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断片集

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#ジャズ

「ごめん、幸男君。行かなきゃ」布団から抜け出して景子は言った。

「ごめん、幸男君。行かなきゃ」  布団から抜け出して景子は言った。畳に落ちていた白いスリップを拾って身にまとうと、髪を後ろで束ねた。汗はすっかり引いている。景子は、ちゃぶ台の上にポーチを取り出し、ラジオに鏡を立てかけた。皮脂でテカった肌、汗で滲んだマスカラ、落ちた口紅。華奢な身体を蛍光灯の下に晒し、慣れた手つきで化粧を直し始めた。  ドンチン、ドンチン、ドドン、ドドン。  窓の外から、祭囃子のような音色が遠くに聞こえる。近頃、陽が落ちるとどこかから太鼓と尺八の音がかすかに届く