【知っておきたい 税務の知識】相続税申告の必要性について
相続税申告の必要性について相続税には基礎控除があるため、
全ての方に相続税がかかるわけではありません。
相続税計算上の財産評価額と、通常の取引価格に差が生じる財産もあるため、相続税計算上どのように評価されるのかを把握しておきましょう。
また、各種特例の適用要件を理解しておくことも重要です。
相続税の基礎控除相続税には、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除が設けられています。
(例)相続人が2人であれば、3,000万円+600万円×2人=4,200万円相続人が5人であれば、3,000万円+600万円×5人=6,000万円亡くなられた方の財産の合計がこの基礎控除以下であれば相続税はかかりませんし、相続税の申告の必要もありません。
相続税の財産評価相続税は、亡くなられた方の、亡くなられた時点の財産の合計額を基に課税されます。
不動産や株式など、少し計算が難しい財産もありますので、下記でご紹介します。
1.土地不動産は一物四価などと呼ばれる財産です(実勢価格、公示価格、相続税評価額、固定資産税評価額がそれぞれ異なる。)が、相続税で使用する土地の評価は、「相続税路線価」を基に評価した価額です。
路線価方式は、各道路に値段が付けられていて、その道路の価格を基に隣接する土地の評価を計算する方法です。
国税庁のHPなどで「路線価図」を調べることができますが、路線価図を見ると、道路に「300C」などと数字と記号が付されています。
この300、というのは「300千円」=「30万円」、という意味で、m²当たりの単価を示しています。
そのため、この道路に接している100m²の土地がある場合、
30万円×100m²=3,000万円の評価額、ということになります。
(※「300C」の「C」は借地権割合を示していますが、本稿では詳細な説明は割愛させていただきます。)
なお、同じ100m²の土地でも、10m×10mの綺麗な正方形と、4m×25mの長細い土地では使い勝手が大きく異なります。
また、歪んだ形や、三角形の土地などであればより利用効率は悪くなります。
実際に評価をする際には、図面を基に、土地が道路に接している間口の距離や、奥行の距離、土地の地形などを考慮して各種補正を入れた上で評価を行います。
2.建物建物は、固定資産税と同額で評価をします。
毎年市役所等から送られて来る固定資産税の課税明細書に記載されている評価額が、相続税評価、ということになります。
(課税明細書には、「課税標準額」や「固定資産税額」も記載されていますが、「価格(評価額)」を使用しますのでご注意ください。)
3.上場株式上場株式については、ご相続発生時点の株価を基に計算します。
この際に、ご相続発生日の終値、その月の平均額、前月の平均額、前々月の平均額、の4つの中で一番低いものを使用して良いこととされています。
(例)〇〇商事の株式の株価(9/10に相続開始)
9/10の価格:320円
9月の平均:315円
8月の平均:330円
7月の平均:310円
∴310円で評価
4.非上場株式ご自身で会社を経営されているような場合には、その会社の株式も財産に含まれます。
非上場会社の株式は、上場株式のような取引相場がないため、会社の決算書等を基に株価を個別に算定する必要があります。
評価方法は「類似業種比準価額方式」(自社と同業種の上場会社の株価と比較して自社の株価を算定する方法)と、「純資産価額方式」(会社の所有する資産から負債を差し引いた純資産を基に算定する方法)を組み合わせて行います。
評価の方法は複雑ですが、単純に言うと、利益が出ている会社は株価が高いですし、価値の高い財産(含み益のある土地など)を所有している会社、業歴が長く過去の利益の蓄積が多い会社などは株価が高くなります。
相続税の特例
1.小規模宅地の特例お亡くなりになった方のご自宅の敷地を、同居していた親族が相続した場合など、一定の要件を満たすと、その敷地の評価が最大80%減になるという特例です。
1億円の評価額の土地→この特例の適用により2,000万円の評価になる注意点としては、この特例は相続税の申告をしないと適用ができないため、特例を適用すると財産評価額が基礎控除額以下となり税金がかからない、という場合にも申告はする必要があります。
2.配偶者の税額軽減配偶者は、法定相続分相当額または1億6,000万円までは相続しても税金がかからない特例があります。
そのため、配偶者が全て相続すると相続税はゼロ、というケースもありますが、この特例も、適用するためには申告が必要となりますので注意が必要です。
まとめ相続税の節税がしたい、と相談に来られた方で、よくよく話を聞くとわずかな相続税しか発生しなかったり、逆にうちはそんなに財産がないから、という方の相続税の試算をしてみたら多額の納税額が算定された、ということは良くあります。
相続税の申告は不要だ、と思い込んでいて、実は申告が必要だった場合には、税務署からの指摘を受け、追加で加算税や延滞税なども課税されてしまう可能性があります。
万が一の際にどれだけ相続税がかかるか把握していない場合には、一度専門の税理士に相談してみることをお勧めいたします。