季節の移りかわりに思いをはせる『根っこのこどもたち 目をさます』
表紙が黄色い本をあつめている。
そしてこのたび、あらたに一冊の本がコレクションに加わった。
それは『根っこのこどもたち 目をさます』という絵本で、世界中の家族に愛されつづけられている本だ。
今年はすでに11月だというのに日中の気温が25度と、室内でTシャツで快適にすごせるほどの暖冬。
そんななかでも、季節のめぐりかわりを感じるのにピッタリなのが本書といえる。
1906年に初版が発行されているので、もはやクラシックと呼べるだろう。
発売以来、数世代の若い読者を魅了し続けており、今日はこの本を紹介させてほしい。
本作のテーマはずばり「自然と季節の変化」。
春に生き返る一群の「根っこのこどもたち」を取りあげている。
彼らは春から秋へと季節がうつり変わるなか、春にはお母さんに起こされて、庭の植物や花々のお世話をし、冬の季節のために地下の家に戻る準備をしている。
この本は自然の循環パターンをあらわし、ぼくたちの身のまわりの世界を慈しみ、はぐくむ重要性を探求しているわけだ。
また、この本の美しさを別次元に押し上げているのが、著者であるシビル・フォン・オルファースの魅力的な挿絵。
彼女はドイツの美術教師であり、修道女でもあったイラストレーターだ。
彼女の繊細で水彩のようなイラストは、自然界の魅力と根っこのこどもたちの風変わりさをとらえている。
各ページはもはや芸術といえる仕上がりで、ページをめくるたびに視覚的な喜び得ることができた。
子供向けの絵本だというのに!
キャラクターや自然のディテール描写に、作者の才能を感じさせられる。
そして、物語に使われている言葉はシンプルで、読み聞かせに最適な本といえるだろう。
さらに季節、自然、時間の経過といった物語のテーマは、子供たちとの貴重な対話の機会をあたえてくれるってことは覚えておいてほしいところだ。
本作は子供の想像力をかき立て、自然にたいする感謝の意をはぐくむ力を持つ永遠の名作といえる。
あらたな一歩を踏み出す春にぴったりの内容であり、子供たちに自然のすばらしさを紹介する作品として残りつづけるだろう。