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レビュー『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』
投資の秘密を解き明かすことは、ファイナンス世界へのスリリングな冒険のようなもの。
ゴールには財政的な安定が待っているが、途中の道にはリスクと危険があふれている。
その道をすすむのに頼りになるのは、財政的なゴールを実現するための戦略と洞察を掘り下げた本であり、今回紹介する『JUST KEEP BUYING』もそんな一冊。
読後の感想は、『父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え』と似た印象を得た。
それは、これから投資をはじめる人や現代の投資家の悩みに対して親切で丁寧な回答を提供してくれており、「これ一冊だけあれば基礎をおさえるには十分」というもの。
どちらの本も有力な情報で読者を導いており、投資初心者に間違いなくオススメできる。
本書の特徴は、筆者がデータサイエンティストであり、データを可視化し、分かりやすく投資のルールを示してくれていること。
本書をつうじて学んだ3つのことを以下にまとめてみる。
買い続ける
本書のタイトルにもあるとおり、「ただ買い続ける」ことが基本的な戦略となる。
これはドルコスト平均法と呼ばれる方法で、本書ではS&P500のようなインデックスファンドに定期的に決まった額を投資することをすすめている。
本書ではさまざまな「してはいけないこと」が紹介されるが、「株価が下がるまで待つこと」もそのうちのひとつ。
株価が大きく下がるまで待って一気に買うと、買い時を逃してしまうからだ。
世にあふれる細かな戦略は重要ではなく、ただひたすら買い続けることをつうじることが、良い結果をえる方法である。
いつ株を売るのか
株を売ってもいいのは以下の3つのケースだけというのが分かりやすかった。
・リバランス
・集中しているポートフォリオを分散させるとき
・経済的にお金が必要なとき
これらのなかに「株価が下がりはじめたら」や、「株価が下がると予想される時」が入っていないことが肝。
ここでいうリバランスとは、現代ポートフォリオ理論のように、投資を「額」ではなく「%」で管理する方法だ。
たとえば、基準を「債権40%、株式60%」と決めている場合を考えてみる。
次の年になり、それぞれの割合が「債権35%、株式65%」になった。
そんなときは株式を5%分売り、債権を5%分買うことで、基準の「債権40%、株式60%」にもどす。
このような作業がリバランスだ。
ちなみに本書でオススメしているリバランスの回数は「一年に一度」で、その理由は回数が少なくて手間が少ないのと、確定申告前にあわせて行うことで、管理が楽になるからだ。
FIRE(早期リタイヤ)はオススメしない
本書では早期リタイヤの判断基準となる「4%ルール」についても詳しく解説されているが、著者は意外にもFIRE(早期リタイヤ)をオススメしていない。
それは経済的な問題がなくなったとしても、以下のような問題があるからだ。
・心身の健康面での問題
・じつは大勢の人が、働かないと人生に楽しみを見出すのが難しいと感じている
人生に何を求めているかを本当に理解するのは簡単ではないと教えてくれる。
そして、最大の資産(一番大切なもの)はお金ではなく、「時間」であることも分かりやすく解説。
楽しめる仕事をつづけることの大切さを教えてくれる。
たしかに投資の神様と呼ばれるバフェットでさえも、いまだに働きつづけている。
おわりに
紹介される手法自体は「画期的」といったものではなく、一般的に知られている方法ばかり。
しかし筆者がデータサイエンティストなだけあり、データで見える化し、読者を納得させるだけの裏付けを提示しているのがこの本の特徴だ。
アメリカの本なので当然といえば当然なのだが、本書の唯一の弱点は日本市場についての言及がすくなく、NISAやiDecoについて網羅していないことだろうか。
とはいえ普遍的な内容が満載なので、投資って実際どうしたらいいの?といった疑問に答えてくれる一冊として最適といえる。
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