大事件より関係がみたい! 会話の細部がエモい4つの映画
こんなバトンが後輩から回ってきました。
自分の推し映画をまとめるハッシュタグです。この機会に色々と自分の映画を振り返り、その特徴について考えたので、noteにまとめました。
映画を選んだときは意識していなかったのですが、これらの映画には共通点があります。
いずれの映画でも大事件が起こっている。けれども、映画の焦点は、事件そのものよりも、そこにある人たちの日常の、大げささのない地味な会話にあります。
苦しい日常や悩み、重くて解消できない過去、コンプレックス、貧困、無理解……。
こうしたものを脱出させるのは、直接的な解決策や、真面目な対話だけではなく、事情も知らない人間のふとした言葉だったり、ただ歩きながら地味な会話続けることだったりするかもしれない。
そんな感じの特徴を持っている映画を、自分は選んでいたのでした。
では、四つの映画を紹介していきます。
1.「モンスターズ/地球外生命体」ギャレス・エドワーズ監督
ギャレス・エドワーズの「モンスターズ/地球外生命体」、これはほんとにいい低予算映画。
太陽系に地球外生命体の存在を確認したNASAは、探査機でサンプルを採取したが、大気圏突入時にメキシコ上空で大破してしまう。それから6年後、モンスターたちの襲撃で大きな被害を受けるメキシコでスクープを狙うカメラマンのコールダーは、けがをした社長令嬢サマンサをアメリカ国境付近まで送り届ける命令を受けていた。
特に知られていないだろう「モンスターズ/地球外生命体」をここでは推しておきます。
この映画には、モンスターが最後の最後までほとんど出てきません。
出てくる雰囲気があったり、モンスターが襲撃したとのうわさを聞いたり、破壊された建物があったり、モンスターの手足が見えたり、それくらいです。
ただ二人の人物が移動していく、そのときの会話を記録することで、この映画は進んでいきます。
メキシコからアメリカへ。あの道が駄目なら、この手段で、それも難しければあの人を頼って――。
もちろん、この移動のあり方に、難民や移民の存在を透かすこともできますが、単純に面白いんですよね、すごく。
ギャレス・エドワーズは、これが出世作となり、ハリウッド版ゴジラなどを撮影し、名前をより広く知られていくことになります。
ちなみに自分は何かで、小島秀夫さんが激賞してたラジオか何かを聞いて、それで知ったのだと思います。
2.「その街のこども」井上剛監督
井上剛監督「その街のこども」は、NHKドラマが元の映画。
阪神・淡路大震災で子どものころに被災するも、現在は東京で暮らす勇治(森山未來)と美夏(佐藤江梨子)は、追悼の集いが行われる前日に神戸で偶然知り合う。震災が残した心の傷に向き合うため、今年こそ集いに参加する決意をした美夏に対して、勇治は出張の途中に何となく神戸に降り立っただけだと言い張るのだが……。
阪神大震災の式典を迎える日の夜、ただ歩きながら森山未來と佐藤江梨子の会話が続くだけの映画。新住民と旧住民という対比もある。
いかにも踏み込んだ会話はそれほどないという点で、この映画は、表面的な会話を繰り広げているようにも思える。しかし、ここにおいてこそ、実は鑑賞者の眼が試されるようなところがある。
一見して何でもない会話から、その人の来歴や文化的背景、思考、二人の関係性を透かし見ていくことができるし、そこがこの映画のよさじゃないかなと思います。
「モンスターズ」といい、歩きながら話す人を見るのが好きなのかもしれない。
3.「メッセージ」ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督
テッド・チャン原作の言語SF映画。画面がきれいでエモエモ。
巨大な球体型宇宙船が、突如地球に降り立つ。世界中が不安と混乱に包まれる中、言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)は宇宙船に乗ってきた者たちの言語を解読するよう軍から依頼される。彼らが使う文字を懸命に読み解いていくと、彼女は時間をさかのぼるような不思議な感覚に陥る。やがて言語をめぐるさまざまな謎が解け、彼らが地球を訪れた思いも寄らない理由と、人類に向けられたメッセージが判明し……。
けれど、背景にあるのは、外来生物とのコミュニケーションの問題であり、新しい言語的認識を獲得することを通じて、自分の過去や未来を受け入れていくという問題でもある。
外来生物(モンスターズ)とのコミュニケーションというと、突飛な感じがするかもしれない。けれども、私たちの日常に引き戻すなら、どうしてかわからないけど、なぜか惹かれている文学や映画をみるとき、私たちは、「メッセージ」の主人公とモンスターズとの対話のような関係に置かれているのだと思う。
4.「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝」藤田春香監督
京都アニメーション制作の、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」。外伝とありますが、たぶんこれだけみても大丈夫だとは思います。
白椿が咲き乱れ、良家の娘のみが通学を許される名門女学園に通う大貴族ヨーク家の跡取り娘イザベラ・ヨークは、父親と交わしたある契約が原因で学園生活が苦痛でしかなかった。あるとき、彼女の専属教育係として元少女兵ヴァイオレット・エヴァーガーデンが学園に派遣される。彼女はC.H郵便社で、代筆を通して人の心に触れることができる自動手記人形といわれる代筆業に就いていた。
重要なのは、「ある人が当たり前にした、その悪意も善意もない振る舞いに、予想もしない角度から出会い、その人が私を救うつもりがないと知りながら、今いる出口のない感覚から救われる」という関係性の、幾度にも及ぶ変奏と反復です。
こうした予想外の確度からの問題解消は、単にその瞬間だけがあればいいのではなくて、それに至るまでのちょっとした会話、地味な生活描写があるからこそ、はじめて成立するものなのだろうと思います。
そんな感じで、自分の好きな映画を紹介しました。
地味な会話、エモいものが大好きな人はぜひぜひ。
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