見出し画像

名詞のアクセント~基本編~

みなさん、どうもこんにちは。
前回の記事ではお試しの「上方語で記す論文」を書き下ろしてみました。

上方語で執筆する論文【日本語文法上の助詞の扱いを再編成する】|Pan-Nankism #note https://note.com/hougengakusyuu/n/ne2281e53f41f

さて、この内容を踏まえ、いよいよ名詞のアクセントに移っていきましょう!

【注】京阪アクセントは総じて東京アクセントより簡単です。ただし名詞に関してはどっちもどっちなところもあります。他方言話者が京阪アクセントを会得しようものなら、最低限、テレビでよく聞く東京アクセントの「仕組み」について理解しておいたほうが習得がスムーズです。

さて、早速クイズです。このアクセントはどっちでしょう?

Q1 はし ○● 橋or箸

Q2 あめ ○● 雨or飴

Q3 くも ○● 雲or蜘蛛

**********************

正解は、1箸、2雨、3蜘蛛でした。

…実は、2文字の単語の場合、京阪アクセントには、「東京のアクセントと逆になる法則」があります。これは巷でもたまに耳にするかもしれません。あくまでざっくりしたルールですがあながち間違いではないので紹介しておきましょう。

**********************

【2拍名詞のアクセントは5種類!】

ここからは、上方語学的に正確なルールを記していきたいと思います。

いまから1000年前、源氏物語や枕草子の時代、京都の2拍(ざっくり言うとひらがな2文字)の名詞アクセントは、5パターンありました。

1類 水 ●●
2類 石 ●○
3類 雲 ○○
4類 船 ○●
5類 雨 ○↓

5類のように、下降を伴うアクセントもありました。中国語の声調みたいです。(3声+4声みたいな感じ)

驚くべきことですが、現代のすべての全国方言がこの京都古文のアクセントを守っています(⁉️)
つまり、「古文はすべての日本語の祖」、古文を高校で学ぶ意味はもっと強調されてもええと思うんですがねぇ……

さて、現代の京都や東京では、2類と3類のアクセントは統一されています。どうなったか見てみましょう。

《京都》
1類 水 ●●
2類 石 ●○
3類 雲 ●○
4類 船 ○○
5類 雨 ○●

《東京》
1類 水 ○●━
2類 石 ○●┓
3類 雲 ○●┓
4類 船 ●○
5類 雨 ●○

※東京アクセントの「 ┓」は、アクセント核です。後ろに「は」とか「が」が付いた時に、その「は」「が」が高う発音されれば「━」、低う発音されれば「 ┓」となってます。

まあ、およそ逆になっているのが見てとれるかと思いますが、正確な対応表は上記の通りです。よって、基本的に東京で○●━と発音する単語は●●と、○●┓と発音する単語は●○と発音すればよいということになります。

以下、注意点をいくつか。

①疑問詞は、東京では「誰」「何」「どこ」「いつ」などすべて●○と発音しますが、これは東京が例外です。全国は基本、1000年前の平安アクセントに従いますので現代京都のアクセントを丸暗記してください。

誰 ●●(1類)
何 ○○(4類)
どこ ●●(1類)
いつ ○○(4類)

②東京のアクセントで、●○となるものについては、4類と5類の二種類があります。いずれに属すかは、覚えてるしかありません。
ただし、現代関西人は4類と5類の区別にあまり厳密ではありません。よく使う単語だけ意識して使い分けておけばいいとぶっちゃけ思いますw(ガチ勢にシバかれそう……💦)

4類:何、いつ、傘、空、船、糸、中、今日etc →○○
5類:雨、春、秋、鍋、猿、前(位置)etc →○●

例)雨が降ってるから傘が要るで!
○●○ ○○○● ○○ ○○○ ●●○!

ヤツの心は…秋の空のよう
●○○ ●○○○… ○●○ ○○○ ●○

今日の鍋、何入れる?
○○● ○●、○○ ●●●?