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他者を認めるということ

私たちは、『動き出しはご本人から』の介護技術を進めるなかで、ご本人を認めていくことがどれほど大切なのか、ご利用者との日々のかかわりの中でとても強く感じます。
そして、それは職場づくり、職員育成のところでも同じだと考えています。今回は、先日の動き出しの実践事例から少しだけ、かかわりの様子をご紹介します。

互いの信頼関係が良い関係を生む
「いいです。すごく出来ていますよ。」
そんなふうに心をくすぐる一言をご利用者は嬉しく感じ、自信ありげにちょっぴり微笑んでご自分で動こうとします。

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歩いたり走ったり、目に見えるような動きが出来るようになるわけではありませんが、ほんのわずか私たちの介助の手がふっと軽くなる瞬間にそれがわかります。
ちょっとした達成感を感じたりします。
私たちが、動き出し介護技術を続けていけるのは、そのような小さな喜びからかもしれません。

介助者の不安が声かけの量に比例する
先日の介護技術研修では、ご自分から話すことはほとんどなく、いつも静かに私たちをじっと見つめてくれる様子が印象的なご利用者の実践ラウンドを実施しました。
実践者は、あまり上手くいかなかったと反省をしていたようですが、ご利用者と気持ちのどこかでつながっているような、信頼関係を感じるそんな素敵な実践でした。
実践は、講師 日本医療大学 大堀教授 とライブでつないでご指導いただきました。
このコロナ禍においては、もう、こうした研修がスタンダートになりつつありますね。

実践現場では、普段一緒に働く仲間やカメラがぐるりと囲み、いつもとまた違う緊張感で一杯です。
ご利用者の反応が少ないことを不安に感じた実践者は、ご利用者にかける言葉が、つい、増えてしまっていました。

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先生は、介助者の不安が声かけの量に比例すると言います。
ご利用者の思いが言葉にならなくても「本当は分かっている」ということを、私たちが信用してきちんと分かっている人という配慮が出来ているか、その覚悟が大切だということなのです。

疑っているとそれはご利用者にバレてしまいます。
ご利用者は、人生の大先輩、小手先の介護は見抜いてしまいます。
嘘偽りなくご本人を信用してこそ、そこからコミュニケーションが広がるのです。
視線を合わせること、待つこと、信じること。
そこからご本人の動き出しが引き出されます。

本人を信じる、尊重することは当たり前ですが、深いことですね。

あら、っ気

実は、職員の毎日の関わりでは、声かけの時にご利用者としっかりと目が合ってから自然と次の動作に移っていたのですが、実践では緊張して焦ったのか、ご利用者の目が十分に開いていない時に声かけをしてしまいました。
高齢者の聴く能力は、私たちの処理スピードとは違い時間がかかります。介助者の声の一部分しか入ってこなかったりします。そうなると初めのアイコンタクトが重要になります。
機械ではなくヒトと人との関わりなので、緊張感もよし、イレギュラーな状況もよし、また勉強なのです。

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ご利用者自身は、言葉は少ないけれど、理解のできる方です。
講師の先生からは、もう少し時間をかけても良いとの事でした。
声をかけ続けるのではなく、ちょっと離れてご利用者の視界に入り、「自分を見てくれているな」とわかった状態から動きをはじめた方がいい、それはほんのちょっとの時間でできることと、ご指導いただきました。

互いのコミュニケーションから生まれる信頼関係

ひとこと一言やさしく声をかけながら、
「足を上げられますか?」
見つめ合った瞬間、実践者の手をぎゅっと握ってくれる。

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繰り返し、繰り返し、信頼関係が築けるようになると出来ることも増えて
手を振ってくれるようになりました。

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「動き出し」と職場づくり
ご利用者との関わりの他、職場づくりという部分でも、他者を認め尊重することはとても大切です。
上司やベテランスタッフは、チャレンジしたいスタッフ自身の想いを認め育てていただろうか。
自分の経験から本人の声を充分に聞くことなく最初からダメダメと言ってなかっただろうか。
日常を振り返ると、なんだか気になるところばかりです。

それは、失敗をさせたくない、これまでどおりにやっていきたいとする親心のようでもあります。
ですが、それは、本人の可能性を遮っているのかもしれない。
本人を信じること、認めること。
ここでも、『動き出しはご本人から』なんだとつくづく思います。
結局は、人として信じ合い、互いに認め合う事でコミュニケーションが深まり、信頼関係ができていくのだということでしょうか。
「動き出し」にこだわることなく、人として当たり前の感覚なのですが、こうして実践を繰り返すたびにあらためて私たちの心に届きます。

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次の実践ラウンドはもうすぐです。またいろいろなご利用者の動き出しに取り組んでいます。
準備は粛々と、丁寧に始まっています。
マインドでは動き出しにこだわって、日常のケアはしっかりと、ご利用者もスタッフも互いを認め元気に過ごし、次回ラウンドに備えていきたいと思います。

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