なんども読み返したくなる『楢山節考』レビュー
『楢山節考』は、信州の山岳部に位置する日本の村での生活、死、伝統の複雑な関係を探求した、心に残る傑作です。
ストーリーは、70歳になると山の頂上に自主的に旅立つことが期待される小さな孤立した村で展開します。
この村では慢性的な食料不足のため、若い世代のために老人は楢山へ旅立つという信念に根ざしており、物語の中心的な糸口を提供しています。
主人公のおりんは今年69歳。
自身の死の不可避性に向き合う老婆の姿は、人間の精神の強さと忍耐力を具現化し、彼女を魅力的で忘れられない主人公にしています。
楢山へ行くことは「山の神さんにほめられる」と、本人にとっても家族にとっても祭りと捉えられています。
しかし、誰でもその風習に賛成なわけではありません。
この作品は老化、犠牲というテーマを深掘りし、倫理的なジレンマを探求する点が真に際立っています。
村人たちが「姥捨て」(高齢者を山に捨てる)の伝統を守り、共同体のために犠牲を払う様子を見守る中、倫理、義務、人間の命の価値についての複雑な問いかけに直面させられます。
その緩やかな語り口と重苦しいトーンが、風習が日常的に根付いていることと、死や家族との別れという非日常との緊張感をあげています。
この作品は、人間の文化、道徳の複雑な関係を考えさせる感動的な傑作として、読む者に忘れられない印象を残します。
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