見出し画像

在学生は近くて遠い!?大東文化大学の100周年からひも解く、”みんな”でつくる周年事業に必要なこと

50周年、100周年、125周年など、大学の大きな節目を彩る周年記念事業。受験生向けのプロモーションはマクロな視点で見るとどの大学も似通ってしまいますが、周年記念事業のプロモーションや盛り上げ方は、大学によって千差万別です。今回、大東文化大学の100周年サイトを見て、盛り上げ方がうまいというか、そうそう、ここ大事だよね!と感じるところがあったので、今回はこちらを紹介しようと思います。

厳かさより楽しさを重視!? 大東文化大の100周年記念サイト

まずは、100周年記念事業の魅力がギュッとつまった、大東文化大学の100周年サイトをご覧ください。非常に華やかで楽しげです。サイトのトップページを見ると冒頭に動画があり、その下に無数のTopicsが並びます。Topicsには、記念碑の除幕式や『大東文化大学百年史 上』の刊行、さまざまなイベントの開催などなど、取り組みの多彩さを見るだけでも、かなり力の入った周年事業だということが感じ取れます。

大東文化大学100周年記念サイトに掲載されたTopics

取り組みの豊富さもさることながら、より興味を引いたのはその少し下に掲載されている「学生取材企画」です。これは学生たちが創立100周年記念事業プロジェクト等を取材し、記事にして発信するというもの。これの何がいいかというと、大学の周年記念事業にとって、在学生って実は“近くて遠い存在”なんですね。この在学生へのアプローチとして、すごく秀逸だと感じたからです。

学生取材企画は、100周年記念サイトのトップでしっかりスペースをとって伝えられている

周年記念事業にピンとこない在学生たち

ではなぜ周年記念事業にとって、在学生は“近くて遠い存在”なのか。これは平たく言ってしまえば、数年しか在籍していない大学が周年を迎えるといわれても、正直ピンとこないから……というのが大きな理由です。自分が大学生や高校生だったときのことを思い出してみてください。在籍している学校が周年を迎えることを知って、うぉー!ってなりますか?ならないですよね。

さらにもう一つ理由としてあるのは、基本的に大学側もメインターゲットを在学生に設定していません。多くの場合、ターゲットにするのは卒業生、そして社会や企業です。これは周年記念事業が寄付金集めの絶好の機会にもなるからです。周年サイトに厳かなデザインが多いのも、これらターゲット層を意識しているからという側面があるからでしょう。

こういったなか大東文化大の100周年サイトは、かなり在学生の方を向いています。これは楽しげなサイトのデザインからも感じ取ることができます。でも、ここに問題があって、単に伝えたいと思い、在学生に好まれる表現にしたところで、在学生には伝わらないんです。だって、上述したように在学生はピンときていないから……。そこまで考えたときに、大東文化大のアプローチは考えてるなあと思うわけです。

ではどんなアプローチなのかというと、伝える、ではなく、ともにつくる、というアプローチ。つまり、周年記念事業を盛り上げる側に在学生を巻き込んでいるんですね。そうなると、どうやったら在学生に伝えられるのかと悩むのではなく、どうやったら周年記念事業を盛り上げられるのかを在学生と一緒に考えることができるようになる。在学生の位置づけそのものが変わるわけです。ちなみに「学生取材企画」がサイト上で目立つのですが、他にも「学生協働」の企画がたくさんあるので、けっこうな数の学生が周年記念事業に巻き込まれているように思いました。

小さな仕掛けで情報発信の意識を変える

さらに、大東文化大の取り組みで、周年記念事業を在学生や若者に伝えるうえで意外と大事なのかもと思ったものが、もう一つあります。それはこちら、モーションロゴ、サウンドロゴの作成です。

私も大学の周年記念事業に関わることがよくあるのですが、やっぱり情報発信の仕方は文字情報が中心になるんですね。ターゲットが、卒業生や企業、社会といった、おっちゃん&おばちゃん比率高めであるなら、これはこれで正解です。でも、若者への情報発信も重視するなら、YouTubeやInstagram、TikTokなどで拡散できる動画コンテンツを無視することはできません。

モーションロゴ、サウンドロゴをつくるというのは、大学として動画(や音声)コンテンツを重視してコミュニケーションするという、関係者に向けたわかりやすいメッセージになります。また、作成するコンテンツが文字でも動画でもどちらでもいけそうなとき、これら素材がすでに用意されていると動画に傾きやすくなるはずです。加えて、動画を自分たちでつくるという発想がそもそも浮かばない人って、年輩の人を中心に一定数いるように思うんですね。そういう人たちに気づきを与える仕掛けとしても、モーションロゴ、サウンドロゴは有効なのではないでしょうか。

過去のリリースをひも解いていくと、大東文化大は「みんなでつくる100周年」をテーマに100周年に向けた活動を推進していったようです。つまりこの周年のテーマは、在学生、ではないんですよね。みんな、といって、それを成立させるために在学生をすごく丁寧に扱っている。この挙動に、面白さと示唆深さがあります。実際のところ、大学ごとに周年事業を行う目的やねらいは微妙に違います。とはいえそれを踏まえたとしても、大東文化大のアプローチは参考になるように思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?