耕作放棄地問題から見える好機
昨今、耕作放棄地という言葉を耳にするのは農業関係者だけではなくなってきたように思う。それほど農地の維持管理が難しくなり、社会への影響を出し始めているという事かもしれない。ただ、耕作放棄地が問題だと口で言う人は多くとも、そこに対してどのような課題があり、どのように問題解決していく必要があるのかを語る人は少ない。今日はそんなところについて話をしてみたいと思う。
つい先日のことだが、農林水産省が「長期的な土地利用の在り方に関する検討会」という会合を開いている。分かりやすく言えば、人口減少に伴い維持管理が難しくなってきた農地をどのようにしていくのか、という議題を有識者を交えて話をする会である。政府が動くほど日本国の農業は衰退しているという事である。恐ろしい限りだ。
この会合で政府側は以下の4つを対策として挙げている。
1. 政策努力で維持
2. 放牧などの粗放的な農業生産に利用
3. 農業生産の再開が容易な形で利用
4. 計画的な植林
この4つに区分し、対応していくという案である。
私としては正直 う~ん と言わざる負えない内容だ。そもそもの話だが、耕作放棄されている農地がどうして放棄されているのかを考える必要がある。後継者がいないからか、農地利用するつもりだが手が回らないのか、誰が管理しているのかすら分からないのか。実際、農地の管理者と連絡が取れないなんてこともあったりする。
耕作放棄地は私が子供の時から言われてきた問題ではあるが、このような利用者の居ない農地というのは実は使いたい人や組織は多くいる。それらの人たちに対してどのように効率的にマッチングできるのか。そこを強化することがまず第一かと思う。
まぁ、調べれば見つけられるし、半ば強引に個人情報を引き出して探し出すという手もないわけではないが、誰もができる方法でもない。もっとわかりやすい仕組みがあれば、かなり需要があるように思う。
そして政府の提案する内容に対して有識者である東京大学大学院の安藤光義教授は
「まずは土地を利用、管理する人が必要だ。土地を区分しても土地は守れない」
と発言している。いやー、実にまっとうな意見だと感じる。仕組みやルールがあっても、それを運用し利用するのは人間である。まずその人間がいないという事がこの問題の根源であって、意外とこんな当たり前のことに気が付かないことが多いのだ。
また、岩手大学の広田純一名誉教授は
「現在の住民だけでは農地の管理維持は困難である」
と言及し、住民以外の参加が必要であると示した。結局のところ人がいないのが原因なのである。
しかし、これは逆に新規参入していく法人や個人事業主にとっては追い風かもしれない。まとまった土地が手に入りやすくなり、そこに対する国や県の補助などのバックアップも期待できる。また、このような農地を必要とする人に提供したり、貸し出せるようなシステムを作ってしまえばこれは一つのビジネスにもなりえるわけだ。
ピンチはチャンス。逆境の中にこそチャンスはあり、苦しい時ほど前を見る必要があるように思う。今後の行方はまだ見えない問題ではあるが、これは決してネガティブなことばかりとは言えない。新しい農業人の発展につながることを祈りたい。