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好きなものが流行らない! FFTA編

自分が好きなものが「世間的には不人気」で、悔しいというか悲しいというか、「もにょる」ことはありませんか?

別に自分が好きなものを他人が好きでも嫌いでも、どっちでもいいのですが、人気があり、流行るものの方が「さらなる展開」がありますから、まったく気にしないというわけにもいきません。

好きなアイドルグループは世間で大人気でも「自分が好きなのは不人気メンバー」とか、期間限定のアイスが最高なのに再販されない! とか、思い当たることがない人はいないかなと思います。それとも「全然ないよ!」という生粋のマジョリティがこの世には存在するのでしょうか?

そんな「好きなものが流行らない」というテーマで、ぼくが一番に思いつくのは『ファイナルファンタジータクティクス アドバンス』です。

いや、うそ。

ほんとは中学生のときに好きだった女の子のひとりなんですが、「ぼくが好きだった子は不人気」って失礼すぎる話ですし、好きな女の子が流行ったときの「さらなる展開」ってなんだ!? となるので、その話はナシです。ちなみに性格が悪くて不人気なのではありません。「じゃあなんだよ」ってなるのでこの話はやっぱナシ! なのです。

ファイナルファンタジータクティクス アドバンス

気を取り直して(?)『ファイナルファンタジータクティクス アドバンス』です。長い……以下FFTAとします。

FFTAはゲームボーイアドバンス(GBA)で2003年2月にスクウェアから発売されたシミュレーションRPG(SRPG)。なんか長いのばっかりですね! スクウェア・エニックスからの発売でなくて本当によかった(合併は同年4月)。

で、そのFFTAは1997年6月に発売された『ファイナルファンタジータクティクス』(以下FFT)の続編ではないGBA版新規タイトルです。そもそもこのFFTが、クエストから1995年10月に発売された『タクティクスオウガ』の「ファイナルファンタジー版」とも言える作品で、3作とも作者(ディレクターまたはプロデューサー)が同じ松野泰巳氏です。

そもそも『タクティクスオウガ』が猛烈な高評価を得た超人気作品。その「深刻な物語」のテイストを、『FFT』は受け継いで人気を博しましたが『FFTA』はそうではありませんでした。

当時、「ゲームボーイ(アドバンス)は子ども向け」という認識があり、人気シリーズのゲームボーイ版は子ども向けアレンジが施されるのが定番となっていました。実際にはポケモンブームもおじさんが支えていたと言われ、必ずしも子ども向けではなかったのですが、「子どもなのに馬鹿にできない」的な評価もあったと思います。あるいは本当はおじさんが大人ではなかったのかもしれませんが。

とにかくその子ども向けの雰囲気になったことが根本的な不評の原因にあって、FFTAは(それなりに売れはしたようですが)世間的な評価はFFTに遠く及びませんでした。

また、表面的には「ジャッジメントシステムがイヤ」という意見も多大でした。これはステージごとにランダムで禁止事項が設定され、それを破ると警告を受けてイエローカードを出されるというもの(2枚で退場)。イエローカードという概念、そしてステージ上に常駐するジャッジが警告時にホイッスルを鳴らすことは、明らかに開発期間中の2002年に開催された『日韓合同ワールドカップ』(サッカー)で日本が熱狂した影響を受けており、そのスポーツライクな演出をインドア派のゲーマーが嫌ったという側面もあります。

でも。ゲームとしては、遊びとしては、最高に楽しめたのです。

ぼくも時事ネタに寄せるのはどうかと思います。でも、背景を含めてシステムが構築されており、ただの思い付き・とってつけの仕組みにはなっていません。難易度を低下させただけではバトルが単調になりがちですが、ランダム要素を入れることで飽きさせず、しかも、1回なら敢えて違反することもありなので、禁止事項によって難易度が上がるようで抜け道を残すやり方になっています。このバランス感覚は見事です。

むしろ内容を伝えるメディアの側が表面的で安直な紹介をしたことが不評を買わせる一因になったのではないかと思います。システムのことはおろか、ストーリーについても良さの本質を語れず、ただ登場人物のキャラ絵を並べるばかり。ゲームが好きなだけのただのバイトではなく、もっと中身がわかる人に「メーカーのプレスリリースそのまんま」ではない記事を書いてほしいなと思います。もちろん報道規制が厳しすぎるのも問題ですが。

『タクティクスオウガ』や『FFT』を遊んで「こういうゲームを作りたい」と言う人はたくさんいますが、ストーリー面に偏ったこだわりが目立ちます。深刻な物語、予想を裏切る展開、今までになかった表現。それらに価値があり、魅力的なのは事実ですが、「いつまでも」ではありません。各作品の登場から20年以上が過ぎた今、まだそこにいるのでしょうか。

『FFTA』も来年で発売20周年となりますが、違ったオウガやFFTとは違った側面で魅力のある作品です。この作品の魅力に再び触れる機会が来るといいのですが。

なお2007年10月に、ニンテンドーDSで『ファイナルファンタジータクティクス A2 封穴のグリモア』が発売されています。こちらは完成度が高まった良作なのですが、動作が重くて遊ぶのが苦痛です。現行ゲーム機やPC向けに移植してくれれば快適に遊べるはずなので、移植を期待したいところですが……どうですかね。

ところで任天堂は、ゲームボーイからの流れで「DSも子ども向け」と見なされることを嫌い、子ども向けのつもりはないと公言。デザイン的にも子どもに寄せない方向へ進みました。3DSを最後に携帯ゲーム機自体が任天堂から(もソニーからも)発売されなくなり、据え置き機に統合されたこともあり、今後「人気作の子ども向けアレンジ」から優れた発明が生まれる機会はかなり減少しました。あまり注目されませんが、この点は非常に残念です。


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