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【医師論文解説】最新研究が示す「命を縮める食習慣」の正体!? 40万人の衝撃データが明かす正しい脂肪の選び方!?【Abst】


背景

近年、食事由来の脂肪が人間の健康に及ぼす影響について、大きな研究関心が寄せられています。

特に、脂肪の供給源となる食品によって健康への影響が異なることが示唆されていますが、具体的にどの食品由来の脂肪が健康にどのような影響を与えるのかについては、十分なデータが得られていませんでした。

方法

研究デザイン

  • 大規模前向きコホート研究

  • 実施期間:1995年〜2019年

  • 実施場所:アメリカ合衆国

  • 研究名:NIH-AARP Diet and Health Study

対象者

  • 総数:407,531人(男性231,881人[56.9%])

  • 平均年齢:61.2歳(標準偏差5.4年)

データ収集

  • ベースライン時に検証済みの食事頻度質問票を使用

  • 特定の食品からの脂肪摂取量を評価

  • 追跡期間:8,107,711人年

解析方法

  • Cox比例ハザード回帰モデルを使用

  • ハザード比(HR)と24年調整絶対リスク差(ARD)を算出

  • 多変量調整(関連する食品供給源による調整を含む)

結果

死亡例数

  • 総死亡:185,111例

  • 心血管疾患による死亡:58,526例

植物性脂肪の影響

  1. 総植物性脂肪(最高摂取群vs最低摂取群)

    • 総死亡リスク:9%減少(HR: 0.91, ARD: -1.10%)

    • 心血管疾患死亡リスク:14%減少(HR: 0.86, ARD: -0.73%)

  2. 穀物由来の脂肪

    • 総死亡リスク:8%減少(HR: 0.92, ARD: -0.98%)

    • 心血管疾患死亡リスク:14%減少(HR: 0.86, ARD: -0.71%)

  3. 植物油由来の脂肪

    • 総死亡リスク:12%減少(HR: 0.88, ARD: -1.40%)

    • 心血管疾患死亡リスク:15%減少(HR: 0.85, ARD: -0.71%)

動物性脂肪の影響

  1. 総動物性脂肪

    • 総死亡リスク:16%増加(HR: 1.16, ARD: 0.78%)

    • 心血管疾患死亡リスク:14%増加(HR: 1.14, ARD: 0.32%)

  2. 乳製品由来の脂肪

    • 総死亡リスク:9%増加(HR: 1.09, ARD: 0.86%)

    • 心血管疾患死亡リスク:7%増加(HR: 1.07, ARD: 0.24%)

  3. 卵由来の脂肪

    • 総死亡リスク:13%増加(HR: 1.13, ARD: 1.40%)

    • 心血管疾患死亡リスク:16%増加(HR: 1.16, ARD: 0.82%)

脂肪置換効果

動物性脂肪5%のエネルギーを植物性脂肪に置き換えた場合:

  • 総死亡リスク:4%〜24%減少

  • 心血管疾患死亡リスク:5%〜30%減少

考察

本研究は、脂肪の供給源による健康影響の違いを明確に示しました。特に注目すべき点は:

  1. 植物性脂肪、特に穀物や植物油由来の脂肪が死亡リスクを低減

  2. 動物性脂肪の過剰摂取が死亡リスクを上昇

  3. 脂肪の質的な置換による死亡リスク低減の可能性

結論

植物性脂肪、特に穀物や植物油由来の脂肪の摂取増加は、総死亡リスクと心血管疾患死亡リスクの低下と関連していました。一方、乳製品や卵を含む動物性脂肪の高摂取は、両死亡リスクの上昇と関連していました。

文献:

Zhao B, Gan L, Graubard BI, Männistö S, Fang F, Weinstein SJ, Liao LM, Sinha R, Chen X, Albanes D, Huang J. Plant and Animal Fat Intake and Overall and Cardiovascular Disease Mortality. JAMA Intern Med. 2024 Oct 1;184(10):1234-1245. doi: 10.1001/jamainternmed.2024.3799. PMID: 39133482; PMCID: PMC11320333.

この記事は後日、Med J SalonというYouTubeとVRCのイベントで取り上げられ、修正されます。

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用語解説

コホート研究:

特定の集団を長期間追跡し、要因と結果の関係を調査する研究手法

ハザード比(HR):

対照群と比較した際の事象発生の相対的リスク

調整絶対リスク差(ARD):

交絡因子を調整した後の絶対的なリスクの違い

食事頻度質問票:

過去の一定期間の食事内容を系統的に評価する調査票

所感

本研究は、40万人以上という極めて大規模なコホートで24年という長期追跡を実施した質の高い研究です。特筆すべきは、単に脂肪の総量だけでなく、その供給源に着目した詳細な解析を行っている点です。

結果の信頼性を高めているのは:

  1. 大規模なサンプルサイズ

  2. 長期の追跡期間

  3. 詳細な食事評価

  4. 適切な統計学的手法の使用

ただし、以下の点には注意が必要です:

  • 観察研究であるため、因果関係の直接的な証明はできない

  • 食事内容の評価がベースライン時のみである

  • 米国の高齢者中心のデータであり、他の人口への一般化には留意が必要

臨床現場では、これらの知見を踏まえつつ、個々の患者の状況に応じた栄養指導を行うことが重要でしょう。特に、植物性脂肪への段階的な置換を推奨する際の科学的根拠として、本研究は重要な示唆を与えています。


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