機能は同じ!でも異なる?「昭和女子大TV」からひもとく、動画メディアとYouTubeチャンネルの決定的な違い
ついこの間、大学の動画にかかわる取り組みを取り上げたところですが、今回も動画をテーマにした内容です。動画による情報発信が、ここまで身近になった最大の功労者はYouTubeだと思うのですが、動画をYouTubeチャンネルで発信するのと、動画メディアサイトとして発信するのでは、どこがどう違うんでしょうか。昭和女子大学の「昭和女子大TV」の取り組みを見て、そんなことを、あらためて考えてみました。
受験生に向けた多種多様な動画が集まる「昭和女子大TV」
まずは考えるきっかけになった、「昭和女子大TV」について簡単に説明しましょう。正式名称は「昭和女子大学インターネットTV」といい、TVという言葉がしっくりくるような豊富な動画コンテンツを配信しています。
教員紹介の動画もあれば、学生と地域や企業とのコラボプロジェクトの動画もある。昭和女子大学理事長・総長である坂東眞理子さんの対談コンテンツや、大学のPV、さらにはキャンパスの定点カメラ映像なんてものまであり、ゆるやかに受験生を意識しつつも、ありとあらゆる昭和女子大学の動画が集まっている、そんな印象を受けました。
昭和女子大TVの取り組みを見て興味深かったのは、内容もさることながら、YouTubeチャンネルの使い方です。
大学のYouTubeチャンネルは、公式として一つつくっていて、そこにその大学の公式動画を一切合切載せていることが多いように思います。これだとターゲットを絞った情報発信や、テーマを絞った情報提供ということはできず、“動画置場”にしかなりません。
でも今回の場合、「昭和女子大学」ではなく、「昭和女子大TV」としてチャンネルをつくっています。これだと、YouTubeチャンネルの動画=昭和女子大TVの動画になるので、テーマ性やメッセージ性はある程度、定めることができるわけです。こういった場があるのにもかかわらず、あえてメディアサイトをつくる意味とは何なのか?昭和女子大TVの取り組みを見いて、そんな疑問が湧きました。
YouTubeチャンネルがメディアになれない2つの理由
「昭和女子大TV」のサイトとYouTubeチャンネルを行ったり来たりしながら考えたのですが、昭和女子大のこの取り組みついては、やっぱりサイトは必要だと思うに至りました。理由は、ふたつあります
ひとつは世界観です。メディアがやるべきことは、情報の提供だけでなく、そのメディアならではの視聴体験を提供することです。そう考えると、YouTubeチャンネルは、どれも共通したデザインで、そこに世界観を伝える手立てはありません。また、動画とテキストを効果的に組み合わせるなどの表現上の工夫や、ターゲットを意識した検索性のカスタマイズなども、ほぼ不可能です。たとえ動画のテーマ性がそろっていたとしても、動画内容以上のものを伝えることは難しいように感じました。
もうひとつは、設計思想です。YouTubeチャンネルは、ユーザーを囲い込めるつくりになっていないんですね。メディアサイトであれば、メディア内を回遊してもらうなどして、このメディアを楽しんでもらうことを第一目的に設計します。YouTubeも同様なのですが、でもこれって特定のYouTubeチャンネル内の動画に限定しているわけでなく、すべての動画を対象にしています。そのため、大学について調べようと思って動画を見はじめたのに、関連動画に自分の好きなアニメやらYouTuberのコンテンツが表示されたりするわけです。ユーザーに動画を楽しんでもらいたいというYouTube側の意図は反映されていますが、自大学の動画を集中して見てほしい、たくさん見てほしい、というYouTubeチャンネルを運営する大学側の思惑については、基本的に考慮されていません。
動画を配信する目的を、より高い視点に立って考える
「昭和女子大TV」と「昭和女子大TV YouTubeチャンネル」は、オンライン上で動画が見れるという機能も、動画のラインナップも同じですが、このように実は大きく異なっているわけです。単に動画が見られればいいのであれば、YouTubeチャンネルのみでOKです。でも、自大学のブランドをしっかりと感じてもらいながら動画を見て欲しいのであれば、独自の動画メディアサイトは必須でしょう。
大学が配信する動画はすべて、動画メディアサイト上で見せるべし!とは思いませんが、動画内容だけでなく、より高い視点に立って“何を伝えたいのか”を考えたうえで、どんな伝え方をするかを決める必要がありそうです。
ちなみに今回はYouTubeチャンネルと動画メディアサイトで書きましたが、noteとオウンドメディアにも似たようなことが言えるのかもしれません。大学の公式noteも増えていますし、かなり多くの大学がオウンドメディアを運営しています。同じような視点で、これら2つの使い分けを整理していけば、より賢く、効率的な情報発信ができるのではないでしょうか。
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