レビュー『学習する組織』
世界で100万部を突破したベストセラーのご紹介。
本書は、自律的かつ柔軟に進化しつづける「学習する組織」のコンセプトと、その構築法を説いています。
組織を率いる経営者や、集団の変革にかかわるリーダー、チームでの働き方に違和感を持っている会社員にピッタリの本。
中国では自己啓発書としてブレイクした本なので、モチベーションアップにも使えます。
5つのディシプリン
著者は、経営の難しさを以下のように語ります。
"多くの経営者が直面する最も厳しい教訓は、結局のところ、他者を参画、あるいはコミットさせるために自分ができることは一切ないということだ。(中略) 無理強いしようとしても、せいぜい追従を助長するぐらいだろう" (p.385)
それでは、組織として学び、組織として変わるためには何が必要なのでしょうか。
著者はずばり「5つのディシプリン」が必要と語ります。
以下それぞれについて、簡単に説明します。
1. 自己マスタリー
継続的に個人のビジョンを明確にし、それを深めることを指しています。
エネルギーを集中させ、忍耐力を身につけることができ、最終的には、現実を客観的に見ることができるようになります。
2. メンタル・モデル
ぼくたちがどのように世界を理解し、どのように行動するかに影響を及ぼすものが何であるかを知ることが必要です。
これは、深く染み込んだ前提や一般的な概念であり、想像やイメージをふくんでいます。
3. チーム学習
一緒に探求、考察、内省を行うことで、チームの意識と能力を共同で高めるプロセス。
社員が成長できる環境を作るには、社員の献身に値する目的を持つことが重要と分かります。
4. 共有ビジョン
チームで創り出そうとする未来の共通像のこと。
目標や価値観、使命といったことを指し。優れた成果を上げるチームは、任務はもはや自己と区別がつかず、自己が任務と強く一体化しています。
その任務を抜きにして、自己を語ることができないほどに。
5. システム思考
複雑な事象を整理して、問題の原因をどのように持続的に改善できるかを解明するプロセスです。
目隠しをされた3人がそれぞれがゾウの一部を触って、ゾウ全体を理解したつもりにならないように注意する必要があります。
困難な問題を理解するには、その問題を生み出しているシステム全体を見る必要があることを教えてくれます。
おわりに
本書では、「目的を達成する能力を効果的に伸ばし続ける組織」を作るための5つのポイントが説かれています。
人とチームの「学習能力」の根源を探り、提案されたのはマネジメントの新常識。
深い人間洞察と、豊富なケーススタディに裏打ちされた本書を通じて、人間の奥深さを再確認できます。
管理ではなく学習を、正解への固執ではなく好奇心を基盤とする、新たな「マネジメント」のあり方が見えてくるはず。
集団での行動を変えるきっかけにピッタリの本です。