『人類の起源、宗教の誕生』を読む
『人類の起源、宗教の誕生: ホモ・サピエンスの「信じる心」が生まれたとき 』を読んだ。
本書の構成は、ゴリラ専門家・京大総長の山極氏と、同志社大学神学部教授の小原氏の対談に加え、山極氏と小原氏それぞれの文章が一遍ずつ加えられている。
内容は多岐に渡り、信仰心の発生から文明の発達、そして戦争やAIがもたらす問題まで、様々な視点から人間と信仰について触れられる。
宗教の起源
宗教の誕生について興味深い視点は、人間と動物の「不在者」に対する認識の違いについてである。
ゴリラやチンパンジーは一旦群れから離れ、1週間か2週間たってしまうと、二度と同じ集団には戻ることはできない。
ある個体が集団を離れると、すぐに別の個体がその位置を埋めてしまい、集団から離れた個体は完全に排除され、死んだも同然の扱いとなる。
反対に人間は、不在と死は別物として認識することができる。
それは、人間がゴリラやチンパンジーの住む熱帯雨林を離れたことにより、食料の獲得が困難になったこととつながっている。
食料は点在しており、集団の中で食料を獲得するために一時的に群れから離れる者が必要になった。そこでは、狩りに出かけた人たちに対して、ゴリラやチンパンジーの集団では認められることがない、「一時的な不在」を許容する文化が生まれた。
「一時的な不在」という概念を獲得したのち、死を永遠の別れと認めたくないと思い、「不在」と思いこむことで思考に「死後の世界」を想像する余地を生み出した。
もしも死を永遠の別れとして受け入れることができていれば、死者に語り掛けたり、お盆の時や生まれ変わりによって戻ってくるとも思わないはずだ。
この感覚が、神の存在への想像へと繋がっていき、宗教が生まれた。
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