体をつかった学び方ハック『脳の外で考える』
まさに「脳にいい思考法大全」といった本。
いままで「ノートに書いたほうが記憶しやすい」といった、漠然と体で感じていたことをうまく言語化してくれている。
著者は、自分たちの心がどのように機能するかを、よりよく理解する必要があると主張。
そうすることで、私たちが自分たちの知的能力を最大限に活用することができる。
この本は、その理解を深めるための優れた出発点となるはずだ。
自身のパフォーマンスを高めたい社会人や、「学び方」に興味がある人におすすめ。
そもそも、人間の知性は、これまで閉じられた自己完結的なものと考えられてきた。
つまり脳という、頭蓋骨のなかに物理的に固定されたものとして捉えられてきた。
しかし本書では、知性は境界に限定されるものではなく、常にその外側にまで広がっていると主張。
ざっくりいうと、「身体を使い、環境を変え、仲間と取り組む」だけで、思考力や記憶力、洞察力がアップするというもの。
偉人たちの学習法も具体例として載っているため、興味深く読み進める。
本の中で重要なテーマの一つは、「内受容感覚」という概念。
簡単にいうと「体の状態に気づく」ことで、ぼくたちの肉体が思考を形作る上で重要な役割を果たしていることを示している。
たとえば、人は歩くことによって、より創造的に思考する傾向があることが研究によって示されている。
体の保持の仕方さえも、私たちの態度や感情に影響を与えるということに驚かされた。
本書を読んでさっそく取り入れようとおもったことを列挙する。
・毎日散歩する習慣をみにつける
・ランニングの習慣をみにつける
・ドイツ語の単語の学習に、ジェスチャーとイラストを使って記憶力を高まる
・自然が多い場所への引っ越しの検討
・内受容感覚ジャーナルをはじめる(決断事項、それぞれの選択肢を選んだ時の感覚、最終決断をしたさいの感覚、結果が出たときに、振り返ってパターンを見つける)
・詳細な記録を残す
また、本書を読んで驚かされるのが、引用の多さ。
さすがはエビデンスベースの本場、アメリカの本だ。
巻末に引用元が掲載されているのだが、小さい字でびっしりと37ページにも及ぶ。
とりあげている研究分野も幅広く、肉体認知から人間の思考の性質を変えているテクノロジーの研究までを扱っている。
本書では、最新の科学によってあきらかにされた、思考力を研ぎ澄ます方法を紹介。
作者は世界の第一線で活躍する科学ジャーナリスト。
神経科学者、認知科学者、心理学者といった、世界中の研究結果を調べ尽くして導き出したのが本書となり、脳の外界が、知性におよぼす影響について深く掘り下げた、興味深い本。
「脳の外」のリソースを活用するだけで、人間の思考力や記憶力、洞察力を高めることができる。