次年度向け入試広報ツールづくりで、まずぶちあたる“コロナをどう扱うか”について考えてみた。
秋も深まり、各大学では次年度向けの入試広報ツールの制作が本格化しているのではないでしょうか。私も、いくつか広報物の制作を手伝わせてもらっており、あーでもない、これはどうかと、大学の職員さんらとお話しをさせてもらっています。今年の場合、例年と違いどこもが共通で悩んでいるテーマがあります。コロナをどう扱うか、です。
コロナは入試広報の新たなアピール材料になる!?
大学の対応は大きく二つあるように思います。一つは、コロナをなかったものにして、一切触れない。これは、次年度の広報ツールを見て入学してくる受験生たちは、再来年に入学するわけで、このときにはさすがにコロナは収まっているだろう。なので、入学時の参考情報にならないので、コロナは出さない、というスタンスです。もう一つは、コロナは実際にあったわけで、学生たちに大きな影響を与えているので、スペースについては要相談だけど、何かしらのかたちで取り上げていこう、というスタンス。
大学の意向も踏まえて、対応を考えるのですが、私としては基本的に取り扱うスペースはともかく、コロナについては触れた方がいいという話をしています。というのも、ほとんどの入試広報ツールに、学生インタビューが載ることになり、いくら地の文で触れていなくても、インタビュー内容で、コロナは触れざるを得ません。そうなると、学生インタビューと、他の説明内容にチグハグな印象が出てきます。たとえば、オンライン授業について語る学生インタビューの近くに、少人数教育をアピールするテキストが載る、みたいなことが起こってくるわけです。
それに、これはそもそもなのですが、受験生や保護者が、大学のコロナ対策で知りたいのは、単にコロナが続いたときに、どういう支援を受けられるのか、だけではないと思うのです。もっと根本にある、学生たちが本当に困っているときに、大学はどんな対応をしたのか、という事実を知りたい。大学側からすると、これは今までになかった、新たなアピール材料として受け取ることもできます。また、こういう視点で情報を見る、受験生や保護者にとって、コロナの情報が載っていないことは、隠している、という印象を持たれる可能性もあるわけです。
では、コロナについて載せようとなったときに、どう載せるのがいいのか。これはこれで悩ましい問題です。というのも、コロナ対策はイレギュラーなわけで、今後も同様の対策が行うかというとまったくわからない。そういう意味では、いわゆる学生サポートの情報とは異なる情報です。私としては、学長メッセージなど、大学全体としての考えを載せるページの近くに、特別なコーナーとして載せるのがいいように思っています。コロナ対策は、サポートというより、大学全体としての考えを体現した取り組み、という位置づけだと思うからです。
学生インタビューの時期で広報物の印象が変わる
次年度広報ツール制作に関わるコロナ関連で、もう一つ悩ましい問題があります。いつごろ学生インタビューを行うか、です。
前期は多くの大学がオンライン中心でした。後期は対面とオンラインのミックスでスタートを切りました。でも、冬になるとコロナの感染者が増えるという予想もあり余談の許されない状況です。冬に感染拡大するリスクを避けるために早く取材をしてしまうと、対面授業が本格的にはじまっておらず、話す内容はオンライン授業中心になる可能性が高まります。従来の授業の雰囲気を伝えようと、ある程度、対面授業が進んでから取材しようとすると、今度はコロナの感染が今より拡大して、取材そのものがやりにくくなっていたり、授業形態がオンラインに再度切り替わり大学そのものが混乱している、なんてこともあり得ます。
また、感染者が増えていくと、対面での取材が難しくなり、オンラインでやらざる得なくなります。取材する側である私たちは、対面でも、オンラインでも、どうってことはないのですが、取材に慣れていない学生、とくに1年生なんかは、オンライン取材になると、語る内容(=取得できる情報量)が減るおそれがあります。
学生たちのインタビューは、入試広報ツールのなかでよく読まれるパートです。ここで受ける印象が大学の印象を大きく左右します。今年は、いつ、どのように学生インタビューをするかで、この重要なパートの質・内容が変わってきそうです。大学案内など、大量の学生が出るツールの場合、調整が難しいでしょう。それでも大きく扱う学生インタビューだけでも意識しておいた方がいいように思っています。
コロナ対策で伝えるのは、対応した人たちの思い
最後に、大学のコロナ対策の表現として、面白いものを見つけたので、こちらを紹介しておきます。中央大学が公式YouTubeにアップした「学生の学びを止めない闘い ~中央大学コロナ禍奮闘記~」です。
中央大学は、以前から「知の回廊」という教養番組をケーブルテレビと公式YouTubeで配信しており、その一つとしてつくられました。見てみると、コロナ対策に関わった多くの教職員が登場しており、番組の長さも24分という長大作。コロナ対策をイレギュラーなサポートというより、大学全体としての考えを体現した一つの取り組みだと捉えるなら、この表現方法はとても効果的です。後者だと、どんな取り組みをしたのかとともに、誰がどんな思い・考えで取り組んだのか、という情報にも意味が出てくるからです。
人の思いを絡めて取り組みを伝えるのは、ドキュメンタリーであったり、ルポといった表現が効果的です。とはいえ、大学の広報ツール(紙媒体)に、コロナ禍の大学ルポを載せるのは、紙数的になかなか難しそう。中央大のようなドキュメンタリー番組をつくり、QRコードを誌面に載せるというのはよさそうです。
とりとめのない内容になってしまいましたが、次年度向けの広報ツールづくりのなかで感じた、コロナ関連の気づきや迷いをつらつらと書いてみました。前例がないだけに、答えがなく、つい触れずにつくりたくなるのですが、受験生や保護者の視点に立つと、知りたくないわけがありません。効果的な情報発信を行うために、また真摯に受験生に向き合うために、今年はいつもより課題の多い制作にならざる得ません。まぁ、これはこれで楽しいからいいですけどね!
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