ファンコミュニティだからこそ築ける関係性。名城大学のスポーツ応援サイトから考える、卒業生とのつながり方。
スポーツは人と人とをつなげ、仲間意識を育むうえで非常に有用です。大学スポーツの場合、それだけでなく大学への愛校心育成という意味でも大きな役割を担っています。今回、見つけた名城大学のサイトは、とある体育会系クラブの応援サイトなのですが、企画性に富んで魅力的でした。こういう、みんなで盛り上がれる場の創出やコミュニティづくりは、大学にとってものすごく大事なように思います。
とあるクラブというのは、女子駅伝部です。男子駅伝は、箱根駅伝というキラーコンテンツがあるので、箱根駅伝常連校を中心に駅伝部応援サイトを散見します。でも、女子駅伝部を応援するというのは、あまり見ないように思います。
名城大学の駅伝応援サイトは、『MEIJO SCHOOLMATE TASUKI』というのですが、コンテンツがだいぶと面白いんです。まず、そもそもというか、このサイトでは、駅伝部を応援する人たちのことを「同走生」と呼びます。ももクロのファンを「モノノフ」と呼んだり、なにわ男子のファンを「なにふぁむ」と言うらしいのですが、これと同じノリでしょうか。単に応援するのではなく、ともに駆け抜ける(=一緒になって頑張る)みたいなニュアンスが出ていて、なかなかステキなファンネームだと感じました。
またサイトには「“同走生”としてタスキに名を連ねる」ボタンがあり、ここから名前や応援メッセージを登録することができます。これら情報はサイト上にあるタスキと応援メッセージの掲載スペースに表示される仕組みになっています。タスキは、矢印をクリックすることで次へ次へと送っていけるのですが、けっこうな数の名前が書かれていました。
「Gallery」コーナーでは、いろんなコンテンツが予告されており、さまざまな条件によってコンテンツが開放されると書かれています。こういった表現はスマホゲームに慣れ親しんだ若者世代の興味を促しそうですし、単にコンテンツを追加するよりもサイトが盛り上がるので、意味のある演出なように思います。
このように決して規模の大きなサイトではないのですが、全体を通じて“みんなで”名城大学女子駅伝部を応援する、“みんなで”一緒に盛り上がる、という視点が強く出ています。名城大学女子駅伝応援サイトは、見ようによってはファンコミュニティをオンライン始動でつくり出す取り組みといえるかもしれません。ファンコミュニティはそこに所属することで、好きという気持ちが増幅されるし、互いに影響し合うことで、好きという気持ちが持続しやすくなります。今回は駅伝部がテーマでしたが、大学そのものへの愛校心や帰属意識の育成を考えるうえでも、個ではなくコミュニティに焦点を当てるというのは、とても重要な気がします。
では大学のファンコミュニティといえば何かというと、代表的なのは校友会組織でしょう。でも、交友会組織に人を呼び込むのって、すごく効率が悪いんですよね。なぜなら、これら組織は主に卒業生が主役になる組織だからです。在学時であればすぐ近くにいるので情報を届けやすいし、勧誘もしやすい。学生側も卒業後より通っているときの方が、はるかに大学に関心があります。しかし、関係が切れたあとの卒業生にアプローチをしても、なかなか響きません。
一方、大学スポーツのファンコミュニティって、実はすごくポテンシャルがあるように思います。在学時から参加できるし、卒業後も引き続き関わることができます。さらに、同窓会組織は大学そのものに興味がないと積極的に関わる気になりませんが、大学スポーツであれば、その大学のファン+そのスポーツのファン+その部活動のファンが集まるので、興味を持ってくれる確率も自ずと高まるわけです。
大学スポーツだけでなく、探せば他にも大学に根ざしたファンコミュニティがありそうです。卒業生との関係性構築を考えるうえで、在学生も卒業生も関われるファンコミュニティと、卒業後のつながりを見越した在学生へのアプローチというのが、二大キーワードだと思います。どういうコミュニティがあって、そこにどう関わってもらうのが正解なのか。これについてもっと考えてもいいように思いました。