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養生訓 巻第七 用薬 鳳凰堂流解釈㊲
原文を現代文に改変
中華の書に、藥劑の量數をしるせるを見るに、八解散など毎服二匁、水一盞、生薑三片、棗一枚煎じて七分にいたる。是は1日夜に二三服も用ゆべし。或いは方によりて毎服三匁、水一盞半、生薑五片、棗一枚、一盞に煎じて滓を去る。
香蘇散などは日に三服といえり。まれには滓を一服として煎ずと云う。多くは滓を去るといえり。
人參養胃湯などは、毎服四匁、水一盞半、生薑七片、烏梅一箇、煎じて七分にいたり滓を去る。
參蘇飲は毎服四匁、水一盞、生薑七片、棗一箇六分に煎ず。
藿香正氣散、敗毒散は毎服二匁、水一盞、生薑三片、棗一枚七分に煎ず。寒多きは熱服し、熱多きは温服すといえり。
是皆藥劑一服の分量は、多く水を用ゆる事すくなし。然れば煎湯甚だ濃くなるべし。
日本の煎法の小服にして水多きに甚だ異(かわ)れり。
局方に、小児には半錢を用ゆ、児の大小をはかって加減すといえり。又小児の藥方毎服一匁、水八分煎じて六分にいたるといえるもあり。
醫書大全、四君子湯、方後曰、右剉(きざむ)こと麻豆大の如し、毎服一匁、水三盞、生薑五片、煎じて一盞に至り、是一服を十匁に合わせたる也。水は甚だ少し。
中夏の煎法右の如し。朝鮮人に尋ねしにも、中夏の煎法と同じと云う。
鳳凰堂流意訳
中華の書に、薬剤の量数をしるしているのを見ると、
八解散は毎服二匁、水一杯、生薑三片、棗一枚煎じて七分にまでする。これは1日夜に二三服用いる。或いは方によって毎服三匁、水一杯半、生薑五片、棗一枚、一杯分に煎じて滓を取る。
香蘇散は1日に三服と書かれている。まれには滓を一服として煎じる。その多くは滓を取る。
人參養胃湯は、毎服四匁、水一杯半、生薑七片、烏梅一個、七分まで煎じて滓を取る。
參蘇飲は毎服四匁、水一杯、生薑七片、棗一箇六分に煎じる。
藿香正氣散、敗毒散は毎服二匁、水一杯、生薑三片、棗一枚七分に煎じる。
寒証が多ければ熱服し、熱証が多ければ温服すると書かれている。
これら全て、薬剤一服の分量の多くが水を用いる分量が少ない。従って煎湯は非常に濃くなる。
日本の煎法は小服で水が多いのと全く異なる。
局方に、小児には半錢を用いると書かれている。小児の大小をはかって加減すると言っている。又小児の薬方は毎服一匁、水八分から煎じて六分にすると書かれているものもある。
医書大全、四君子湯方の後に、右の生薬を麻豆大まで剉(きざむ)、毎服一匁、水三杯、生薑五片、煎じて一杯分にし、一服を十匁に合わせている。水は非常に少ない。
中華の煎法はこのようになっている。朝鮮人に聞いても、中華の煎法と同じだと言っている。
鳳凰堂流解釈
素問・異法方宜論には、地域による寒暖差や湿度、乾燥度の違いによって主体となる治療法が異なると言う事が書かれてます。
支那も朝鮮も大陸にあり、寒暖差や湿度、乾燥度は日本の比ではありません。
以前中国から来日された中医師が、中々思い通りの結果を出せずに悩んでいた時に、化湿、利湿の生薬を加える事で大陸での治療効果と並ぶようになったとの話を聞いた事があります。
海に囲まれた島国ではそのような工夫が必要なのかもしれません。
東は砭石を使うと言うのも含蓄があります。