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レビュー『世界の素描 1000の偉業』

コロナのせいで、美術館から足が遠ざかったしまった2年間。

そんなときでも、心に豊かさを与えてくれるのが本というメディア。

もちろん実物の油絵や彫刻にはかないませんが、そもそも美術館ではなかなかお目にかかれないのが巨匠達のデッサン。

そんなデッサンが集められたのが本書となり、美術好きな人や、感性を磨きたい人におすすめです。

なによりも「1000枚のデッサン」という圧倒的なボリュームにおどかされ、見応えは十分。

デッサンは世界の主要美術館に秘蔵されている傑作で、一三世紀から二〇世紀の西欧の巨匠たちの手によるものが集められたもの。

すべてオール・カラーで掲載されており、画家の逡巡や感情がのこされたデッサンは、躍動感にあふれています。

また、本書の別の魅力は天才たちの「創作の秘密」にも迫っていること。

以下のような引用を通じて、創作のヒントを与えてくれます。

「偉大な画家の作品には、早描きがあっても、ひとつとして無駄な線はない。そして彼が偉大であることを知るのは、その制作の速さによってではなく、無駄のなさによってである。」

「第一に、自然を支配する法に従わなけれならない。これが上手い画家とそうでない画家との第一の違いである。・・・(中略)彼には、動きや成長を示す線が見えていない・・・(中略)対照的に、偉大な素描家の大きな喜びは、こうした自然を支配する法を跡付けることにある。彼が陥りやすい誤りは、この法を否定することではなく、むしろ法の力を強調し過ぎることにある。」

著者の一人であるヴィクトリア・チャールズさんは美術史の博士号を持っており、美術史に関する著書多数。

本書は見開き2ページで、1枚から8枚ほどの素描が掲載されており、見ていて飽きません。

じっくり見るのも良いですが、パラパラめくるだけでも楽しめる一冊でした。


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