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レビュー『ハリウッド映画で学べる現代思想 映画の構造分析』

好きな映画を深く楽しみたい!

そんなときに必要なのが映画の背景です。

そして興味ぶかい映画深読みの本をみつけたのでご紹介。

それが内田 樹さんの『ハリウッド映画で学べる現代思想』です。

本書のユニークな点は、現代思想をつかって映画を語るのではなく、映画をつかって現代思想を語っている点。

『エイリアン』『大脱走』『ゴースト・バスターズ』と、だれもが一度は聞いたことがある映画を題材に「あのシーンにはこんな意味があった!」と新たな解釈を示してくれます。

とくに衝撃だったのが「アメリカの男はアメリカの女が嫌いである。」という一文から始まる第3章「アメリカン・ミソジニー−女性嫌悪の映画史」。

ハリウッド映画には女性嫌悪をあらわにしたものが多く存在し、それはアメリカ文化が根深い「女性嫌悪の文化」であることを実例を挙げながら説明しています。

その起源には「西部開拓の終了」が関係しており、西部開拓が終わったころに女性嫌悪をあらわした映画が増え始めました。

というのも西部開拓の担い手となった男性たちは、ほとんど女性と縁がなく、子孫を残すことができなかったというトラウマを抱えていたからです。

そんな男性たちには「女性嫌悪」の物語を語り続けることでしか、そのトラウマを癒すことができなかったという洞察は、読んでいてなるほどと思わされました。

女性への嫌悪をつうじて男性同士の連帯を称揚するというのは、聞いていて悲しくもありますが、そういった事情が、アメリカのアイデンティティを強く規定しているということに驚かされます。

そして、おおくのアメリカ映画を輸入する日本ではそのような映画がどのように受容され、いかに近代社会へ影響をあたえたのかも気になり、今後調べたいと思います。

ほかにも『エイリアン』が女性を主人公にした初の「フェミニズムの勝利の物語」として認知ことも知らなかったので、知的興奮を感じることができました。

本書の「映画の読み方」をつうじて、映画の「表」で進行する分かりやすいストーリーと、その「裏」の製作者が仕掛けた秘密について知ることができます。

フロイトやラカン、バルトといった思想家の説を、おなじみの映画をつかって解説しています。

そしてアメリカ映画の分析をつうじ、文化といった大きな視点でものを考えることができます。

当時の時代背景や、背後にある思想について知ることができ、人に話したくなるような映画の雑学としてもオススメです。


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