これが新時代の自己啓発書! レビュー『20代で得た知見』
話題の本なので手に取ってみました。
本書をひとことでいうと、エッセイという体裁をした、新しい時代の自己啓発書。
内容は、著者がさまざまな人にインタビューを行い、「忘れがたく心を動かされた断片」に自分の考えを織り交ぜたエッセイ。
たとえば、以下のようなことばが飛び交っています。
「幸せのために不幸になる必要はない」、「幸せって大きく分けて2種類あると思う。1つは日常に帰ってくるための非日常の幸せ。もう一つは、非日常に行くための日常の幸せ」といった幸せに関して。
そして、「お金がないことはなにもできないことの理由にはならない」や、「一万人に千円払ってもいいと思わせるものをつくる」といったお金に関する知見も盛りだくさん。
これらは、一般の自己啓発書と呼ばれる本にもでてくるようなことばではないでしょうか。
ただ、従来の自己啓発書と比べて、「あなたにもできる!」とおしつけがましくうたってはおらず、「わたしはこう思うけど、あなたはどう思う?」と読者に考えを促しており、今の時代にあっていると思いました。
そして、エッセイという体裁もあって気楽に読め、よりいっそう、読者に寄り添っていると感じます。
本書のメインターゲットは、タイトルからして20代。
20代は、青春時代と同じぐらい悩みのおおい時期。
そして、職業選択をして社会人として働きだし、結婚や出産といった人生の一大イベントが盛りだくさんです。
こうしてみると、不確実な未来にもかかわらず、20代のうちに下さなければならない決断は、とても多いもの。
そして、自分のやりたいことは何なのか、進むべき道はこれでいいのかを思い悩む日々でもあります。
そんな苦悩する20代にとってこの本は、人生の予習本として使えます。
ふだん考えてはいるけれども、見過ごしがちな「言葉にできないもの」を、筆者がうまく言語化。
長いものから短いものまで、一見矛盾しているようでも、その中にやハッとさせられる発見があり、読んでいて飽きることがありません。
構成としては、大きく3章にわかれ、全部で183の知見をふくんでいます。
「20代のうちにこれをやっておいたほうがいい!」といった教えを説いているわけではなく、反対に、分からないことを分からないままにしておくという曖昧さが、人生を豊かにしてくれる、と諭してくれます。
そして、読みすすめるなかで自分ならどうだろう?と考えるきっかけになります。
20代でなくても、「二十代の人生は、忘れがたい断片にいくつ出会い、心を動かされたかで決まる」のことばをもとに、自分が若いころ、何に心を動かされてきたかを自己分析してみるのも、今後の生き方を決めるうえで役にたつはず。
「自分の心を動かしたものだけが、真のインプットである。誰かの心を動かしたものだけが、真のアウトプットである。」が、個人的に一番響いた言葉でした。