尊い再会
水を飲んでも詰まる壮絶なイレウス生活から解放されて半年が過ぎた。
瘦せすぎて点滴の針を刺せる血管もなくなり、床ずれ防止マットを敷かなきゃ眠れないくらいだったけれど、中心静脈カテーテルを外し食事を再開したら、半年で10キロ増えた。手術の執刀医には、無事過ごせていますと葉書を出した。
誰かとご飯を食べることを、日本で私ほど喜んでいる人間がいるんだろうか。私、こんなに喜んでばっかりでよいのだろうか、と心配になるくらいの日々を過ごした。
書き出しただけでもこんなにお祝い尽くしだった。
一生分祝った気分。
ちょうどコロナ禍も落ち着いて、会えていなかった友人たちともたくさん乾杯できた。
一度遮断された「食」との再会は、人生の尊いハイライトだった。
‥‥でも、それを超えるかもしれない尊い再会があった。
イレウス癒着剥離手術からちょうど2ヵ月たった12月のはじめ頃。
ある朝、本当に本当に模範的な、バナナのようなうんちが出た。
処方薬の酸化マグネシウム錠のせいでそれまで便通はずっとゆるかったのだけど。
手ごたえというか腹ごたえというか、尻ごたえというのか、抜群に良い感触があったので便器を見たら、それがいた。
私は感動に包まれながらしばらくじっと見入ってしまった。
私の腸を旅して出てきた、この物体のこのきれいな形。
今私の腸にどこにも癒着がないことを教えてくれていた。
トイレの中でひとり目頭が熱くなったのも、忘れがたいハイライトだった。