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通学と通信の関係性を変える?京都橘大学のノンスタンダードな新学部の立ち上げ方が気になる

つい少し前に通信制大学が大きく変わりはじめている!という内容でnoteを書きましたが、今回も通信制大学が関わる話題です。この分野は、いま、本当にホットな感じがしていて、大学業界内での通信教育課程の位置づけが変わりはじめているのかなとしみじみ感じています。ちなみに今回取り上げるのは、京都橘大学の新学部についてです。

スタンダードではない、新学部の立ち上げ方

プレスリリースの内容は、京都橘大学通信教育課程に2026年4月にデジタルメディア学部が設置される予定で、その特設サイトを公開した、というもの。現代社会にデジタルコンテンツがあふれかえっているので、こういった分野の学部が新設されること自体、何ら違和感はありません。それどころか通信制大学の学びとすごく相性が良さそうだなと感じました。

興味深かったのはそこじゃなく、通学課程と通信教育課程の両方で、同じ学部が同じタイミングにできることです。すべてをチェックできているわけではないので例外はありそうですが、通学課程に新学部ができ、そのあと1テンポ遅れて通信教育課程に同じ学部ができるというのが基本的なパターンだと思います。近年、通信教育課程のみに新学部ができたり、通信教育課程しかない大学が増えてきたり、これまでとは異なる動きが目立ってはきているもののの、それでもやっぱりスタンダードなのは通学課程 ⇒ 通信教育課程という流れのはずなんですね。

これってハードカバーの書籍が発売されてしばらく経ってから文庫本が売られるのと似たような考え方なのかなと。だって、大学や学部によって変わりはするものの、通信教育課程の学費は通学課程とまったく違っていて、5分の1ぐらいなんです。ちなみに今回のデジタルメディア学部も通学課程の初年度納付金が158万5千円程度なのに対し、通信教育課程は35万円でした。

この学費の差を考えると、まず通学制の新学部開設に広報リソースを集中させ、目新しさがなくなり学部の運営も落ち着いてきてから、通信教育課程を立ち上げた方が理にかなっています。でも、今回の京都橘大学の新学部は、そうではなかったんです。

通学と通信、同時に新学部をつくる意味

通学課程と通信教育課程に同時開設をめざす、京都橘大学の新学部。でも驚いたのは、そこだけじゃありません。

それぞれの新学部を告知しているページサイトを見てみると、通信教育課程のほうが充実しているんですね。しかも、通学課程の紹介ページには通信教育課程が併設されることをコラムで紹介しているんですが、通信教育課程の特設サイトには通学課程について一切触れられていません。アップセルの視点で考えると、通信教育課程の特設サイトにのみ掲載しておくというが良さそうなのですが、そこが逆転しているわけです。

通学課程のデジタルメディア学部紹介ページに掲載されているコラム

このように情報量や伝え方を見ていると、通信教育課程が主で、通学課程はそれに付随するかたちで作られたのでは?そんな気さえしてきます。少なくとも、これまでよくあった通学課程の後追い……、場合によっては“おまけ”のような位置づけで通信教育課程をつくるのとは明らかに違います。

この戦略が意図することが何なのかは、まだ現状では何とも言えません(いうて2026年度開設予定ですし…)。とはいえ、通学課程と通信教育課程を同時に開設準備を進めていて、なおかつ通信教育課程が一般的なケースよりも重視されている。こういったことを考えると、通信教育課程の良さや強みを通学課程に取り入れやすい状況下で学部がデザインされていくのだろうと感じています。以前noteに「通学制に通信制のノウハウを取り入れようという動きも出てくるはず」といったことを書きましたが、もしかしたらまさにこれなのかも!?と思い勝手にワクワクしています。

京都橘大学デジタルメディア学部がどんな魅力や特徴のある学部になるかがわかるのは、もうしばらく時間が必要でしょう。個人的には、”通学課程と通信教育課程の連携”をキーワードに、今後の動向を見ていきたいと考えています。

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