078_『うたかたの日々』/ ボリス・ヴィアン
昨夜は眠りにつけず、色々な記憶に思いを巡らせながらも、最後に頭に浮かんだのは、この作品だった。
文学史において、突出した傑作というわけではないけれど、時折、触れたくなる作品。少なからず、昨日の自分の心に平穏をもたらしてくれたことは確か。
ボリス・ヴィアンの『L'écume des jours』
直訳するならば『日々の泡』
邦題は『うたかたの日々』
英題『Mood indigo』は、言わずと知れた、デュークエリントンの楽曲より。
幸せの絶頂で結婚をした夫妻。幸せな時間を過ごしていたのも束の間、妻のクロエは肺の中に睡蓮の蕾ができる病気にかかってしまう。医者曰く、助けるには、彼女の周りに花を絶やさないこと。
此の、完全にファンタジックな設定を筆頭に、作家のイマジネーションが作中では自由奔放に展開される。想像の壁を軽快に越えていく。それが、何故だか腑に落ちてしまうのだから、不思議。
この作品は自分にとって特別な作品で、それは、この自由奔放なイマジネーションもそうだけれど、決してそれだけではなく。
敬愛する漫画家の岡崎京子と映画監督・映像作家のミシェルゴンドリーが、それぞれ漫画/映画にし、更にはジャズミュージシャンの菊地成孔が東京大学にて日本語訳を手掛けた野崎歓と特別講義をしているという事実もそう。
それらの解釈/表現が、いずれも素晴らしい。
そのように多くの表現者にインスピレーションを与えてきた作品。この作品の持つ不思議な魅力はこれからも自分に付き纏ってくるのだと思う。
そのようなことを考えていたら、難なく眠りにつけたのだから、芸術は本当に不思議な力があって、果てしなく面白い。