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レビュー『小説家という職業』

ベストセラー作家が、商売として、小説という商品をどのように生産してきたのかを知ることができるのが本書。

題名のとおり、「職業」という観点から小説家について語った本で、「小説は読むな、とにかく書け!」というのが主要なメッセージです。

著者は元々本好きでもなく、大学教授のかたわら副業として、小遣い稼ぎのために小説を書き始めたとのこと。

よって、「いかにコンスタントに売れる商品(小説)を量産するか」に注力して、小説を書いてきており、本書ではその手法が公開されています。

他作品の分析やテーマといったものはまったく不要と断言し、そんなことに無駄な時間を費やすならば、小説を書きなさいと断言。

小説は自由な表現が面白いのだから、ハウツー本の真似をしてあえて型にはまる必要はないと語ります。

このアドバイスは、作家志望の人への通常のアドバイスとは正反対な意見であるとはいえますが、そのような異端のやり方で作家になった著者が、小説家について語るところが本書の魅力。

以下、本書で気になった箇所を箇条書きにして抜き出しました。

・1h6000字、1日3h、20時間で1作(12万字)を書きあげる。
・10分1000字書くことを1日に何回も行う
・音楽を聴いて、スイッチを入れる
・うまく書けないと悩むのは、20作書いたあとに悩むべし
・1冊の本を読んだあとに、自分の体験か本の内容かの区別がつかなくなるぐらいまで1週間は考える
・1冊読んだら1冊書く
・重要なのは集中力。その作品の中に自分を落とす
・順を追って物語を描く
・作家が続かない理由
 ・最初の作品を越えられない
 ・読者の慣れ
 ・デビュー後のビジョンがない(生涯に何作?ベストセラー作家になって1億部、何年
間続けるの?賞をとるの?)
・処女作を初めから4つのシリーズで構想。尻上がりに面白くなる戦略
・一言でネタを説明できないもの→解釈が人によってことなるもの
・調べなければわからないことを入れておく→読者に調べてもらう
・読者の期待を裏切ることが作家の使命→ ここがよかった、やもっとこうしてほしい→に進んではいけない→ここがつまらなかったと言われたほうに、そこに挑戦する
・ノンフィクションを読む人は多いが、小説を読む人は1人で1日に1冊読む
・これからはこれが来る!という信念は、創作をするものが自分を鼓舞するもっとも大きなエネルギー

著者の文章は読みやすく、押し付けがましさも感じません。

小説を書くことをビジネスと割り切っている点も、読んでいて腹落ちしました。


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