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創作に役立つ用語辞典「ランチェスターの法則」
1914年、イギリスの自動車・航空工学のエンジニアであったフレデリック・ランチェスターは、戦争で消耗する戦力(戦闘員)の度合いについての法則を自著に記した。
ランチェスターが記した法則は、一騎討ちを前提とした第一法則と、集団同士の衝突を前提とした第二法則。ただ「ランチェスターの法則」と言った場合は、このうち第二法則のことを指すことが多い。
ランチェスターの第二法則を用いると、軍勢Aと軍勢Bが衝突したときに、勝者となる軍勢がどれだけの兵を消耗し、どれだけの兵が残存するかの見込みを導き出せる。
第二法則の式は、兵数が多い軍勢をAとした場合に"√(Aの2乗-Bの2乗)=Aの生存者数"となる。
(例1)軍勢Aが50人、軍勢Bが30人の場合なら"√(2500-900)=40"となり、軍勢Aの生存者数は40人。
(例2) 軍勢Aが100人、軍勢Bが50人の場合なら、"√(10000-2500)=86.6"となり、軍勢Aの生存者数は86人程度となる。
<急に言われてもわからん!という人のための注釈>
2乗とは同じ数字同士を掛け合うこと。10×10=100。これを10の2乗と言う。16の2乗は256。100の2乗は10000。
記号"√(ルート)"は平方根を求めることを示す記号。平方根とは、ある数字が何の2乗から成るかを示す。25=5×5なので25の平方根は5、1600=40×40なので1600の平方根は40となる。
もちろん、実際の戦争においては状況の違いによって戦闘の結果は変化する。兵士には能力が高いもの低いものもいて、運が良いことも悪いこともあることを丸めて折り込むと、概ねこの式に当てはまるという。
創作の中では、例えば「かつてあったとされる戦争の帰還兵」としてリアリティのある数字を示すことに使える。兵数2000の軍勢Aと兵数500の軍勢Bが衝突した結果として「軍勢Aの帰還兵は1500であった」と示してしまうと、「圧倒的兵力を相手に、軍勢Bは善戦した」ことになる。式が導き出さす軍勢Aの帰還兵は1936.5人だからだ。
もっとも、作品の受け手がランチェスターの法則を知っているとは限らないし、その場ですぐに暗算できるわけでもない。なので、作中で軍勢Aの帰還兵が1500と示しても、暗に「軍勢Bは善戦した」というメッセージを伝えられるとは思わない方がいい。あくまで、受け手のなかには軍勢Aの不調の理由や、軍勢Bの好調の秘密が気になる人が出てくるというだけだ。
だからといって、式に準じて「1900人を超える帰還兵は~」と示せばそれで良いというわけでもない。偏った見方をすれば「軍勢Bは500人もいて、たった100人しか倒せないの?」というイメージがわく人もいるだろう。誰もが俯瞰してものを考えられるわけではない。
創作においてこの法則は、式から導き出した数字を誤解なく伝えることでリアリティを増すだけでなく、敢えてギャップのある数字を示すことで"わかる人はわかる"ミステリーのヒントとすることもできる。
単純な式なので電卓があれば手軽に活用できるが、両軍の兵数を指定すれば残兵数を計算できるページを作成したので、機会があれば活用してみてほしい。
なおタイトル画像は、日本ファルコムの名作『ロードモナーク』(1991年)のリメイク版(1997年)から。4ヶ国での戦いを描くこのゲームは、キャラクター同士の戦いをランチェスターの第二法則で処理していると言われている。1997年発売のWindows95版はフリーで公開されており、今でもWindows10でプレイできる。
※ソースコードを公開しました。