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東大ホームカミングデイから考える、ホームカミングデイのあり方、内容、そしてタイトル。

卒業生に再び母校に訪れてもらうイベント「ホームカミングデイ」。秋になると、このイベントを開催する大学をよく見るのは気候がいいからなのでしょうか。今回、ホームカミングデイの告知をウェブでいくつか見ていたところ、東京大学のホームカミングデイが目にとまりました。とても魅力的なイベントなのですが、これをホームカミングデイと言うべきなのかどうか、ちょっと考えてみてもいいように思いました。

東大のホームカミングデイの告知を見て、まず目に止まったのはプログラム内容ではなく下記の文言です。

東京大学は2022年10月15日、第21回「ホームカミングデイ」を開催する。同大学の卒業生や修了生、その家族、東大ファン、近隣の人々がキャンパスに集う1日。開催は、「対面」「ライブ配信」「オンデマンド」の複数の形式で行う。

……東大ファン。たしかに東大ならいそうです。ここに出てくる東大ファンというのを定義づけると、卒業生や修了生でもその家族でもなく、また近隣の人でもないけど、東大が好きな人たちということになります。こういう人たちに、大学の意識がちゃんと向くというのは、それなりの人数がいるからなのでしょう。

東大ファンという言葉に、ある種の新鮮味を感じつつ思ったのですが、「ホームカミングデイ」というイベントタイトルだと、東大ファンは足を運びにくくないでしょうか。だって、ホームじゃないわけだし…。さらにいうと、卒業生・修了生が求めているものと、東大ファンが求めているものって、けっこう違うと思うんですよね。

卒業生・修了生にとって東大は母校であり、そこにはたくさんの思い出が詰まっています。わざわざ母校に足を運ぶなら、恩師や旧友、思い出の場所など、ノスタルジックな出会いや体験を求めているように思います。一方、東大ファン(あと近隣の人)にとって、東大は、“あの”東大であり、東大らしい体験、つまりはアカデミックで知的なひとときを求めているように思います。あぁ、やっぱり東大はすごいな、面白いな、と思いたいんじゃないでしょうか。そう考えると、対象も、ニーズも、実は大きく異なるのに、“学外”という非常に大きく曖昧なくくりで対象をまとめているように感じました。

で、そこまで考えて、あらためて東大のホームカミングデイのプログラムを見てみると、確かに卒業生や修了生向けのイベントと、大学ファン向けのイベントが混在しています。でもよくよく見ていくと、ターゲットが混在しているわけではなく、一つのターゲットをいろいろな属性で言い換えていることがわかってきました。告知文には書かれていない、この真のターゲットは誰かというと、それは寄附者(およびその予備軍)です。

実際、プログラムではそれを隠していないというか、寄附と関わるコンテンツがけっこうあります。個人的には、「総長と2ショット! 東大基金フォトブース」というのが、一周回ってよくわからない清々しさを感じ、好感を持ちました。

FireShot Capture 262 - 2022 イベント情報一覧 - 東京大学ホームカミングデイ - www.u-tokyo.ac.jp

FireShot Capture 263 - 2022 イベント情報一覧 - 東京大学ホームカミングデイ - www.u-tokyo.ac.jp

FireShot Capture 264 - 2022 イベント情報一覧 - 東京大学ホームカミングデイ - www.u-tokyo.ac.jp

これからの大学運営を考えると寄附は無視できないテーマですし、卒業生や修了生、大学ファンは寄附者であったり、今後、寄附者になる可能性が高い人たちというのはうなずけます。こういった人たちに向けて、大学を一日開放するというのも、ぜんぜんアリだと思います。でも、そうだとすると、今のタイトル・プログラムでいいのかどうかはやや疑問です。

卒業生・修了生が、寄附者になる可能性が高いと考えて、ここにフォーカスするなら、もっと仲間内感を出すというか、“選ばれた人たちのイベント”という演出をするべきでしょう。逆にできるだけたくさんの人を呼び込み、東大を知ってもらい、寄附者予備軍 ⇒ 寄附者と育てていくきっかけにするのであれば、「ホームカミングデイ」という対象をしぼった印象を与えるイベントタイトルはNGです。

このイベントをなぜするのかを突き詰めていくと、「ホームカミングデイ」のあり方はきっと変わっていくはずです。費用もさることながら、マンパワーをものすごくかけた取り組みなので、ここらへんを今一度整理してもいいように思いました。

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