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真実を追求するためのガイドブック - 本多勝一のルポルタージュ論

雑誌「スペクテイター〈33号〉 クリエイティブ文章術」の内容が面白かったので、その中で紹介されていた『ルポルタージュの方法』を買ってみた。

古い本だが、面白い!

表現せずにおれない、せっぱつまったもの、ひたむきなもの、不正への怒りさえ持っていれば、技法なんておのずと会得できる。

ルポについて議論するよりも、ルポについての実践を一回でもするほうがいい。

このような力強いことばで、ルポルタージュの方法や魅力について語られており、一気に読んだ。

著者は実際にフィールドワークを通じて、『カナダ・エスキモー』、『アラビア遊牧民』、『ニューギニア高地人』をはじめ、数多くのルポを世に送り出してきた人物。

本書はルポルタージュを取りあつかう書籍として、第一人者による本なので説得力があり、非常に充実した内容となっている。

そもそもルポルタージュとは何か、ルポルタージュを書くために必要な技術や方法、そして書くにあたっての姿勢について、丁寧かつ詳細に解説されている。

ルポライターだけではなく、文筆家の人、また、物を書き始めたい人におすすめ。

ルポへの基本的な姿勢がシンプルに、かつもれなく網羅されている本書だが、もっとも参考になったのが、「〆切」について。

著者がルポルタージュの教室にて、生徒たちに出した宿題が、「3ヶ月で、100枚(1枚400字)のルポルタージュ」だ。

つまり3ヶ月で40,000字ということになる。

これは自分で何かモノを書くときの一つの基準として使えると思った。

というもの、ウェブライターなどの「〆切」がすでにきまっている仕事であれば、〆切を決める必要はない。

しかし、誰かに依頼されたものではない「個人的なプロジェクト」においては、書き上げるために「〆切」を決める必要がある。

「〆切を決める」というのは以外と難しく、適当に決めると、〆切をないがしろにし、書き上げることができないという事態にも。

その点で、「3ヶ月で40,000字」は、ルポの第一者が宿題として設定しているので、期限としての有効性がある。

そして、不可能ではないが、簡単でもない、丁度よい量と期限であるといえる。

また本書は、取材に対する熱意や興味、そして対象に対する尊重や共感など、ルポルタージュに必要な姿勢についても詳細に解説している。

著者いわく、ルポルタージュとは「現実の再構成」である。

つまり、ルポルタージュは、取材対象の人物や社会現象を客観的に捉え、それを文章や写真によって再現することで、読者に対して事実を伝えることが目的だ。

そのためには、取材の精度や正確性が極めて重要であり、本書では、そのために必要な技術や方法を詳細に解説している。

たとえば、取材の前には、取材対象の背景や文脈、状況などを調べることが重要だ。

また、取材中には、質問の仕方やタイミング、または取材対象の反応や態度などを注意深く観察することが求められる。

そして、取材後には、取材ノートを整理し、事実を確認することが欠かせない。

本書では、これらの技術や方法を丁寧に解説し、実践的なアドバイスを提供している。

著者の実践的なアドバイスや、倫理的な問題に対する考え方、自身の経験に基づく具体例などが、モノを書く上での指針として役立つだろう。

まとめると、本多勝一氏の『ルポルタージュの方法』は、ルポルタージュを書く上での重要なガイドブック。

実践的なアドバイスや倫理的な問題に対する考え方、具体例などが盛り込まれている。

実用書としてだけではなく、読み物としても楽しめ、ルポルタージュの魅力や楽しさが伝わってきた。

ルポルタージュにとどまらず、モノを書くうえでの指針として役立つ一冊である。


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