終の棲家というけれど(前編)
まわりくど~い話になると恐縮なので、今回はオチを先に言ってしまいますよ。今年の2月にスーパー出遅れ状態で始めたネトゲ『ドラゴンクエストX』(DQX)で住宅購入に失敗しまして。「この失敗を活かして次につなぎたい!」と思っていたら、リアルでおうちを購入していました。
ぜんぜんそのつもりはなかったのに購入してしまったのでいわゆる衝動買いであり、そしてネトゲ脳ここに極まれりです。
ま、おうちといっても中古マンション、いえ中古というのも語弊があるほどの"太古"団地の一室に過ぎないんですけどね。もちろん、いい歳した団塊ジュニア世代が今頃おうちを買うのはかなり遅い方なので、そのこと自体はフーンという話でしかありません。個人的な話はどうでもいいんです。
このnoteでは、これまでも「メタバース経済」の話を通じてネットゲームの経験をリアルに活かす記事を書いてきました。今回はその「住宅編」と思っていただければいいと思います。
物価高騰は人生観の再構築を必要にさせる
今、円安というより「日本安」、そして世界情勢の不安定さによる穀物高・資源高もあって、ぐんぐん物価があがっていますよね。こうなると「コスト増は悪」という風潮が蔓延していた日本社会もさすがに物価上昇の波には抗えません。ものの値段が上がり、追って給料も上がり、上げられない企業は滅び……ということが起きてきます。
そして過去に得たお金、つまり貯金は相対的に価値が下落します。
例えば"現在の100万円"は10~20年後になると50万円ぶんの価値もない、ということになりうる事態が予測できます。
物価が高騰すると、貯金をするより使った方が良くなる。そして貯金が崩されることで経済が回るようになる……というのはバブル崩壊後に低迷を続けた日本でずっと言われ、求められてきたことですが、ついにお尻に火がつくかたちでその時がやってきたわけです。
でも、経済が回る、景気がよくなるかもしれない、と喜ぶのはどうかと思います。新しいもの、良いものがたくさんあって「お金を使いたい」なら社会に良好な結果をもたらしますが、そうでなければ社会全体としては害が及びます。
特に日本社会は(是非はともかく)あまり物価が変わらないことで"将来を見通せる"経済政策をとってきた側面があります。よく、年金や保険制度を礎にして、日本は若い世代が高齢者を支えて成り立っていると説明されることがありますが、これはその瞬間だけを切り取った片面的かつ視野が広すぎるものの見方です。
焦点を狭めて"自分自身"にあわせると、違ったものの見方になります。
働けるのは20~65歳あたりの約45年間、人生全体の長さは90年間程度ですから、もしまったく物価が変動しなければ、日本人は皆、働ける時代に日常生活に必要な額のおよそ2倍の金額を稼げばいい計算になります。
もちろん自分自身が子どものころは親に育ててもらっているので、親に対して「借り」はある状態です。でもこの借金は自分の子どもに対して返すことで"チャラ"になる親子孫間の相互扶助にあたるので、実は、夫婦2人で子ども2人を育てるだけなら、がんばって「より稼ぐ」必要はありません。
細かいことを無視すれば、「自分は常に、もうひとりの自分を養っている」と考えれば日本人の人生は(概ね)それで済んだのです。この考え方は、結婚や出産のハードルを大きく引き下げられます。
ただし、物価の上昇幅が高まるとそうはいかなくなります。若いうちに稼いだお金は、自分が歳をとったときに価値が半分とか1/3とか、あるいはもっと低くなります。だからといって、皆が将来を見越して若いうちに今の2倍、3倍、4倍稼げというのは無理がありすぎます。
こうなると、保険・年金制度の必要性は高まります。でも、日本政府はやりたくない。だから必死で国民に投資を求めているわけですね、なんにせよ貯金は無駄ですから。
とはいえ、この場合の「投資」とは実際には投機・ギャンブルに近いので資産を多く持っている人が劇的に有利であり、貧しい人による"必死の投資"は「カモ」にされるために呼びこまれているといってよいでしょう。ギャンブルには必ず勝つ方法がありますが、それができるのは「お金持ち」だけです。
ただ……日本最大のお金持ちは「日本」そのものですが、国民から預かった年金を使い込んで"溶かした"ことは言うまでもありません。
なおかつ、貯金を持っているだけではジリ貧になるのも否定しがたい事実として残ります。
だから、今あるお金は「できるだけ長もちするもの」を購入するのがベターであり、そして可能なら売却できるとベストになります。もちろん売るときはなんでも価値は下がりますが、将来の物価にあわせて売れるので物価上昇リスクを軽減する効果があります。
現在の日本が置かれているこのような状況は、実はネットゲームでは当たり前のことだったりします。運営によって物価はほどほどに抑えられつつ上昇傾向は続き、そのため長期に渡る貯金をしていても無駄で、お金を別のかたちに変えることを意識せざるをえない――という具合い。
ただしネットゲームは外部業者問題を抱えているため、「よいもの」を"売却"できない傾向にあります。そのぶん、ぼくらは「長もちする、よいもの」に対するアンテナが高くなる傾向にあり、失敗も繰り返して自己投資の鍛錬を積んだ状態になっています。
ちなみにぼくがずっとプレイしてきた『FINAL FANTASY XI』(FF11)では、「武器」を中心にした高級装備群がその対象となっています。そして高級武器を作るために「特定アイテムが○万個必要」ということがよくあるのですが、武器を作るために揃えていたその特定アイテムを、武器にする直前に売却することで思わず資産が増加するケースもあります。
「長もちする、売れるもの」とは
そうは言ってもリアルでは、周囲を見渡したところで「長もちするもの」、まして「売れるもの」なんてそうそうありません。
ぼくが周囲を見渡してみて視界に映ったのは「本」だけでした。マイナー趣味なので、実はけっこう高く売れる希少本を持っているんです。
そう、これが本当の資"本"家……なんていうといつもの調子で記事が終わりそうですが、もうちょっとだけ続くんじゃよです。
まあ本を買ったり売ったりで暮らせたら最高の人生なのですが、さすがに夢見すぎだなと絶望して気が遠~くなったところ、逆に視野が開けたわけですよ「家」があったな、と。
もちろん「必要もないのに家を買って投資をしよう」はダメですよ。これから少子高齢化で住処のニーズは減りますから。しかも最大ボリューム世代の団塊世代が亡くなり始めているので、物件は市場に溢れます。
ただし、人口が都市部に集中する傾向は高まっていきますから、都市部の物件は高騰します。というより、もう高騰しているのでどのみち手遅れです。東京はすでに論外で、見通しが明るい一部の地方都市ならチャンスがあるかもしれませんが、それはまさに「ギャンブル」です。
だから、何度も言いますがぼくら庶民が投資で家を買うのはダメです。でも、将来の物価上昇&路頭に迷うリスクを軽減するためなら活用できるわけです。
ちょうどぼくは、現在住んでいるボロアパートがあまりに手狭になってきたため、捨てにくいもの(まさに本など)や季節ものなどを押し込む倉庫がほしいと思っていました。世間に向けた商品ではないので一般的に目にする機会は少ないのですが、「投資用物件」として中古ワンルームマンションが300万円くらい(東京郊外)から売られていることは知っていたので、それはどうかと見ていたところ……それよりもうちょっと高い程度のお値段で普通に住めそうな物件がいくつもあることを知ってしまったのです。
(つづく)