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『亡命者の古書店』を読んで知的に焦る
『亡命者の古書店―続・私のイギリス物語―』を読了し、圧倒された。
作家である佐藤優氏のイギリスでの研修時代のお話で、佐藤優氏の知的原点となった出来事が刻まれている。
古書店の店主に弟子入りした若手外交官の佐藤優氏が、宗教や民族、国家を巡る対話を重ねながら、世界の読み解き方を学んでいく姿が描かれている。
二人が生み出す物語は知的で、濃密だ。
著者の博覧強記の凄みに驚かされる
当時入手困難だったチェコの神学書を求めていた佐藤氏が、たまたま東側の書籍を入手できる古書店を見つけ、店主のズデニェク・マストニーク氏と出会う。
マストニーク氏は亡命チェコ人であり、東側の書籍と西側の書籍を交換・流通させ、東側の本を救い出すために奔走していた。
そんなマストニーク氏の見識の広さに感銘を受けた著者が、マストニーク氏に弟子入りをする。
講義の内容は、歴史、国家、哲学、宗教、文学、そして料理と広範な分野におよび、佐藤氏が研究するチェコの神学者フロマートカや、チェコスロバキア共和国の初代大統領マサリク、宗教改革者フス、そして文学者カレル・チャペックなども対話の折々に登場する。
佐藤氏が異国の地の教養人たちと堂々と議論する様は圧巻だ。
また、歴史に関して佐藤氏自身の知識の欠損もきちんと把握しており、不明な箇所は分からないとキッパリと答えている点が印象的だ。
一体これだけの量の会話内容をどうやって覚えているのだろうかと驚かされる。
佐藤氏はご自身を記憶力が強いほうと自認されているが、それでも過去の会話から本を1冊仕上げるのは大変なはずだ。
本文中には、ノートにまとめようとする描写が一箇所あったように思うが、マストニーク氏講義や友人との会話が終わった後に、ノートに書き取っていたのだろうか。
知的焦りを感じる
異国の地で、異国の言葉で、異国の知識人と濃密な人間関係を構築する佐藤氏の人の懐に入り込む能力の高さにも驚かされるが、なによりも氏の学問的蓄積の深さに恐れ入る。
知的好奇心の高さとも言えようか。
ぼくは昔の恩師や友人との会話が全く思い出せない。
記憶力が悪いのか、会話の内容への好奇心が低いからか、会話の内容自体に知的密度が低いからなのだろうか。
おそらくどれも当てはまり、記憶に残っていない。
本書では、佐藤氏が高校時代の倫理社会の先生から送られた言葉が紹介される。
「佐藤君、私は好きなことをしていて食べていけないという人を1人も見たことがありません。ただし、重要なのは中途半端に好きなことではあんくて、本当に好きなことでなくてはいけません。佐藤君が神学部で本当に勉強したいことがあるならば、就職や将来のことは考えずに、自分の心に忠実な選択をすればいいと思います」
著者はこの言葉を「人生の真理」として大切にしている。
ぼく自身を振り返ると、大学で特に熱を入れて研究したテーマもなく自分は一体何をしていたのだろうかと反省させられる。
そして本書は、もっと知的に貪欲にならなければと自身を鼓舞してくれ、学習の進捗によい緊張感を保つのに役立ちそうだ。
妻と読書会をすることに決める
佐藤氏と登場人物のような知的に内容の濃い会話を、いつも一緒にいる妻とさえしたことがなく、自分は大丈夫か?と不安になる。
そこで妻も巻き込んで、毎週一回、二人で決めた本をテーマに読書会を開くことにした。
本は『ぼくらの頭脳の鍛え方 必読の教養書400冊』の中から交代制で1人1冊ずつ選んでいくことにした。
最初は課題図書は妻が選んだ『現代語訳 般若心経』だ。
教養書を読み進めるうちに、佐藤氏のように人生をかけて研究していくテーマを見つけれたらと思う。
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