読者の心をつかむルポルタージュの書き方『ルポルタージュを書く』
雑誌「スペクテイター〈33号〉 クリエイティブ文章術」の内容が面白かったので、その中で紹介されていた本を紹介。
古い本だが、知的興奮を味わえた!
鎌田慧の『ルポルタージュを書く』は、ルポルタージュを書くための手法や考え方について、非常に実践的なアドバイスを提供。
本書は、ルポルタージュやノンフィクションに興味がある初心者の人や、すでにノンフィクションを書いている人はもちろん、取材のポイントや、実際に取材を行う際のコツなどが詳しく説明されているので、リサーチ業務を担当するビジネスパーソンにむけてもお勧めだ。
鎌田氏はルポルタージュの本質について、次のように語っている。
「ルポルタージュとは、リアルな事実を調べ、現場で見たことを文章にすることである。その目的は、読者にリアルな世界を伝えることである」と。
この定義は、ルポルタージュの本質を的確に捉えており、その本質を実際に作品に落とし込むための具体的手法を解説している。
たとえば、ルポルタージュのテーマを見つける方法、取材の進め方、取材中のノートの取り方、情報の整理方法、文章の構成方法、取材先や取材対象者とのコミュニケーションの仕方や、ルポルタージュ作品の出版までのプロセスなどなど。
特に印象的だったのは、ルポルタージュに必要な心構えについての章だ。
「なぜ」や「何」を書くかは、「どう」書くかよりも大切であると語る著者は、技術よりも意欲が必要と断言。
自分が本当に描きたいものを書き、書きたいことが相手に伝わるだけでいいと言う。
そして、ルポルタージュには、自分自身の世界観やバイアスを排除し、客観的に事実を見ることが重要であると説いている。
また、ルポルタージュには、取材対象者や取材先の人々への敬意や感謝の気持ちを持つことが大切であるとも強調。
これらの心構えは、ルポルタージュを書く上で、必ずしも技術的なスキルだけではなく、人間性も重要であることを示しているといえる。
取材にハウツーは存在せず、すべてケースバイケースとなり、足りなかったら繰り返し取材すべし、という指摘が印象に残った。
また、以下の三冊が、ルポルタージュの恰好の教材として紹介されており、なかでも鎌田氏が絶賛していた『予告された殺人の記録』を注文した。
・ガルシア・マルケス『予告された殺人の記録』
・ジョージ・オーウェル『象を撃つ』
・ジョン・ガンサー『ガンサーの内幕』
著者の鎌田氏は反骨のルポ・ライターとして知られている。
彼の創作の舞台裏が明かされている本書では、「事実、疑問、関心が広がってくるのがルポの面白さ」や、「ルポルタージュは現代をテコにしながら、未来をこじ開けるものでなければならない」という言葉にはっとさせられた。
総じて、鎌田慧の『ルポルタージュを書く』は、ルポルタージュを書くための入門書として、非常に優れたものである。
ルポルタージュの基礎から、実践的な手法まで、幅広い内容を網羅している。
また、鎌田氏が伝えたいルポルタージュに対する真摯な姿勢や、取材対象者や取材先に対する敬意や感謝の気持ちについても、非常に示唆に富んでいる。
ルポルタージュやノンフィクションを書くための基本的な手法や考え方を身につけたいと思っている人はもちろん、既にモノを書いている人にとっても、必読の書であると言える。