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【ホツマ辞解】 〜大和言葉の源流を探る〜 ㊼「いとり」 <133号 令和6年6月>

 ホツマツタヱでは聖なる神獣がいくつか登場しますが、「いとり」はその最たるものです。「鳳凰」と後に漢字書きされる聖鳥(瑞鳥)であり、手塚治虫さんの「火の鳥」も原型はたぶんこれでしょう。現行一万円札の裏面のデザインは、宇治の平等院鳳凰堂のものが描かれています。

 シナでは、麒麟、亀、龍とともに重要視され、「鳳」は雄、「凰」は雌、と理解されているようです。また、「朱雀」として南方面を司って、「天之四霊」のひとつとされています。

 ホツマツタヱでは、丹霊鳥と白霊鳥の二種が登場します。赤いイトリと白いイトリです。

『孕みの帯は カツラキの 世嗣社に 御胤 祈る』16文
『時に天より 丹霊鳥の 一羽落つれば 天つ宣 これは息吹の 成る紅葉 化けて葛城 イトリ山』16文
『羽先 見れば 二十四筋 数 備われど 常 有らず 諸鳥 見れば 十五に割け』16文
『時に骸 なるイトリ 出づれば諸と 御陵の 御棺を見れば 冠と 笏と御衣裳と 留まりて』40文
『空しき殻の 白イトリ 追ひ尋ぬれば 大和国 琴弾原に 尾羽四枝  置きて河内の 古市に また四羽落つる』40文
『其所此所に 成す御陵の 白鳥も つひに曇に 飛び上る』40文
『その夜の夢に ツシマ杜 白霊鳥なる ヤマトタケ』40文

 とあるように、赤いニイトリは、トヨケ神の八千禊ぎの場面で、白イトリは、ヤマトタケに関連して登場します。

 「はらみ帯」とあるように、子宝安産に関わる霊力をもち、「ヒタカミに鶴のツガイを奉る者があった。羽先を見るとやはり二十四筋なので、その羽を撚り正し、雄鶴の羽を経糸に、雌鶴の羽を緯糸にしてケフの細布を織り、それで四十八備わるはらみ帯を作った。」

 故に、「鶴」をイメージさせるのですが、「フクロウ」と解釈する研究者もあります。トヨケ神を智慧の神「梟」とみる見方もあります。白イトリは、鶴のほか、白鳥であったり、白鷺であったり、白くて優雅な鳥をイメージすることも多かったようです。

 イトリは、御神輿の頂上に鎮座します。古代ヘブライの「契約の箱」に乗る二対のケブリムは、翼のある天使(知恵を司る)と見做されますが、神輿では二対となることはありません。

(駒形一登「解読ガイド」参照)

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 「聖獣」「神獣」として、獅子や、雄牛、一角獣、あるいは、蛇などが世界中では馴染みですが、日本には、それらの聖獣信仰はありません。「狛犬」とか「天神さんの牛」があるじゃないか、と思いの方もいらっしゃるかも知れませんが、ホツマツタヱの記述を読むなかでは、「狛犬」の存在や「天神牛」的な聖なる牛、というものは出てきません。(カラ国から来日し、帰国後にミマナ国を建国したツノガアラシトの逸話には不思議な牛が登場しますが)
 いわゆるドラゴンと近似する「タツキミ=龍君」の存在については、かなり詳しく語られていますが、悪獣的な性格は「タツキミ」とは無縁で、むしろ「オロチ」がドラゴンに近いようです。
 我が国で、最も聖なる神獣は、やはり「鳥」です。
 天意を告げるのも、民の真意を伝えるのも「鳥」であり、偉大な人物は、神あがると鳥となります。「イトリ」と呼ばれる鳥です。御神輿に乗る、あの鳥ですね。
 獅子や聖牛信仰が、古代縄文に無かったことは重要な観点です。それは、現代日本文化に連なる古代基層文化には、オリエントやメソポタミアの影響は及んでおらず、独自のものであり、その独立性は今日まで継続していると観ることが出来るエビデンスとなるからです。

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