新校舎×メタバース!成蹊大学の施設PRから考える、高校生がよく言う「建物がきれい!」に込められた意味と想い
建物がきれい!は、高校生が志望校を選ぶ理由としてたびたび挙がる、大学にとってすごく大事な魅力です。これまでであれば新しい建物が建つことになると、パース図を使って、どんな建物なのかとか、どんなステキなスペースがあるのかとかをアピールしていたわけですが、今回、見つけた成蹊大学の取り組みは、これとは少しだけアプローチが異なります。実は建物の伝え方って、もっと工夫する余地があるのかもしれません。
メターバスを使って新校舎を紹介
はい、ではどんな取り組みなのかというと、成蹊大に新たに建つ大学新11号館を、同大学のSociety5.0研究所がメタバース上に構築したというもの。専用ページから、メタバース上にある大学新11号館の内観・外観を見学することができます。見学するまでに、あれこれと手間がかかるのかな、と思ったら、ぜんぜんそんなことはなく簡単にメタバース空間に入ることができました。また建物内にどんなスペースがあるのかを細かく見られるだけでなく、特定の展示をクリックすると、成蹊大の公式サイトにリンクするつくりになっていました。
建物がきれい!という高校生が、本当に知りたいこと
今回、得た大きな気づきは、この表現がめっちゃすごい!ということではなく、建物はもちろん、建物の伝え方からも学びのコンセプトやエッセンスを伝えられるということです。
昔は、大学進学の理由に、建物がきれいとか、施設がすごい、というのが書かれていると、うーん…と思っていたのですが、よくよく考えると、施設ってわかりやすく学びを表現しているんですよね。そりゃ、この場所を使って学ぶんだから、当前といえば当前です。
たとえば、深夜まで使える自習ブースがあったり、プレゼン用の専門スペースがあったり、グローバルな交流ができるエリアが設けられていたりなどなど、その施設を使って学ぶ学生たちに合わせて、大学の施設はデザインされています。これってやっぱり、高校生たちに直接、何を学ぶかを伝えなくても、どんな学び方をするのかが感覚的に伝わってくる。さらにいうと、この環境に身を置くことで、自分がどんな大学生活を送れるかも自然と理解できるわけです。
そう考えると、建物がきれい!というのは、額面通りの意味ではないわけですよね。伝えるべきものは、建物の美しさではなく、そこでの体験であり、過ごす時間にどれだけの価値を感じてもらえるかです。だとしたら、パース図で見せたほうがパッと見はきれいかもしれないけれど、メタバース空間で仮想であっても体験してもらった方が、高校生が知りたいことには近いように思います。
伝えるべき対象を意識して、もう一段階解像度をあげる
もう一つの感じたことは、大学新11号館は、最先端の研究環境を備えた理工学部の研究室と情報教育設備を設置した施設になります。こういった建物で展開される学びと、メタバース空間は親和性がとても高く、そこにも価値がありそうです。建物の情報を得ようとするボリュームゾーンにあたる人は、将来的にその学び舎で学ぼうと考えている人たちです。だとすると、その学び舎に入る学部の学びを意識して、建物の魅力を伝えるというのは大事なことなのかもしれません。たとえば、芸術学部であればアートで表現するとか、社会学部であればインタビュー調査(人の声)で伝えるとか……。
書きながら、これはナイスアイデア!とまでは、私自身感じていないのですが、観点としては意識してもいいように思います。少なくともメタバースを使って建物の魅力を伝えるのにふさわしいのは、文学部が入る建物より情報工学部が入る建物というのは間違っていないはずです。
建物(=学習環境)の情報は、間違いなく高校生が興味をもつ情報です。多くの場合、あるがままの魅力を、あるがまま伝えているように思います。でも、ここでもう一段階解像度をあげて、最も伝えたいターゲットを意識して、もうひと工夫してみてもいいのかもしれません。成蹊大の取り組みは、単にアプローチとして目新しいだけでなく、そんなヒントのある取り組みだと感じました。
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