織に集う一人ひとりが、考え、実行する力を回復」し、「両立し得ない2つ以上の選択肢に直面して動けなくなる」ジレンマを乗り越えていく必要があります。
第2章には「企業変革に必要な4つのプロセス」が書かれていますが、僕にとって響いたのはプロセスの背後にある「対話」や「ケア」の重要性でした。人や組織に、強く激しく力をかけて動かすのではなく、もともと持っているはずの肯定的意図や能力に働きかけることで変革しようというアプローチです。
企業変革の実践では、ポイントとなる4つのプロセスを推進できるように、変革支援機能の人々だけでなく、経営層や経営企画・人事などの既存のコーポレート部門とともに支援していくことが望ましい。
(中略)
現代企業の複雑な分業体制に足りないのは、当事者に伴走する支援者の存在である。変革支援機能の人々は、その意味でケアをする存在であり、変革プロセスの頓挫は、変革に必要な手がかりを見つけるための貴重な機会として認識する必要がある。
第8章「企業変革を推進し、支援する」
章のまとめ より
人事パーソンとして、人や組織の「伴走者」として生きる覚悟を問われているように感じます。
『大きなシステムと小さなファンタジー』
本書は、2024年12月に発刊されたばかりの影山知明さんの新著です。
影山さんは、国分寺市でクルミドコーヒーや胡桃堂喫茶店という素敵なカフェを運営し、地域通貨ぶんじ、ぶんじ寮、クルミド出版などの取り組みを実践するなかで「一つ一つのいのちが大切にされる社会」を目指す提言をされています。味わい深いロングセラー『 ゆっくり、いそげ』出版後の実践や苦悩を経て、さらなる深みが足されたように感じます。
先日の人事図書館イベントでもテーマにあがったように、企業人事パーソンとしては「コトに向かうことが大事」「人(従業員、経営者)だけを見ていてはいけない」という軸は忘れずにいたいです。一方、「目の前の一人をしっかり見るところから始めたい」「結果的に、それが企業や組織を元気にし、力強くするのだ」とも感じるのです。
今はどちらかといえば大きなシステム側にいる僕ですが、組織の中では小さなファンタジーを振りまきまくっている自覚があります。「あいつ、またコミュニティとか言ってるよ…」と呆れられているような気もします。ただ、このアプローチこそが自社の組織や同僚たちの強みを活かせる道だと信じており、本書を読みながら、今まで以上に対話を進めながらもさらにこだわり続けようという想いが強くなってきました。第三部「大きなシステムをひっくり返す」からの一節を抜書きして、本題を終わりたいと思います。
組織もまちも、そうした一つ一つの存在のかけ合わせとして成立することになる。だから、目的も理念もビジョンもパーパスも常に変化し続ける。かと言ってバラバラに動くしかないわけでもない。互いに関わり、重なりをつくり、それを更新し続けていく中から、「私たち」としての方向性は自然と見出される。それは組織となる。どんなに大きな組織も、それはまちであっても社会であっても、そうしたブリコラージュ的な過程を端折ることはできない。
第三部「大きなシステムをひっくり返す」
第十章「もう一つの道」より
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以上、「人と組織の可能性を信じたくなる本」として3冊をご紹介しました。
読みどころはたくさんあるものの、今回はそれぞれ1箇所ずつだけ引用しています。ご興味が湧けば、人事図書館や書店にて手に取ってみてください。
おわりに
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
個人的な話ですが、今日12月23日は亡き父の命日でもあります。先日、二十五回忌法要を行いまして、組織とは少し違うものの、横ではなく縦の(しかも時間を超えた)深いつながりやご縁を感じる体験でした。大切にしていきたいです。
さて、人事図書館アドベントカレンダーもいよいよラストスパート。
明日のクリスマスイブは、いくみんさんが担当されます。お楽しみに!