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入学者の3分の1以上が関わりたがる!?産業能率大学のオープンキャンパスが、なぜ在学生に響くのかを考える

オープンキャンパスといえば、言わずと知れた入試広報における最重要イベントです。自大学の魅力や情報をいかにして伝えるか、どの大学も知恵を絞っています。今回、見つけた産業能率大学の取り組みも、そんなたくさんの工夫が見られるオープンキャンパスの一つなのですが、かなり考え方が尖っています。ある意味ではオーキャンを突き詰めすぎて、オーキャンではない“何か”になっているとも言え、かなり示唆深いので紹介したいと思います。

入学者の3分の1以上がオーキャンスタッフに志願

産業能率大学のオーキャンを知ったのは、上にリンクを貼ったプレスリリースがきっかけです。見出しにある「参加者満足度99%の産業能率大学生がゼロから創る、オープンキャンパス」というタイトルに目を引かれたのですが、読み進めるとさらにインパクトのあるくだりがありました。

昨年度の経営学部のオープンキャンパススタッフ希望者数は、入学者数618名のうち273名となり、入学者の3分の1を超える志願者数となりました。

産業能率大学プレスリリースより

え、どういうこと?ってなりませんか。オーキャンがきっかけで入学したというのと、オーキャンスタッフになりたいというのは似て非なるものだと思うんですね。前者はオーキャンでその大学の魅力がよく伝わったことを意味しますが、後者はこのイベントに関わることに意味や価値を感じる人がそれだけいたことをあらわします。

しかもついこの間までコロナ禍で、学生間でのオーキャン運営のノウハウや人的なつながりが、いったんリセットないし縮小されてしまっていた。そういったなかで、これだけの学生に響く取り組みになっているわけです。そう考えると、ね、どういうこと?ってなります。

”大学のため”から”高校生のため”へ、目的を変える意味

なぜ、これだけ多くの学生が、産業能率大のオーキャンに関わることに価値を感じたのでしょう。おそらくですが、答えもリリースに書かれていて、それは「学生はオープンキャンパススタッフとして『高校生の最良の進路選択のお手伝い』をテーマに、高校生の人生に影響を与える、最高の相談相手を目指して活動しています」というところだと思うんです。ちなみに「高校生の最良の進路選択」というフレーズ、このリリースにめっちゃ出てきます。

これってオーキャンと言ってはいるけど、もうオーキャンじゃないんです。だって従来のオーキャンの目的は、「高校生の最良の進路選択」ではないから。さらに、この公共性の高いコンセプトのオーキャンを、学生たちは「ゼロから創る」わけです。

想像するとわかると思うのですが、なんとかして高校生に自大学の魅力を伝えることより、なんとかして高校生に最良の進路選択をしてもらうことの方が、俄然やる気が湧いてきます。前者は“大学のため”、後者は“高校生のため”の活動です。少し意地悪な言い方をすると、前者の活動を純粋に頑張れるのは、“自大学のことが好きでたまらない学生”だけです。そう思うと、だいぶと限られてきますよね。

ちなみに、産業能率大のオーキャン告知ページにムービーが掲載されていて、これを見ると学生たちのモチベーションの高さと、いかに「高校生の最良の進路選択」を意識して取り組んでいるかがよくわかります。

オーキャンとは、そもそも何を伝えるイベントなのか?

”高校生のため”であることが、学生のやる気を焚きつけることはわかってもらえたかと思います。でも大学側からすると、なぜうちのオーキャンで、(自大学の魅力発信より)「高校生の最良の進路選択」を優先しないといけないのか、という釈然としない気持ちが湧くかもしれません。でもこれもオーキャンの捉え方によると思うんですね。

考えようによっては、受験生が必要とする情報については、オーキャン以外の情報発信で十分に届けられています。そんななか、あえてオーキャンで伝えるべきものは何かというと、いきいきとした学生たちの姿や態度、大学の環境や文化など、身体的・感覚的にしか伝えにくい魅力ではないでしょうか。これら言語化しにくい魅力を伝えることを主目的にするなら、学生たちが意義を感じて本気になれ、なおかつその大学らしさが強く出るテーマを立てて取り組んだほうが、ただ運営するよりもずっと効果的です。産業能率大の場合も、オーキャンという場の役割、大学のスタンス、学生たちのモチベーションの在り処、みたいなものが自然と(もしくは意図的に)バランスして、このテーマに行き着いたのではないかと感じました。

とにもかくにも、固定観念を取っ払って、オーキャンスタッフが本当に腹落ちするテーマのもとオーキャンをつくるというのは、このイベントの位置づけの定め方によっては、すごく大事な気がします。ここまでいくとオーキャンと銘打ってやらなくてもいいのでは?という気もするのですが、できるだけ多くの高校生に来てもらおうとするなら、このタイトルでやった方が効率的&効果的なんでしょう。まったく新しい位置づけのオーキャン、検討してみもいいのではないでしょうか。

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